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第六感を超えた「第七官」とは何か? 〜『第七官界彷徨』というふわふわした小説〜

こんばんは。
雪が頬にあたって寒くてこごえそうな中、今日もお仕事、学校、用事で外に出られた方、ほんとうにお疲れさまです。
私は、朝、ドアを開けた途端に入ってきた冷気と雪に絶望し、もう帰りたい…となったわけですが、今日はひとつ、小説をご紹介しようと思います。


尾崎翠『第七官界彷徨』

『第七官界彷徨』のあらすじ

七つめの感覚である第七官―人間の五官と第六感を超えた感覚に響くような詩を書きたいと願う、赤いちぢれ毛の少女・町子。分裂心理や蘚の恋愛を研究する一風変わった兄弟と従兄、そして町子が陥る恋の行方は?読む者にいまだ新鮮な感覚を呼び起こさせる、忘れられた作家・尾崎翠再発見の契機となった傑作。

紀伊國屋書店ウェブストアより引用。

まず、タイトルからして第七官ってなんなん?ってなりますよね。読む前からすでに不思議な空気感を纏っているし、尾崎翠、という作家名にも惹かれます。

主人公は小野町子という女の子。
彼女は赤いちぢれ毛なのが特徴。町子ちゃんの祖母はそのちぢれ毛のことを気にしています。

町子ちゃんは祖母と住んでいた家から離れ、兄の一助、二助、従兄弟の三五郎の住む家に一緒に住むことになります。
みんな、かなりキャラが濃くて、個性的だから、その人物設定は実際に読んでみて確認してほしいと思います。



https://www.minatonohito.jp/book/266-2/より引用。

私がこの作品を知ったのは、大好きな本屋さんで出会った『胞子文学名作選』というアンソロジー本でした。

こちらの本、ものすごく装丁に凝っていて、読むだけでなく、ただパラパラめくったり眺めたりするだけでも楽しい本なんです。
そして、集められている作品の著者も私が好きな人ばかりでして、

永瀬清子、小川洋子、太宰治、井伏鱒二、松尾芭蕉、小林一茶、伊藤香織、谷川俊太郎、多和田葉子、野木桃花、川上弘美、尾崎一雄、河井酔茗、栗本薫、宮沢賢治、佐伯一麦、前川佐美雄、内田百閒、尾崎翠、金子光晴

と堂々たるメンバーでございます。

しかも、タイトルからお分かりの通り、胞子に関わる小説のみを集めておられます。

……つまり、『第七官界彷徨』は胞子に関わる小説なのです。もっといえば、コケの恋愛が描かれている、風変わりな物語なのです。




もちろん、文庫にもなっており、手軽に読めます。(私は、文庫本の方も後で買いました。)
文庫本の方には、尾崎翠先生が書かれた解説も載っていて、読めば読むほど深まっていく読書体験になると思います。

(ネタバレしない範囲で)個人的な感想めいたことを言うと、作中に出てくる栗や蜜柑が気になって、もう一度読み返そう、と思っているところです。あと、部屋の中に置かれているもの、落ちているものなんかも意味ありげに思えてなりません。

あと、ちぢれ毛の女の子、というのが『赤毛のアン』や、『凪のお暇』を思い出しました。
1931年という100年くらい昔に描かれている小説なのに、全然古い感じがしなくて、新鮮なふわふわ感のある小説です。

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