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DU缶物語06「エンジョイフル♪」



『むかしむかしある所に、1人の少女が住んでいました。
 少女は可愛らしい容姿で街一番の人気者。
 まだ学生ながら、TVのリポーターも務め、
 この街で少女のことを知らないものはおりません。
 名前をリスのリリィと言いました』


Ⅰ.街のアイドル


「リリィちゃんお疲れ様ー」
「プロデューサーさん、ありがとうございます。
 お先に失礼します」


街で一番可愛いと評判のリスのリリィは、
学業の側、朝のTV番組のリポーターをしていました。

特に自分から「やりたい」と言ったわけではありませんが、
TV局の人に「いい経験になるから」と熱心に誘われ、
午前中はリポーター、午後は普通の学生という生活を
かれこれ1ヶ月ほど続けていました。

最初は緊張の連続で
何をしていたかほとんど覚えていませんが、
最近はずいぶん余裕も出来て

「今日も私、頑張った♪さぁ、学校学校ー」

楽しみながらお仕事を続けています。


Ⅱ.噴水広場で


収録終わりが遅くなったある日。
リリィは少し遅い昼食を取り、早足で学校へ向かいます。
その途中、公園でランニングをしている
ウマのホセを見かけました。

「あの人毎朝見かけるけど、この時間も走っていたんだ」

毎朝リポーターの仕事に向かう途中に見かける彼。
いつもは気にも留めないが、
今日はなぜか目で追ってします。

(何かのスポーツをやっているのかな?)

ふとそんなことを思うリリィ。

そんなことを考えている間に、
気になった彼はリリィの横を通り過ぎ、
いつの間にか遠くなった背中を
1人見つめていました。


Ⅲ.ウマのホセ


それからしばらく経ち、
リリィは街に新しくできたショッピングセンターに
リポートの仕事でやって来ました。

オープン直後ということで、
お店は多くの人で大賑わい。
そんな楽しそうな様子を
リリィは取材をして回ります。


取材は順調に進み、
フードコートの取材するために
ゲームコーナーを通り過ぎた時でした。

リリィは子供たちとゲームを楽しむ
例の彼の姿を発見します。

(あれ?こんな所で見かけるなんて珍しい)

見かけたのは一瞬だったので、
何をしていたのかまでは
ハッキリ分かりませんでしたが、
いつもと違う彼の姿が見えたのが、
彼女には新鮮に映りました。


『むかしむかしある所に、1人の青年が住んでいました。
 青年はスポーツとゲームが好きで、
 あいた時間は全てそれに費やしていました。
 朝、昼、夜のランニングで体を動かし、
 他の時間は全てゲーム。
 その甲斐あって、
 青年は現在プロゲーマーとして活躍しています。
 しかし、この街で青年を知っている者はほとんどおりません。
 名前をウマのホセと言いました』


Ⅳ.自問自答


「あなたがリポーターを始めたきっかけは何ですか?」

リポーターの仕事を3ヶ月ほど続けたある日。
「街一番の可愛い学生リポーター」という触れ込みで
他の街でも人気が出て来たリリィ。
今日はそんな彼女へ、雑誌の取材が来ています。

「今の番組のプロデューサーさんに
 誘っていただいたのがきっかけです」

しっかりとした受け答えで取材を進めていくリリィ。

「あなたの夢は何ですか?」

最後の質問になった時、
それまで笑顔を絶やさず受け答えしていたリリィでしたが、
一瞬言葉に詰まりました。

「……。可愛いお嫁さんになることですかね」
「とても素敵ですね。
 質問は以上です、今日はありがとうございました」

咄嗟の切り返しで取材は無事終わりましたが、
帰り際リリィは悩むこととなります。

(夢なんて、考えたこともなかったな……)


Ⅴ.出合い


ードンッ!ー

「きゃっ!ご、ごめんなさい!」

考え事をして歩いていたせいか。
注意力が散漫だったリリィは
いつもの公園に差し掛かった時、
何かにぶつかってしまいます。

「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」

衝撃で尻餅をついてしまったリリィに、
ぶつかった相手から優しい言葉がかけられます。

「はい、大丈夫です。…あ、あなたは!」

謝罪をしようと急いで起き上がったリリィは、
突然の出会いに目を丸くしました。

よく知っている茶色い肌に、栗色の髪。
そこにいたのは、ウマのホセだったのです。


『2人はそれから公園のベンチに腰をかけ、
 短い時間でしたがお話をしました。
 最初はホセがリリィのことに気づき、
「TVでいつも見ています」
 と社交的な挨拶から始まりました。
 しかしリリィからも自分のことを知っていると告げられたホセ。
 それはただいつも公園で見かけているだけのことでしたが、
「ずっと楽しそうに走っている」
「私にはできない笑顔をあなたはされている」
 と知らない間に自分が他の人に影響を与えていることに驚き
 ホセもまたリリィに興味を抱きました。
 そして2人は連絡先を交換し、その日は一旦別れました』


Ⅵ.答え


ー今日はありがとうございました。
 プロの方だったんですね、動画見ましたー

ーありがとうございます。
 好きでやってるだけですので、たいした事ないですよー

ーホセさんは何でプロになろうと思ったんですか?ー

ーあまり考えた事ありませんでしたが………
 好きなことを続けるためですかねー

「好きな事……」


Ⅶ.好きな事 したい事


ーいい経験になるからー
(リポーターの仕事は楽しい)

楽しいけど、
リポーターの何が私は楽しいんだろう?


ー色々な人と会えるー
(多分これかな)

新しい人との出合いは、
それだけでワクワクさせてくれる。
色々な人の全く違った話を聞く事は
私の考えを豊かにしてくれる。


ー私は色々な人と会うためにリポーターをしているー
(これがきっと正解)

今まではリポーターを『する』為に頑張って来た。
リポーターで何を『したい』のかなんて、
考えてもみなかった。
『したい』がないと
迷った時に頑張れなくなるんだね。


Ⅷ.そして


「リリィちゃんお疲れ様ー。
 さらに最近いい笑顔になったね。
 何かいい事でもあった?」

「プロデューサーさん、ありがとうございます。
 はい、私したい事が見つかったんです。
 お先に失礼します」

街で一番可愛いと評判のリスのリリィは、
学業の側、朝のTV番組のリポーターをしていました。

TV局の人に熱心に誘われ、
「いい経験になる」と思い、
午前中はリポーター、午後は普通の学生という生活を
かれこれ1年ほど続けていました。

最初は緊張の連続で何をしていたかほとんど覚えていませんが、
最近はしたい事が見つかり、一層頑張るようになりました。

「今日も私、頑張った♪さぁ、学校学校ー」

スマホを見つめ、微笑んで、
楽しみながら1日を過ごします。


ー無事お仕事が終わりました!
 週末は大会ですね。
 優勝、期待してますよ!ー


おしまい


⚫︎あとがき


街のアイドルのリリィとスポーツとゲーム大好きのホセの物語。
いかがだったでしょうか?
「したいことを見つけるという大切さ」を伝えられたらと思い、
このシナリオを書きました。

このシナリオはyoutube「ユメひろびろ」で公開予定の、
オリジナルシナリオ「DU缶」第6弾となります。
「ユメひろびろ」では、オリジナルシナリオの他にも、
世界の童話の読み聞かせなど、幅広く活動予定。
是非応援してもらえたら嬉しいです。

それではご覧いただきありがとうございました。
また次回の記事もよろしくお願いします( ´ ▽ ` )ノ


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