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オーストリアで4本抜歯するまでの話

先日、上下左右の親知らずを合計四本除去してきた。
予約やら待ち時間やらなんやら色々面倒だったので一気に終わらせたかった。ただそれだけなのだが、オーストリア人からも日本人からも驚かれる始末。

今回(今年?)歯周りの問題で色々経験したので書き留めておこうと思う。(書きたいことありすぎてめちゃくちゃ長文になってしまった)

2023年12月:日本の歯科受診

この時のことを今でも恨めしく思う。近所の歯医者で渡航前最後にと、歯医者に通った。しばらく海外に滞在する旨はしっかり伝えた。しかし、噛み癖が悪いからと、マウスピースを作らされ、よく歯磨きするようにといわれて終わった。(一応こっちにもってきたものの今は全然つかってない・・・)レントゲン撮影はなかった。

2024年1月頃:口内炎勃発

この頃口内炎に悩まされるようになった。なんとなく目も痛く感じるように・・知らないうちにストレスが溜まっているのかな、と放置。

2024年2月初め:オーストリア渡航(韓国経由)

乗り継ぎ先の韓国で口内炎悪化。仁川空港で携帯の翻訳アプリを駆使して口内炎の薬を買い求めた。飲み薬と痛み止めを渡されたが、正直効果があったのか・・・わからない。

2024年2月末:謎のインドスパイス

オーストリア到着後、しばらくAirbnb のシェアハウスに滞在。この時もずっと口内炎は続いている状況・・いい加減病院に行った方がよいかもと思いつつ、まだ保険の手続きも終わっていなかった。そんな時に出会った、同じシェアハウスに住むインド人。口内炎の痛みを訴えると、彼はこう言いだした。

「知ってる?インドのスパイスは何にでも効くんだよ。」(インド人)
「え。そうなの?」(私)
 →ほぼ信じてない。30%の好奇心と70%の諦めの境地
「ほらほら舐めてみて」(インド人)

と言われ、半ば強制的に黄金のターメリックを患部に塗らされた。

!?!?

とにかく痛かった。(涙)
インドのスパイスは私の口内炎には全く効果なし。ただただ痛かった。
むしろ症状は悪化した気さえする。

そうこうしているうちに近所の薬局で薬を買い求めた。この時の薬は最高によかった。(名前が思い出せない・・・わかったら追記します)そして、出会った薬剤師さんが素敵だった。アジア系の風貌をしていたが、英語もドイツ語も完璧。薬や症状に関する知識はもちろん、とにかく親身で色々教えてくれた。

2024年3月:歯の痛みが勃発し、初診察

口内炎の症状が落ち着いたかと思ったら、次は歯が痛くなった。そして頭痛がもうひどい。耐えきれなくなり、慌てて薬局へ。アスピリンを出してもらい、毎日アスピリンで痛みを耐えしのぐ。これはいよいよやばいわと思い、歯医者を探すことにした。まだ保険証は受け取っていないものの、手続き自体は完了したためネットで英語の通じる所を探した。とにかく緊急だったので電話で直近の予約の取れるところを探しまくり、5~6件かけてやっとつながった。1週間くらい先だったが、もうそれしかないと思い、予約までアスピリンを飲んで耐えしのいだ。

医療システムもよくわからないまま、予約当日に診療所へ。想像以上にきれいで最新設備が整っており、圧倒された。スタッフは全員英語が通じたため安心して診療を受けた。

そして、ドクターから問題点を早口でまくしたてられ、(とりあえず親知らずがなんちゃらかんちゃらということはわかった)、質問する隙も無いまま言われた。あなたのメディカルプランは

「900€(約15万円)です」

*2024/7/12時点でのレート

!?!?

OMG…びっくりしすぎて何も言えなかった。

保険適用で20~30%くらいは賄われるだろうとのことだったが、いやそれでも10万以上ですかと・・。しかも、実際に抜歯手術をするのは別の人(診察したドクターの兄)なので別途予約を取ってほしいと。

「あ、そうですか・・。ちょっと考えます。(いやむりっす)」
と言って診療所を後にした(この時受け取ったメディカルプランの紙は、今でも記念として残している)。

歯が大事なのはそうなんだが、もうそれしかないですと言われたらそうするしかないんだが・・。別の都市に住む友人(長年オーストリアに住む外国人カップル)に状況を伝えると、いやそれは高すぎるって、と言われた。

これが本当に信頼できる医師だったら考えたかもしれないが、外国人で診察一回目の私に対して質問する隙も与えないままあのプランを出してきた医師を、私は信用できなかった(しかも手術は別の人)。

別の手段を考えることにした。

2024年3月:色々模索した挙句大学病院へ

とにかく色々考えた。近隣の別の国(ハンガリーとかスロバキアとか)が医療費が安いと聞いたので、そこに向かうことも本気で考えた。そして、別の都市に住む友人が信頼できる医者を紹介してくれるというので、電車で2時間、別の都市で治療を受けることも考えた。

そんな中、びっくりする事実を発見。

私は、ÖGKというオーストリアの保険機関の学生保険を持っている。
私が最初に診察を受けた歯医者はオーストリアではプライベートドクターとみなされるのだが、一定期間を経ないまま、別のプライベートのドクターの治療を受けた場合、その治療代に保険は適用されないのだとか・・。

一応、参考情報(ドイツ語原文)も載せておきます。
※保険の内容や時期によって状況は異なると思うので各機関の最新状況を調べた方がいいです

Keine Kostenerstattung
In folgenden Fällen kann die ÖGK die Wahlarztkosten nicht erstatten:
・Sie haben in einem Kalendervierteljahr einen Wahlarzt und einen Vertragsarzt des gleichen Fachgebietes aufgesucht.
・Sie haben in einem Kalendervierteljahr mehrere Wahlärztinnen oder Wahlärzte des gleichen Fachgebietes besucht. In diesem Fall erhalten Sie nur für die zuerst eingereichte Rechnung eine Kostenerstattung.
・Sie haben eine Vertragsärztin oder einen Vertragsarzt privat in Anspruch genommen.
Hier finden Sie Informationen zu Vertragsärztinnen und Vertragsärzten.

Österreichischen Gesundheitskasse (ÖGK) 
https://www.gesundheitskasse.at/cdscontent/?contentid=10007.870516
最終アクセス日:2024/7/12

絶望に打ちひしがれる中、ウィーンの大学病院がいいという噂を耳にした。
(大学病院は公的な機関のため、前にドクターの診察を受けたか否かにかかわらず保険は適用できるそう)ネットでの評判はあまりいいいとは言えなかったものの、とにかく痛みがひどかったので、もうアポもなしで飛び込み懇願することにした。

この時、本気で痛かったので自然と涙が出てくる始末。この時に対応してくれた受付の人、私の顔をみてあらやばいわね、という顔をして、緊急外来に連れていかれた。そして、そのままわけもわからないまま処置が始まり、痛みの根源だった虫歯はなくなった。

オーストリアにきて、というか今年、一番幸せを感じた瞬間だった。

痛みがないって、ほんと幸せだと思う。健康って、ほんとかけがえないものだと思う。実はこの日、私の誕生日の前日だった。あれは、神様からの贈り物だったのか・・。

ただ、私の歯の治療はまだ終わっていない。大学病院はあくまで学生がやってるので、ちゃんとした歯医者さん(?)に処置してもらうようにと言われた。(え、どこに行けばいいの・・?)「私こっちに来たばかりで右も左もわからず・・ととにかく行く当てがないんです」ということを必死に伝え、誰か紹介してもらえないかと頼んだところ、結局、引き続き大学病院で処置できる医師を用意してもらえることになった。(いやできるんかい、と突っ込みを入れそうになったが)ちなみに、この日の治療費は5千円くらいだった。

2024年4月:予約も待ち時間もカオスな大学病院

大学病院での治療はほぼ保険適用のため、実質治療代はほぼ無料だ。それもあってか、とにかく予約が取りずらい。そして、待ち時間も1~2時間など当たり前の世界。(これが嫌で多少お金を出してもプライベートドクターを選ぶ人を何人も知っている)前回の治療時に、次に対応してくれるドクターから連絡があるといわれていたが、1カ月近くたっても音沙汰なし。とりあえずメールした。それでも音沙汰なし。我慢できなくなり、直接大学病院に向かった。そして担当医師が見つかった。

「ああごめんなさいね。返事ができてなくて!忙しかったの最近。××日の〇〇時でもいい?」(担当医師)

ああ1カ月以上待たされたのは何だったのか・・・・。
その後も、同じような状況に遭遇し、担当医の電話番号をなんとか手に入れた。

一応お伝えしておくと、痛みの根源は左上の奥歯の親知らずの横の歯が虫歯になっていたのが問題だった。ただ、親知らずを放っておくと今後も問題が出る可能性があるので除去した方がよいとのこと。

とにかく、親知らずを抜歯しないといけなかった。担当医に手術関連で何も予約してない旨を伝えると(そもそもそんなこと聞いてない)、慌てて別の棟に連れていかれ、予約のみして帰ることになった。その予約は3か月後・・ということで、3カ月待って2024年7月に、ようやくこの根源問題に取り掛かることが決まった。

2024年4月:言葉(日本語)が伝わらない

ようやく始まった担当医の虫歯治療(※親知らずとは別問題)。虫歯自体は除去したが、詰め物が必要だった。治療時にドクターが英語に訳すのが大変な用語に遭遇し(ドイツ語ネイティブなので)、携帯の翻訳機を使って調べようとし始めた。でも、そんな用語を英語で言われたって多分私もわからないだろうと思い、日本語でお願いしますと伝えた。歯科助士の人が携帯を取り出し、翻訳結果を見せてきたが、意味不明で困惑。そんなことが2度もあり、気づいた。いやそれ中国語w(中国人の絶対数が多いから接触頻度が高いのはわかるが、日本語でって言ったんですが)

そんなこんなでその日の治療は無事終わり、親知らずの抜歯まで3か月待つことになった。

2024年7月:親知らずの抜歯(4本)

親知らず除去の日をやっと迎えた。予約は朝9時からだったが、おそらく1~2時間待たされ、処置が終わったのは昼の12時を回っていた。(結局どれくらいかかったのか不明)

上下手術用の衣類に着替えないといけなかったが、下着も脱がないといけないのに更衣室というものが見当たらなかった。それらしき部屋にはロックがかかっており入れない。仕方なく、超速球で個室みたいなところで着替えた。間一髪、誰にも遭遇しなかった。

そして手術室へ。担当医はめちゃくちゃテンション高めのお兄さんだった。本来は、左側の上下のみ抜歯すればよかった。しかし、右側もやりたいかと聞かれ、少し考えた結果、YESといった。もう予約やら待ち時間やら面倒すぎて、とにかく早く終わらせたかった。

そして麻酔。麻酔科医のお兄さんが、誤って私の下唇にまで麻酔を打った。(いやいやそこはやめてww)そして麻酔と唾液が混ざった液体が口の中にたまり、私はこれを除去してもらえるのを静かに待っていた。だがしかし、そのまま放置してお兄さんたちは手術室から出て行った。ぱんぱんに口の中に水がたまった状態で私は必死に耐えていた。そしてお兄さんたちが戻ってきて何か言っているが、私は何も言葉を発することができない。

「あれ君?しゃべれないの?」(担当医)
「・・・・Hmーんんんnn・・」(私)
「え?なんでしゃべれないの?」(担当医)
「Hhhhmmmm(口の中に水が、、、)」(私)
「あ、わかった!飲みこんでいいんだよ!」(担当医)

そういわれても、飲み込むのもつらい。うだうだしていたらようやく口の中の水を機器で除去してくれた。茶番のようだが、結構つらかった。
私の感覚では、こういう状況では吐き出せるように周りにティッシュなどを置いてもらうか、機器で除去してもらうかのどちらかで、飲み込むという選択肢はなかったのだが・・。私の感覚がおかしいのか、よくわからなくなってしまった。

一本目の左下の親知らずの抜くのにはちょっと手こずり、すさまじいドリルの音やかつかつ何かを砕く音が聞こえてきた。目はふさがれていたので音だけで何が起きているのか想像する恐怖・・。その後も色々あったが、処置は順調に進んだ。右の親知らずも本気で抜くのか、いいのか、と2~3回も聞かれた。しかし、一度言った言葉を覆す間抜けにはなりたくないわという、なぞの意地と根性で「YES」と伝え、遂に4本抜歯した。

施術中に驚いたことがもう一つ。第一回目の虫歯の治療の時もそうだったが、こっちのドクターはよくしゃべる。全部ドイツ語だったので意味不明だったが(知らない方がよかったかもしれない)、2人の医者が、まるで休憩室にでもいるかのように楽しそうにおしゃべりしている。何度も笑い声が聞こえてきた。いや、ちゃんと集中して真剣にやってくださいよ・・!と訴えたかったが、こっちはただ口を大きく開いているしかなかった。

ちなみにこの日の治療費は、タダ(保険でカバー)だった。


そして今

・・まだ全部終わったわけではないが、大きな山は乗り越えた。

頬っぺたがぱんぱんに膨れ上がり、こぶとり婆さんのような、食パンまんのような姿になっているが、あとは回復を待つだけだ。

ああ、気づけばもう半年以上たったのか。
もちろん、お金があればもっと早く色々と、苦労もせずに終わったんだろうと思う。でもまあ、学生だし(笑)終わりよければすべて良しということにしようと思う。

早く全部終わることをひしひしと祈るばかりだ。