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海底ケーブルの覇権争い:見えない海底で繰り広げられるデータ戦争



現代のデジタル社会を支える通信インフラの中でも、海底ケーブルの存在は私たちの日常に欠かせないものです。

多くの人は、インターネット通信が衛星を通じて行われていると思いがちですが、実際には世界の国際通信の約99%は海底ケーブルを通じて行われています。

そして、この海底ケーブルを巡る覇権争いが、今まさに見えない海の底で繰り広げられています。


1. 海底ケーブルの重要性

海底ケーブルは、インターネットをはじめとしたあらゆるデジタルサービスを支える重要なインフラです。これらのケーブルがなければ、国際的なデータ通信は成り立たず、私たちが毎日利用するクラウドサービス、動画ストリーミング、国際電話、金融取引などもスムーズに行うことができません。

特に、クラウドサービスや5G、AIの進化により、データ量が急増しており、海底ケーブルの容量と品質が今まで以上に重要視されています。こうした背景から、グローバルなデータ通信網の”覇権競い”が激化しています。


2. 海底ケーブルの圧倒的な性能

海底ケーブルは、他の通信手段に比べて圧倒的に大容量かつ低遅延でのデータ送信が可能です。

最新の海底ケーブルは、1秒間に数百テラビット(Tbps)という膨大なデータを送信でき、これは何百万本の4K動画を同時に配信できるレベルの容量です。DVDで換算すると、1秒間に1万3300万枚に当たるデータ量を送信できます。

さらに、海底ケーブルを使ったデータ通信の遅延は非常に少なく、例えばアメリカ〜ヨーロッパ間での遅延は約60ミリ秒程度に抑えられます。一方、衛星通信では地球からの距離が大きいため、遅延が400〜600ミリ秒に及ぶことがあり、海底ケーブルの約7倍から10倍の遅れが出る計算になります。


3. 新たな挑戦者:ビッグテックの参入

近年、Google、Amazon、Facebook(Meta)、Microsoftなどのビッグテック企業が、自社で海底ケーブルを敷設する動きが加速しています。これまで海底ケーブル事業は主に通信事業者や専業インフラ企業の領域でしたが、ビッグテックは以下の理由から、自社で海底ケーブルを所有することで競争力を強化しています。

〜コスト削減と効率化〜
膨大なデータをグローバルに転送する必要があるビッグテック企業にとって、外部の通信インフラに依存することは、長期的なコスト増につながります。自社のケーブルを所有することで、長期的に運用コストを削減し、データ通信の効率を向上させることができます。

〜低遅延・高品質なサービスの提供〜
海底ケーブルを自社で管理することで、クラウドサービスや動画ストリーミングなどに必要な低遅延で高品質な通信を実現できます。

〜データのプライバシーとセキュリティ強化〜
ビッグテック企業は膨大なユーザーデータを取り扱っているため、データのプライバシーやセキュリティが非常に重要です。自社ケーブルを所有することで、第三者に依存せずに通信を完全に管理でき、データ保護の面で有利になります。


4. 覇権争いの今後

今後、海底ケーブル市場では、伝統的な通信インフラ企業とビッグテックの覇権争いがさらに激化すると予想されます。特に、データトラフィックの急増と共に、海底ケーブルの新設やアップグレードが不可欠となるため、各企業がどの地域にどのようなケーブルを敷設し、いかにしてグローバルなデータネットワークの優位性を確保するかが注目されています。

海底ケーブルを敷設する為には様々な技術と知識が必要になります。それらを管理する人材を「ケーブルマフィア」と呼び世界で数十人しかいないと言われています。そのケーブルマフィアの囲い込みにビッグテックが力を入れています。
通常、海底ケーブルを敷設したい場合は専門の業者、通信事業者と一緒にチームを組んで利益も分配していました。しかし、近年はGAFAMが単独でプログラムを完遂させてケーブルを独占できる状況になってきています。

→そこに対抗する、”ある日本企業”の存在がありますが後日記事にまとめます。。。


5. 結論:デジタル世界のインフラ戦争

海底ケーブルの覇権争いは、単なる通信インフラの争いにとどまらず、デジタル経済の基盤を巡る競争です。これに勝利した企業や国が、グローバルなデータ経済における主導権を握ることになります。デジタル時代の覇権争いは、海の底で静かに、しかし確実に進行しているのです。

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