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私は納屋に住んでいる

納屋は誰にも邪魔されない私の城だ。
住み心地は悪くはない。
リラックスできて何日こもっても飽きることがない。
そして、たまに友達が来る。
今日は定年退職前にやった準備で、唯一正解だったと思えることを紹介する。
それが最後の人生の居場所づくりだ。


納屋に住むことにしたのは

私は定年退職するまで建設会社で働いていた。
建築や土木などをやっている中小企業の地場ゼネコンだ。
その会社で私はリフォーム事業部の責任者をしていた。

定年退職する1年ほど前、自宅の納屋をリフォームして第二の人生の居場所にしようと考えた。
なぜなら毎日母屋の居間を陣取って、テレビを見て暮らすことなどできるはずがないと思ったからだ。
そうかといって家から1時間掛かるゴルフ練習場へ毎日通うこともできない。

妻は私より先に家に居るようになったが、毎日家事や趣味のようにしている片付けに追われていた。
そんな母屋に夫婦が毎日顔を合わせていると、ろくなことがないのは火を見るより明らかだ。

納屋を定年退職後の居場所にした動機

おそらく築80年は経過しているだろう納屋は、母屋の横にある倉庫兼物置だった。

基礎はなく屋根はセメント瓦で2階建てだ。
田舎ならどこにでもある納屋は、使わなくなった農業機械や古い水屋などの家具で埋まっていた。
どっちにせよいつかは片付けなければならない場所のひとつだ。

セメント瓦は近年の酸性雨によって薄くなり、所どころで雨漏りがしていた。
雨が侵入するところの垂木は腐り、建物の状態はよくない。
おそらくこのままだと5年もしない内に解体を決断しなければならないだろうと思っていた建物だ。

迷ったあげくこの納屋をリフォームすることにしたのだ。
解体するのにも費用は掛かるのだから有効利用する方が得策だと思ったのだ。

何とかあと20年持つようにしようと考えた。
私が当時最低目標にした健康寿命である75歳プラス5年だ。

納屋リフォームを開始

先ず屋根のリフォームだ。
セメント瓦と瓦下に使われていた壁土を下ろす。
そして腐った垂木を交換し、野地板には構造用合板を葺いた。
屋根材はガルバリウム鋼板を使うことにした。
もちろん施工は付き合いのある業者だ。
仕事柄、私が自ら現場監督をやった。

解体や知識も資格もある設備配管はDIYだ。

迷ったのは土壁を残すか撤去するかだ。
少しでも耐震性を考えるなら撤去して筋交い補強をするところだが、敢えて残すことにした。
趣味の楽器練習をするためだ。

遮音的に有利だと言い訳がましく考えたが、本音では予算軽減の理由の方が大きかった。

納屋が住まいに向かない構造なのは土間と階高だ。
土間の上に床を作れば天井が低くなる。

そこで梁を上げて吹き抜けにした。
4畳半が二間あった2階は、一間が吹き抜けでもう一間をロフトにした。

床はタイルカーペットを貼り壁をクロスで仕上げれば、一見ちょっとお洒落な新築と変わりない住み家になった。

お勧めできる納屋リフォームとお勧めできない納屋リフォーム

私もこの納屋をリフォームした当初は、あくまで昼の居場所として使うつもりだった。
トイレも新設したので仕事場的な場所として使っても問題ない。

しかし今はベッドを持ち込み、この納屋で寝泊まりしている。

自分にとって今はこの納屋が城のようになっているが、住み家としてお勧めできないのは基礎もなく耐震性に劣るからだ。
建築の仕事をしていた頃、お客様にお勧めできないのがその理由だった。

土壁を全て落とし耐震性を上げ、家を浮かせて基礎を作ることも可能だが、そこまでやれば新築と変わらないほどの予算が必要になるから他の人にはお勧めできなかったのだ。

私は建築を仕事にしていたから予算的に有利なリフォームができただけだ。

もしお勧めするとしたら、寝泊りしない昼間の工房的使い方だ。
納屋改修で予算を考えるなら、できる仕事は全て定年退職後にDIYとしてやることだ。

DIYで予算を検討する場合は、DIYできることとできないことを分けて考える必要がある。
解体や内装はDIYで電気工事や屋根工事は業者にお願いするといったことだ。

たとえ納屋であっても、大掛かりな改修になれば建築知識もある程度は必要だ。

納屋が定年退職後の居場所として

実際私がリフォームをしたのは納屋の半分程度だ。
後の半分は倉庫などの用途にするため片付けをした。

定年退職した当時はまだ月一ゴルフを続けていたので、倉庫の一部にネットを貼り屋内ゴルフ練習場にした。
8帖ほどの練習場でドライバーを振ることはできなかったが、主にアプローチの練習をしていた。

現在はそこが私のDIY工房になっている。
例えば小さな棚やハンガーフック、車中泊やキャンプ道具をDIYする場所だ。

DIY工房で作った棚
置いているのは旅先で買った小さな思い出の土産

もの作りは楽しい。
私は営業で生きてきたので職人は憧れだった。

使わなくなったゴルフクラブを利用してDIYしたハンガーフック


ゴルフをやめて始めたのが、若い頃経験があるドラムの練習だ。
今はリフォームをした納屋の居場所でドラムの練習をするのが日課になった。
旅の計画をしたり文章をパソコンで入力するのも納屋の居場所だ。

3時には手動のコーヒーミルで豆を挽きコーヒーを飲む。
今日は友達が寄ってくれたのでコーヒーを飲みながら話が弾んだ。

そんな納屋ライフが私の第二の人生の居場所になっている。

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