激弱メンタルでもいいじゃないか

同じような誰かのために、いつか書こうと思い続けてきたこと。
何となく自分の中でタイミングが来たので、文字に起こしてみる。

適応障害にかかっていたことがある。
もう随分と前の話ーー前前前職くらいの懐かしい話だが(本当に苦労した20代だった)、最近ようやく冷静に思い返せるようになった。

理由はシンプルにパワハラだった。
詳細はつまらないので避けるけれど、“ちょっと知恵のある小学生”レベルのいじめをしてくるクソ上司だった。
ただ私が休み始めた後に昇進している様を見る限り、社内政治力だけはスーパーサイヤ社会人レベルだったのだろう。

クソ上司の下で働いていた1年間と、適応障害と闘っていた1年間。
計2年間を闇に葬った一方、お陰様で人の心に少し敏感になれたように思う。

寒い季節に1人で家に籠っていると、些細なことで思い詰めてしまうこともあるかもしれない。
かつての私のような人のために、あるいは友人や家族に掛ける言葉に悩んでいる人のために、ちょっと辛くはあるけれど当時の想いを記事に書いてみようと思う。

心の“高熱”

とある知人に適応障害をカミングアウトした際、「精神科行っちゃったの?ダメだよ~精神科行ったらそのときから精神病だよ~」と謎のロジックを説かれたことがある。
これはいろいろな誤解があるので、ちゃんと否定しておきたい。

もちろん全員が全員ではないだろうし精神病の種類によるだろうけれど、少なくとも私の場合、「もう無理だ」と思った日と「もう大丈夫だ」と思った日があった。
40度の高熱と同じだ。

「もう無理だ」と思った日は、会社に向かう途中に乗換駅でバスを降りられなかったときだった。
それまでも電車やバスの中で涙が止まらなくなることはしばしばあったが、降りられなかったのはそのとき初めてだった。数駅先の寂れたドトールで少し休んでから、そのまま折り返して家に帰った。

一方で「もう大丈夫だ」と思った日は、新しい会社で社食を食べている何気ないときだった。
もう精神安定剤も卒業してはいたけれど、まだ自分が自分じゃないような感覚を持ち続けていた頃。1人でご飯を食べながら何故かふと「もう大丈夫だ」と思い立ち、その日を境に急に昔の自分に戻れた。

確かに精神病の定義はインフルエンザなどに比べたら曖昧かもしれない。でも案外、本人ははっきりと自覚できるものだったりする。

本当は「もう無理だ」と思う前に、涙が止まらないくらいのタイミングで(それでも相当来ているけれど)精神科に行った方が良かったのだろう。
高熱が出る前に、軽い風邪の時点で病院に行った方が治りが早いのと一緒だ。

そもそもどういう感覚なのか

あくまで私のケースの話だけれど、適応障害に悩んでいた1年間はずっと“私じゃない誰か”に思考を乗っ取られているような感覚だった。
呪術廻戦に例えると、宿儺に乗っ取られているときの虎杖悠仁のような感じだ。

“私じゃない誰か”はとにかくネガティブだった。親友の優しい一言ですら「私を批判しているのかしら?」などと捉えてしまう。
「そんなことないよ!」と否定する“かつての私”もうっすらいるのだが、“私じゃない誰か”の方が圧倒的に強いので、結局世界中が敵に回っているような感覚に陥ってしまう。

精神病の人に「頑張れ!」という言葉は禁句だ、とはよく言うけれど、私の場合は「大丈夫?」という言葉も嫌いだった。
だって、いくら宿儺に向かって「頑張れ!」「大丈夫?」と声を掛けられても、虎杖悠仁はどうしようもできない。
ただひたすら悔しいだけだ。私だって早く私に戻りたい。
(でもあのとき声を掛けてくれた友達、本当にありがとう。)

だからもし身近に精神を病んでしまっている人がいたら、本当にお手数なのだけれど、ひたすら全肯定の言葉を掛けてあげてほしい。
「大丈夫?」ではなく「大丈夫!!!」のように。
友人を乗っ取っているネガティブ宿儺をも、全部ひっくるめて肯定してあげられるような。

芸人・中川家の剛さんがパニック障害にかかった際、明石家さんまさんに「“パニックマン”というコントでもしたらエエねん!」と言われて救われたそうだ。(参考記事
一見暴力的に見える、この言葉のパワー。まるで「ネガティブ宿儺に乗っ取られててもエエねん!」と言ってくれるような、“私じゃない誰か”のことまで全肯定してくれている台詞だからこそ救いになるのだと思う。

大丈夫、今のあなたはとっても魅力的だ

真面目で素直な人は精神病になりやすいらしい。
確かにそうかもしれないけれど、そう言われたところで「明日から真面目も素直も卒業しまーす」なんてことは残念ながらできない。

結局のところ、メンタルを病んでしまうありがちなトリガーは「自分のせいだ」という状況・感情な気がする。
私の場合は、クソ上司のミスをさも私が悪いかのように何度も何度も仕立て上げられたことが、大きなきっかけになった。

真面目素直人間ちゃんは「全部クソ上司のせいだ!」と思えない。
どうしても他人のせいにできない。
心のどこかで「私も悪かったのかもしれない」とか考えてしまう。

でもね。
なかなかそうは思えないかもしれないけれど、だいたいの場合、本当にあなたは悪くないんですよ。

今悩んでいるあなたがどのような状況にいるのか、あいにく1人1人にゆっくり聞いてあげることはできないけれど、でもこれだけは絶対に言える。

あなたは悪くない。
今のあなたはとっても素敵で魅力的だ。
何も変わらなくていい。そのままでいい。

それでも他人を責められず、どうしても自分を責めてしまいそうなときは、

「狂っているのはこの世の中だ!!!」

と思えばいい。
どんな状況であれ、99%当てはまる揺るぎない事実。

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最近はもうほとんどなくなったけれど、それでも年に数回くらい、私の中のスーパーネガティブな“私じゃない誰か”がムクムクと起きだすことがある。
今の世の中大変だ。友人や家族と気軽に会えない分、自分で自分を励まさなきゃいけない。
まぁお陰様で、自分の励まし方はちょっと上手になった。

消しゴムで消せるなら跡形もなく消してしまいたい過去だけれど、それでももしこの記事があなたの気持ちを少しでも楽にできているのであれば私も嬉しい。メンタル激弱宿儺を無事成仏させられる気がする。

大丈夫。絶対に大丈夫。
あなたは世界で一番美しい。

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