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生物工学はおもしろいぞ #コルクラボ編集専科

「細胞は分子でできている。でも、分子を集めても生命にならない。生命現象はまだ解明されていない」

工学部の1回生だったぼくは、ある教授のこのひとことで、生物工学に興味を持った。

小学生の頃からプラモデルを作ることが好きだった。ガンプラをいくつも買って、たくさん作っていた。
最初は小さな部品をつくることから始まる。パーツを組み合わせ、部分と部分をくっつけいき、腕ができ、足ができ、胴体ができ、頭部ができる。順に組み合わせていくと、カッコいいモビルスーツが目の前に現れる。
組み立てる過程が好きだった。あのプラスチックの板や、小さな塊がこんなにカッコいい姿になっているのかと思うと、驚きと達成感が溢れる。

小学生の頃、夏休みの自由研究で虹について調べたことがあった。
虹は、日光が、大気中の水滴で、反射と屈折することにより現れる。
図書館やインターネットで調べ、画用紙にまとめていった。そのときは、すべては理解できなかった。
ただ、虹という現象は、物理や化学で説明できるという驚きに、胸をときめかせた。
身の回りの自然現象を、感覚に加えて、言葉や理論で、もう一度新しく知る感覚は、とてもわくわくした。
だからぼくは、理科が好きだった。

部品を組み合わせれば完成するし、自然現象は物理や化学で理解できる。それがおもしろかったし、過程が好きだった。

だから、分子を組み合わせても生命にならないと言われたとき、ものすごく驚いた。

だって!! 細胞には、こういう分子があって、DNAがあって、アミノ酸があって、タンパク質があって、いろんな機能を持つ組織があるって、わかってるんだよ?
それぞれが、こういう機構、こういう化学反応を起こして、こんなタンパク質をつくり出したり、エネルギーを得たりしているって、現象を説明できるんだよ?
でも、その組織を、タンパク質を、分子を単純に組み合わせたって、生命にならないだよ!!

不思議! ほんと不思議! なに!すごい! おもしろい!!
生命現象ってなに! いのちってなに!! なんで生きているの? 分子と「生きている」の差ってなんなのさ!
こう思っているぼくは、生きている。
どういうこと?

好奇心が暴れまわった。

そしてぼくは、挑戦の物語が好きだった。
未知の世界に勇気を持って踏み出し、あきらめずに挑み続ける主人公の姿に憧れていた。
『交響詩篇エウレカセブン』や『天元突破グレンラガン』は、大学生のぼくに、自分の一歩で、自分の選択で、お前の人生を歩めと言っているようだった。
(いまでもそうだが)悩む時間が長く、問題を先延ばしにし、どこか誰かに決めてもらいたいと、他人に自分を委ねる生き方とは真逆の姿に強く憧れ、そうなりたいと思っていた。

だから、わからない世界が広がる、生命科学の世界、生物工学の世界に、ぼくは一歩足を踏み入れたのだった。(だったらもっと研究頑張ればよかったなんて後悔するけど。笑)

生命現象を扱う生物工学に興味を持ったのは、いま思えば必然だったのだろう。
たくさんの「好き」があったから生物工学を専攻したのだと気がついた。
そして、いま出版社で働いているのも、「好き」な選択の末なのかもしれないと再認識した。



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