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【嘘】指の隙間の空

電気を付けたまま布団の上で仰向けになり、目をあけたまま両手のひらで目を覆う。
なるべく光が入らないように指をしっかり閉じ、隙間が無いようしっかりと覆う。

どんなに工夫しても、指の隙間から漏れる光が赤く見える。
予定では、真っ暗な中に少しの光が入る様子は夜空になるはずだったのに、見えた景色は夕焼け空だった。

しばらくそうやって、指の隙間が作る夕焼けを眺めていたら、懐かしい道が見えた。

小学校の通学路だ。

冬の初め、学校が終わり家に帰る途中。
近道をしようと初めての道を曲がってしまった。
そして案の定迷子に。

見知らぬ道。
来た道もわからず、とにかく走った。

不安で焦って、
とにかく走って、
曲がって、
走って、
徐々に暗くなってきて、
怖くなって、
走り回って、
走ったら、
遠くに綺麗な夕焼け空が見えて、
そっちへと走って、
走って、
気が付くと、

いつもの通学路に立っていた。

安心して見る空は、赤く出迎えてくれていた。

手をどけると、驚く程眩しい。
電気を消して目を閉じる。
さっき見た景色がゆっくり消えていく。

ありがとう