10話 終わり
タナトス:しつもーん♪私が目の前で切ったらどうする?
守り人:周囲の目を気にして、その時々で対応が変わる。
タナトス:やっぱり、前の答えと変わらないね。
守り人:コロコロ変わると思ってた?
タナトス:思わない。
守り人:なら、望むとおりの答えと云う事だ。
タナトス:そーだね。ある意味、望む答えかもしれない。
だから、守り兄ちゃまには会わないの。
周りを気にするのは分かる。けど、ここで私以外の第三者が出てくる事に笑うしかなかった。
私は散々、「人前では切らない」と言っていたのに、彼の中にその言葉は残っていない。
私が何度も『切る話』をしたせいで、第三者である守り人さんの前でも切ると誤解させてしまったのかもしれない。
会わないと言っていた私が、会う事にしたのは、会長様が『最後に会ったら?』と言ったからだった。
会わずに済ませられる関係ではないのは、私が一番わかっている。
守り人さんは、どうでもいい人ではない。『いい人』なのだから。
最後まで、私は嘘をついた。
この関係は続くものだと、守り人さんに思わせていた。
会う日の前日に、私は『終わりにする覚悟』のメールを出した。
その上で『最後に会おう』と伝えた。
チャット上では嬉し気に「会えるね♪」なんて、言っていたのだから、守り人さんには寝耳に水だっただろう。
東京に行って、私は再び、守り人さんと会った。
ちょっとした広場のような場所で、周りには人がいる。傍には会長様もいた。
「こんにちは」
守り人さんの目は、『何でこいつがいるんだ』と言っている。
恐らく、「最後くらいは二人きりで……」なんて思っていたのだろう。
そう思うくらいには、親しくなったと錯覚させていたと思う。
悪い事をしたと私も思う。
困惑気味の守り人さんに、会長様が告げる。
「いろいろと、言いたいことがあると思うけど、まずは『言い訳』せずに、ノアちゃんの話を聞いて」
と、私の言葉を促してきた。
1分以上の沈黙の後。私の中には、私の言葉が浮かばなかった。
代わりに出てきたのは、某漫画のセリフだった。
「もう、守り人さんは私に必要ない」
冷たいと自分でも思う。
ここまで、思わせぶりな態度をとってきて、ここでバッサリと切るなんてと思う。
「今まで、ありがとう」
守り人さんの目を見る事が出来ない。
どこまでも私はズルイ。
「一つ、言わせてほしいんだが……」
守り人さんが、何かを言おうとして来た。
「『言い訳』なら、やめた方が……」と会長様が止める。
「そうじゃなくて、ワシはワシなりに君の事を想ってきた。それは分かってほしい」
「……」
私は無言でうつむいたままだった。
話すことのハードルと伝えることのハードルを越えて、次はどうしたらいいのか分からない。
「じゃあね」
守り人さんが手を差し出してくる。
最後の握手と言う事らしいと分かった。
私は迷いながら、その手を握り返す。
手を放すと、守り人さんは歩き去って行った。
守り人さんとはそれきりだった。
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