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大人の想像を遥かに超える子どもの世界

エドカフェ  No.15 子どもから学ぶ大人になっているかな?〜セイシロウから学ぶ〜

ものすごく学校を恨んで転校して来たセイシロウ

朝来たら校長室にかばんを置いて「学校なんてぶっこわせ!学校があるから僕は不幸になった!学校があるから母さん苦しんだ!」と文句を言いまくる。
教室の前に来るとバタッとすわって「教室こわいねん!教室大嫌いやねん!」と言って入れない。それがセイシロウのスタートだった。

母には「セイちゃんがいじめられないかな?」「ちゃんと見てもらえるかな?」って思っているうちは入っちゃいかん!自分の子なんか放っておけばいい。周りの子たちと学ぶ覚悟ができたらおいで。と話した。

そのうち母はせいしろうに目もくれず大空小で学び始めた。

少しずつ教室で学び始めたセイシロウ

教室へ入れるようになったセイシロウは、授業にも寝転がって「ぼくもそう思います!」「ぼくは嫌です」など参加するように。「せいちゃん出ていかんな。」「安心したんかな?」とまわりも言い出した。

そのうち教室の後ろで、捨てるようなものをいっぱい集めて来てものづくりを始めた。
ある日他の子が言った。
「校長先生、いいなあセイちゃん、算数せんでもええねんもんなあ。」「え?あんたもしたいの?」「うん」「じゃあしたらいいじゃん。やり!」「いいの?」「え?私が決めるの?あんたがしたいんやろ?」「わかったわかった。やったあ!」と教室を飛び出したその子はしばらくして何も持たずトボトボ帰って来た。
「よう考えたらあんまりやりたくなかった。算数する。」
「段ボールちょうだいって言わなきゃいけないし、いろんなとこ行っていろんなもの集めてこなきゃだし。セイちゃんてめっちゃ努力してたんだな。」

いすにすわらない子がいてあたりまえ。「わおー」って言っても「うるさい」って誰も言わない。自分の学びは自分でつくる。誰のせいにもしない。
そんな大空小で、自分の居場所があるって安心して学べるセイシロウになった。

セイシロウから1番学んだ瞬間

4年生の終わり、セイシロウは校長室に来て言った。
「校長先生、ぼくは毎日学校に行ける子になったので、前の学校に戻ることにしました。」
「あ、そうですか。短かったですね。さようなら」
「理由を聞かないんですか?」
「あ、忘れてました。ごめんごめん理由教えて。」
「ぼくは前の学校3年間、学校に行けないダメな子でした。ある日お父さんが”まわりの子はみんな学校行ってるのになんでお前はいけないんだ?””みんなができることをしていない”とすごく怒りました。そしたらお母さんが助けてくれました。”そんなに苦しかったらもういかなくていい。”と。その瞬間お父さんがお母さんをなぐりました。”お前が甘やかすからだ!”と。その日からお父さんとお母さんはお別れしました。
ぼくが前の家に帰ったらお父さんがいるでしょ?ぼくが毎日”いってきます”と学校に行ったら、お父さんとお母さんは仲直りできる。だからぼくは前の学校に帰るんです。」

どう思いますか?

これ、セイちゃんだからじゃない。ほとんどの子どもがこうだと思うんです。言葉に出さないだけ。表面に表さないだけ。

「お父さんとお母さんがお別れしたのはあんたが原因じゃない!男と女の関係は奥が深い。あんた子どもだからまだわからないと思うけど、大人の私にはわかる!」って校長が言った瞬間、セイシロウの顔はパアーッと変わって、
「よかったあ!ぼくがお別れさせたんじゃないんですか?安心しました。じゃあぼくは大空小学校にいます!さようなら」っと校長室を出て行った。

リーダーになったセイシロウ

6年生のスタート、リーダーと呼ばれるようになった日のこと。
「ぼくは今日から校長室に休憩には来ません。(休憩に来てたんかい?)1年生が今日からぼくのことリーダーって呼びます。リーダーが校長室で休憩してたらリーダーの仕事ができませんから。校長先生長い間お世話になりました。さようなら。」とセイシロウは言って出ていった。

しばらくして校長室に入るとソファーで「ガー」っと寝ているセイシロウがいた。「2度と来ませんって出ていったのに何してるの?」って上からぎゃーっと言うと、目もあけず黙れって手だけで合図して、
「だから校長先生はダメなんです」とセイシロウ。
「何がダメか教えてください。」
「校長先生は何もわかっていません。ぼくね、リーダーなんですよ。今からチャイムが鳴ったらリーダーの仕事をするんですよ。1年生がリーダー遊ぼうってくるからね、ぼくは今リーダーの仕事にかけてるんです。大嫌いだったみんな遊びを1年生とするんですよ。今休憩しておかなかったらできっこないでしょ?授業中休憩しなかったら休み時間頑張れませんよ!校長先生ぼくのことわからないのに言わないでください!」
「あ、ごめんなさい。」と校長が校長室から出ていったあとチャイムがなると、「よし、いくぞ!」と出ていった。

卒業式でセイシロウが残した言葉

大空小の卒業式では、卒業生が自分の考えを自分の言葉で残して出ていく。
セイシロウは言った。
「人にとって1番大切なのは平和です。平和ってとても簡単ですよ!自分のとなりの人だけ大切にしたら、一瞬で世界中の人が平和になれます。」

時限爆弾作って学校を吹っ飛ばすと言っていたセイシロウが・・・
Σ( ̄。 ̄ノ)ノ


子どもは大人の指導でなく、子ども同士の関係の中で学び合い成長していく。大人が邪魔さえしなければ・・・。


他にも興味深いお話満載!(詳しくは動画を・・・)
・セイシロウとの関わりの中で心の穴を埋めていくリョウジ
・「逆言葉なんや!」言葉の裏の思いを読む子ども。
・マニュアルより目の前の子に届く言葉とは?
・「誰でもいいから来てくれたまえ〜」助けを求める姿。
・Why(「なぜ来れないの?」と本人を変えようとする問い)からHow(「どうしたら来れると思う?」と周りの子が学ぶ問い)へ。
・違いを対等にできたら初めて「共に」と言える。
・仮面を被っていたら学べない。仮面を一旦捨てたらもう暑苦しくて被れない。仮面を捨てたらどれだけ仕事がスリムになるか?
・自分が変われば子どもが笑顔に変わる。この体験がなにより。
・指導は一瞬で暴力に変わる。
・職員間のギクシャクは子どもが敏感にキャッチする。
・ダメだと思ったらバトンタッチ。「死ね〜!」って言ってた子がバトンタッチした瞬間天使になる。養護教員の一言。「どっちもどっちやな!」
・主体的な子を「わがままです」「迷惑です」とジャッジして指導して分断してきた。
・あっちの教室は苦しいからこっちへ来ました。これに問題あるとしたら先生同士のノルマやプライド。
・自主的(先生がもってる答えに自主的に向かう)と主体的(自分で考えて自分で答えを出す)は全然違う。
・高2になったセイシロウが「インクルーシブ教育を見直そう」という文科省と東京大学のシンポジウムに登壇して話したことを投稿した文章。



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