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【嘘】干からびた噴水

散歩コースの寂れた小さな公園に、干からびた噴水がある。

一昨日、その公園のベンチでぼーっとしていたら、同じく公園を散歩コースにしているおじいさんに話しかけられた。
おじいさん曰わく、その噴水は一年に一度だけ、毎年同じ時間に、照れるように少しだけ、水を噴くらしい。
何十年もずっと、それを見るのが楽しみなんだ、とのことだ。

明日、十月三日の午後二時半、俺も一年ぶりに出る噴水を見に行こうと考えている。
きっとおじいさんと二人で見ることになるだろうけど、実は、かなり楽しみだったりする。

しかし、なんだ。
謎だ。
毎年その日時にだけ、一年に一度だけ。
何故噴水が出るのだろう。
考えてみたら、不思議なことだ。殆ど人の来ない寂れた公園。干からびた噴水。誰が何の為に。

気になってきたので調べてみた。


調べてみてわかったのだが、どうやらそもそも認識が間違っていた。この公園の噴水に、毎年決まった日時に水を出す、などという決まりはない。
公園は市が管理しているのだが、その市の(まともに更新されていないであろう、古臭い)ホームページの端の端に小さく「※事前に予約を入れると、その日時に噴水を出す事が出来ます」と書かれていた。
つまり、あの噴水は、誰かがずっと、毎年決まった日時に予約を入れていたのだ。

明日おじいさんに聞いてみようかな、とも思ったけれど、なんの記念日かを聞くなんて、野暮か。
そういえば噴水について話すおじいさんは、幸せそうな、だけど少し寂しそうな顔をしていたな。

ありがとう