見出し画像

海外でデザインを仕事にする 世界の果てまで広がるフィールド

❝本書は、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカの10カ国を拠点に活動するデザイナー14名が、自らの体験を綴った本である。日本を飛び出し、海外で仕事を獲得し、キャリアを積み重ねながら独自の働き方を見出していく過程は、現在進行中のビビッドなものばかり。読んでいると、彼らと一緒にデザインの広い世界を探検しているような気持ちになる。(中略)自力で道を切り開いている者たちらしい爽やかで熱気に満ちた文章も、読む者を駆り立てるに違いない。❞
(「まえがき」より抜粋)

海外で仕事をする。その言い回しには、どこか華やかなイメージが付きまといます。スターデザイナーのもとで働いたり、打ち合わせのために各国を飛び回ったり、世界の名だたる企業と協働してプロジェクトに取り組んだり──。そうした、ある意味で無邪気な憧れをかきたてるダイナミックな現場を垣間見る。もちろんそれはこの本のひとつの側面です。

一方、その裏で本書の「地」の部分を構成するもの。それは、進路選択への悩みや自身の職能への不満に直面した瞬間を振り返ったり、同僚との何気ない会話や日常のふとした出来事を思い返したりといった、素朴な暮らしの風景です。デザイナーならではの視野・視点で描かれつつも、そこには、自分もきっといつかどこかで体験したような、そしてこれから経験するかもしれない、身近なある人の記憶があります。

“海外でデザインを仕事にする”──その終止形のタイトルは、「仕事にしようよ!」という呼びかけでも、「仕事にすべきだ!」という訴えでも、「仕事にした方がいいんじゃない?」という煽りでもありません。自分なりの方法で道を切り拓き、それぞれのスケールで世界に確かな存在感を示している14人の、熱気に溢れ格好良く、それでいて素朴さにも満ちた生き方を知れば、きっとそれぞれにとってのロールモデルが見つかるはず。そんなささやかな期待と確信を込めています。

内容紹介

自分なりのスケールで世界に確かな存在感を示す14人のデザイナーによるエッセイ。IDEOの欧米オフィスを渡り歩いた職人的仕事術、Googleのアートディレクターに至る紆余曲折、テキスタイルの可能性を探る北欧のアトリエ風景、制約に満ちた途上国のファブラボでの奮闘…。フィールドに飛び込み領域を切り拓く先駆者からのメッセージ。

著者紹介

鈴木 元/GEN SUZUKI STUDIO
1975年生まれ。金沢美術工芸大学卒。英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)、デザインプロダクツ科修了。松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)、IDEOロンドン、ボストンオフィスを経て、2014年にGEN SUZUKI STUDIOを設立。
日用品、家具、家電など幅広い領域で、国内外の企業にデザインやコンサルティングを行っている。
金沢美術工芸大学、多摩美術大学非常勤講師。

森山 茜/Studio Akane Moriyama
2010年に Studio Akane Moriyama をスウェーデンにて設立、現在もストックホルムを拠点にテキスタイルを素材として建築空間における作品を制作する。
主な作品に〈O 邸のカーテン〉〈Cubic Prism〉など。

青木 翔平/Keio University
1986年鳥取県生まれ。2009年東京大学工学部卒業。2015年東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。
西アフリカのガーナにおけるFabLabを拠点に地域のニーズに特化した製品開発を行う起業家の育成に取り組む。
慶應義塾大学SFC特任助教。平成26年度東京大学総長大賞受賞。博士(工学)。

福定 良佑/FUKUSADA DESIGN
1979年大阪府生まれ。金沢美術工芸大学デザイン科インダストリアルデザイン専攻を卒業後、2002年よりシャープ株式会社にプロダクトデザイナーとして勤務。2007年に退社後イタリアに渡り、ミラノのドムスアカデミーにてインテリアデザインコースの修士号を取得。2008年からミラノのスタジオウルキオラに勤務、プロダクトデザイナーとしてパトリシアウルキオラのアシスタントを務める。2012年に日本へ帰国後、京都にて自身のデザインスタジオ FUKUSADA DESIGN を設立。

德島 泰/FabLab Bohol
1978年京都府生まれ。学生時代はWEBとビジュアルデザインとインターネット技術を中心に学び、大学在学中よりIT系ベンチャー企業に勤務。2004年より個人事業にてWEBデザイナー兼SE。プロダクトデザイナーへのキャリアチェンジのため2007年に大学に再入学。2009年より医療機器メーカーのインハウスデザイナーとして、医療機器のプロダクトデザイン、GUIデザインなどを手がける。2012年8月から2014年12月まで青年海外協力隊(産業デザイン)として比国貿易産業省のデザインディレクター職を務め、「FabLabを用いたイノベーション環境構築による貧困削減プロジェクト」のPMとしてフィリピン初のファブラボ立ち上げを行う。2015年より慶應義塾大学所属。

川島 高/Google
1981年生まれ。慶應義塾大学卒業後、2004年に渡米。文化庁が主催する新進芸術家海外研修員として、カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA) にてメディアアート修士課程修了。アーティストとして作家活動を行う傍ら、アートディレクターとして Crispin Porter + Bogusky や AKQA などの広告代理店での勤務を経て、日本人として初めてGoogleのクリエイティブラボに参画。サンフランシスコ近郊に在住。
Web: http://www.takashikawashima.com
Facebook: https://www.facebook.com/takashi.kawashima
Twitter: https://twitter.com/kawashima_san

今村 (庄司) ひかる/MV Design and Products B.V
1980年東京都生まれ。2003年武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。2003~2007年KMD/ Kei Miyazaki Design勤務。2011年Design Academy Eindhoven BA Man and Activity学科卒業。2013年からMV Design and Products B.V. 勤務。
主なプロジェクトに〈Schisis App / Radboudumc〉〈Hepatitis C Plan / AbbVie Care NL〉他。
作品掲載書籍に〈Looks good Feels good is Good. How Social Design changes our world〉他。

長田 喜晃/GK Shanghai
1982年神奈川県生まれ。2005年東京大学工学部社会基盤学科卒業。2005年リスボン工科大学建築学部に短期留学後、2008年東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻修了。2008年よりGK設計勤務。2012年よりGK上海。
主な設計作品に〈上海万国博覧会サイン〉〈北京豊台科技園ストリートファニチュア〉〈台湾マツダ新世代店舗デザイン〉ほか。

青木 慶一/Neomind Design Studio
1981年京都府生まれ。2002年山梨大学工学部を休学後、桑沢デザイン研究所夜間部プロダクトデザイン専攻に転学。2004年~2012年株式会社デザインオフィスバックス在籍。2012年夏、渡独。2013年春よりNeomind Matthias Fischer Mirko Kiesel GbR在籍。

山本 尚明/Panasonic Corporation
1978年兵庫県生まれ。2001年慶應義塾大学環境情報学部卒業。
2001年より松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)入社、スペース&メディア創造研究所勤務。新興国・途上国での新規事業コンサルティングを経て、現在は、産地(原産国)と職人と顧客を繋ぐIoTを活用した事業に取り組む。

清水 花笑
2006年、学習院大学文学部哲学科美学美術史専攻卒業。2008年、KIDI PARSONS Product Design demaprment卒業。2011年、デザインアカデミーアイントホーフェンMan&Well-Being卒業。2012~2016年、Studio Joost Grootens勤務。

中山 雄太/National University of Singapore
1979年東京都生まれ。2003年慶應義塾大学環境情報学部卒業。2005年慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科修了。2006~2007年 南カリフォルニア大学訪問研究員。2008年 シンガポール国立大学ECE学部助手。2010年よりシンガポール国立大学インダストリアルデザイン学科デザインインキュベーションセンター勤務。

小林 耕太/ustwo
1983年愛知県生まれ。デジタルプロダクトデザイナー。15歳で単身渡米し高校・大学を卒業後、関西で不動産業界でサラリーマンになるために帰国。2009年に再渡米しシカゴでデザインの専門学校へ。修了後はニューヨークの会社で勤務。
主な仕事に〈TED.com〉〈Nike Soccer App〉など。エージェンシーのデザイナーとして働く傍ら、チャリティビールブランド・一本松ビールの発起人でもある。

村上 あずさ/Studio Swine
1984年愛知県生まれ、ロンドン在住。ロンドン大学バートレット校で建築学科を卒業後、英国王立芸術学院(RCA)デザイン・プロダクツ専攻修士課程を修了。2011年独立、Studio Swine(スタジオ・スワイン)を立ち上げる。地域の文化や工芸に伴ったデザインを作り、グローバル化や環境問題など、素材のイノベーションとともに考える作品を作る。
これまでに、「Wallpaper*」誌、カンヌ映画祭受賞、スワロフスキー・デザイナーオブザフューチャー受賞。オブジェクト、映像、インスタレーションを制作。
主な展覧会に「What is Luxury?」ヴィクトリアアンドアルーバート博物館(V&A)、第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展覧会など。

目次

鈴木 元
/London, U.K. + Boston, U.S./GEN SUZUKI STUDIO
言葉に頼らないデザイン――国境を越えるプロフェッショナリズム

森山 茜
/Stockholm, Sweden/Studio Akane Moriyama
テキスタイルで空間を変える――北欧の小さなアトリエから

青木 翔平
/Takoradi, Ghana/Keio University
途上国のファブラボで挑む、現地が活きるビジネスのデザイン

福定 良佑
/Milan, Italy/FUKUSADA DESIGN
ミラノが磨く感性――職人とともに高めるデザインの現場

川島 高
/San Francisco, U.S./Google
シリコンバレーでアートディレクターになるまで

德島 泰
/Bohol Island, The Republic of the Philippines/FabLab Bohol
だれもがデザインできる環境をつくる――メイド・イン・ボホールへの挑戦

今村ひかる
/Rotterdam, The Netherlands/MV Design and Products B.V
人に寄り添うサービスのデザイン――状況を読み解き、体験をつくる

長田 喜晃
/Shanghai, China/GK Shanghai
都市のスケールを跨ぎ越える――愛着を持てる街のデザインへ

青木 慶一
/Munich, Germany/Neomind Design Studio
造形とコンセプトを研ぎ澄ます――ブランドをつくるデザイン言語

山本 尚明
/Da Nang, Vietnam/Panasonic Corporation
最高のソーラークッカーを目指して――ベトナムで学んだデザインの原点

清水 花笑
/Amsterdam, The Netherlands
リサーチを最適化するビジュアライゼーション――動き続けることで見えてくるもの

中山 雄太
/Singapore/National University of Singapore
アイデアを育むプロトタイピング――デザインとテクノロジーの交差点で

小林 耕太
/New York, U.S./ustwo
デジタルプロダクトデザインの最前線――ニューヨークで食えるようになるまで

村上 あずさ
/London, U.K./Studio Swine
あるべき物を探り当てる――旅と研究からはじまるスペキュラティブデザイン

書誌情報

体 裁 四六・272頁・定価 本体2400円+税
ISBN 978-4-7615-2638-2
発行日 2017/02/01
装 丁 フジワキデザイン

企画・編集・DTP 松本優真

お求め


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?