【嘘】弦を替える

久しぶりに楽器が弾きたい、そう思った。

家に置いてある長らく弾いていないアコースティックギターを取り出してみる。
弦が酷く錆びている。
幸い、替えの弦も置いてあったので、さっそく張ってある弦を外そう。

ペグを適当にグリグリ回しながらジャガジャガ弾くと、奇っ怪なハーモニーが鳴って面白い。
なんとなく、弦を替える時は皆この遊びをしているんじゃなかろうか。
そしてもう一つの楽しみ、弦を全て外した後、サウンドホールを覗き込み、普段は触れないギターの内側を触ってみる。

指先に何か触れる。ギターの中になにかある。
なにかの、紙、みたいだ。
中指と薬指でギリギリ掴めた。
ギターの体内から引っ張り出す。

これは、手紙だ。ルーズリーフの切れ端に書いた、自分宛ての手紙だ。
なんて書いてあるかなんて、読まなくて良い。覚えてる。

そのまま、手紙はサウンドホールに戻す。
ギターの弦は張り直す。
丁寧にチューニングをしてから、少しだけ緩める。
ギターはそのままケースに戻す。
そして押入の上、天袋の奥にしまい込んだ。

替えの弦だけ買っておこう。

そうしてまた、楽器が弾きたいと思う日へ。