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「未完の猫」のデザインコンセプト

こんにちは、キャラクターデザイナーの「ゆめ」と申します。
今回は化け猫をモチーフに作成したオリジナルキャラクター
「未完の猫 シュレーディンガー」について
コンセプトや意図を説明したいと思います。


布の中身の無限性

半分を布で覆われた未完成の猫、シュレーディンガー
名前や大元のモチーフは「シュレーディンガーの猫」から連想しました。

シュレーディンガーの猫とは、ある思考実験の名称。
外から見ても中身がわからないよう目隠しされた箱の中に
1匹の猫と、一定の時間ごとに空気か毒ガスを発生させる装置を置いた時に
最初の時間が過ぎた箱の中の猫の状態はどうなるか、といった内容で
この時の猫は「空気が発生したため生きている」「毒ガスが発生したため死んでいる」の二つの状態であると考えられますよね。

この思考実験が証明するのは、古典物理学の否定だそうで
古典物理学の「最初の条件さえ決まれば、それ以降の状態は確定される」という証明に対し
「猫が生きている」「猫が死んでいる」という
2つの状況があり得ることを証明する実験になります。


その中途半端な状況を連想させるように
未完の猫は布(正確には制作途中の作品にかけるクロス)を半分被っています。

そんな布で隠された部分について
皆さんならどんな想像をするでしょうか。
同じ猫の形が反転した姿?
それとも違う姿やモノがある?
そもそも空っぽかも?

デザイン的に布で隠した部分を
猫に被せたような形にせず、なんだかボコボコさせているのは
見た人によって色んな想像をして、反対側の姿を楽しんで欲しいからです。

見えないものや隠されたものを想像していくのは
アート作品を作る上での、一つの考え方だったりします。
自分の思う「理想の姿」を想像するのか、
それとも…「一般的や普遍的な姿」、「恐怖や復讐などのトラウマを植え付ける姿」なのか。

その日の自分の感情によっても想像って違ってきますから
人によって、またその人の「その日の感情」によっても変わる
千差万別に姿を変える猫、それが未完の猫のモチーフ。

だから彼はきっと、普通の猫じゃなくて化け猫なんです。
「猫又」みたいに固定された姿じゃないし、見た人の想像に化けなきゃいけないから
尻尾も2本じゃ足りなくて「3本」もある。
それぞれ、色の三原色である「RGBの化け絵の具」が出るようになってるんです。


裏のコンセプトは「作品を完成させるまでの作者の苦悩」


キャラクターデザインを考える時
必ず影というか…毒のようなものを仕込むのですが
このニヤニヤ笑っている化け猫にも、毒のようなコンセプトがあります。

「作品を完成させるまでの作者の苦悩」とはつまり
作者が作者であり続けるために
「作者が本当に作りたい作品にするのか。」
「大衆に称賛される作品にするのか。」

という、作者側の苦悩。

作家という「才覚」を売り物にして生活すると決めたとき
その才覚が「理解され、求められるモノ」であるか決めるのは、作者自身ではなく世間。
そしてその才覚は、特殊であればあるほど世間と離れてしまい
「理解されず、求められないモノ」になってしまう。
人類にはまだ早過ぎた…なんて、よく聞くでしょw

もちろん特殊すぎて、世間と離れれば離れるほど
より深く作品を愛してくれる熱狂的なファンは付くんでしょうけど
…さて、その熱狂的なファンに
「生活を支えてもらえるほどの経済力」はあるでしょうか。


作家として生きることは、作家として金を得ること
作品が売れるからこそ、作家として生きていける。
そんな生みの親である作者の苦悩を
作品達はどんな感情で見てるんでしょうね。

完成のイメージはあった…
しかし思い止まって、あれでもないこれでもないと
上から何層も何層も違うイメージを重ねられていく、「確実に売れる」ために。
作者の「こうあってくれ」という純粋な思いを、素直に聞いていた作品達は
そんな優柔不断に振り回されて、呆れてしまい…

きっと「せせら笑う」んじゃないかな。
作者の思いを反映したような
嘘をつく「2枚舌」をヒラヒラさせながら。


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