3話 えすえむ
会長様とはその後、チャットやメールをしなくなった。
その分、守り人さんへの依存が高まった。
ある日、うちの弟は虐めたくなるほど可愛い子という話になった。
守り人:タナさも、Sッ気が強い方?
タナトス:ん~?どっちが、どっちだっけ。 なんか、未だに良くわからない
守り人:虐めるのがS、虐められて喜ぶのがM…だね。
でも、奴隷とご主人様とで、字の意味が逆になってたりして
タナトス:私は……どっちかな。どっちも……あり?
守り人:まぁ、コレばっかりは試してみる…と云う訳にも行かないからねぇ…
試したい…と云うのなら、協力は惜しまないけど
タナトス:……笑。
守り人:ソッチの道に走るとか、なければ安心…かな?
タナトス:そっちの道ですか。 どうやって走りましょう
守り人:走らせてあげようか?
タナトス:えっ…… 守り兄ちゃまってそっちの道をひた走り??
守り人:結構走ってるかもね
でも大丈夫。要望が無い限り、無理には引き入れないから。…軽蔑した?
タナトス:いえいえ……なんとなく、納得
納得してしまった私は、そこから、向こう側へと引きずられて行ってしまった。
ここからは会話がどんどん、えすえむっぽくなっていく。
やがて、チャットの最初の会話が固定化されていった。
タナトス:こんばんは
守り人:お待ちしてました
タナトス:見透かされてる……?
守り人:ワタシに声を掛けたくて、ガマンできなかった…?
タナトス:言わないもん。
守り人:その内、自分から云うようになるかもね。
タナトス:む~~。
このやり取りだけで、私は疲弊した。
私には、えすえむは『興味の対象で非日常』だった。
守り人さんは違った。『日常のご飯』だったのだ。
この認識の差が、徐々に私に重く伸し掛かってくる。
徐々に会話がエロ系に寄っていく。守り人さんは毎度毎度、確認を入れる。
メンヘラな私は一応、『OK』と答える。その方が、この場では面白い事を知っているからで、この後もその話を聞きたいわけではなかった。
聞きたくない話が増えていく。
私が話したいのは、えすえむ話ではない。
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