見出し画像

ブルーベルの森とクジャク

毎年イースターが終わるとイギリスの各地の森でブルーベルの花が咲き始め、ブレナム宮殿の森も私が毎日通勤で車で通り抜ける近くの森も紫色のブルーベルの花でなんとも美しい神秘的な森に変身します。

今の季節3週間ぐらい朝の通勤は車の窓を開け新鮮な森の空気を吸い小鳥のさえずりを聞きながらブルーベルの森をゆっくり通りぬけて宮殿へ、仕事の帰りは車を駐車してブルーベルの森を30分ほど歩いて森に癒やされて疲れた体もリフレッシュして帰宅。

毎年ブルーベルの森を通り抜けて通勤する季節が来ると、ロンドンの都会を離れてここに引っ越してきて良かったなと改めて思うほどストレスフリーで贅沢な通勤です。

時々、森の中ではキジや鹿の親子、キツネやリスなど色々な動物に出会います。一年に2度近くの牧場から牛達の群れが森の中を通って大移動するのにぶつかることもあったり、ラッキーな日は近くのマナーハウスの庭からクジャクが森に現れたりもするのですが、今年はまだ一度も森の中でクジャクの姿は見ていません。

私が初めて森の中でクジャクに出くわした日の事を今でも鮮明に覚えています。あれは霧の深い朝でした。森の中をゆっくり車を運転している時に突然聞き慣れない鳥の大きな鳴き声が聞こえてきて、はっとした瞬間、霧の中からゆっくり優雅に歩いてクジャクが車の前に現れたのです。

大きな雄のクジャクが車の前に立ち止まりこちらの方をじーと見つめて挨拶をしているように見え、一瞬わたしは息が出来なくなるほど驚きハンドルを握ったまま大きく目を開いて停止状態になり、クジャクと目が合って心臓だけがドキドキして不思議な世界に引き込まれたような感覚になりました。

20秒ぐらいしてクジャクが体を大きく動かし羽を優雅になびかせ再びゆっくり歩き出し車の前を通り過ぎていきました。その美しい光景は私にとって一生心に残る宝物のような1分間であったと思います。

それから今の季節は森の反対側は菜の花畑が広がり、本当におとぎの国の中に迷い込んだような中を車で通り抜けて毎日の通勤で癒やされています。通勤で癒やされてるって言うのはイギリスの田舎暮らしで一番大きな魅力かもしれません。


写真撮影と文 宮下ゆめ子




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?