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冬の"熱風"が背中を押してくれた。スタジオジブリ『熱風』11月号を読んで。

スタジオジブリの『熱風』11月号の特集読んだ。谷底に落とされたような感覚になった。わかっていたつもりの、社会のこと、歴史のこと、日本のこと、そして「自分自身」について、なにも"わかっていないこと"を突きつけられたのだ。でも、なぜだか、興奮しているのは、「知らないということを教えてくれた」ということと、その中で「どう生きるのか」を問われている気がしたからだ。

11月号の特集は、『座談会 経産省 次官・若手プロジェクト「不安な個人、立ちすくむ国家」をめぐって』というテーマだ。
今年の5月、経済産業省の次官・若手プロジェクトがまとめた『不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~』という資料が、ネットを中心に大きな話題となっていた。ぼくも、いち早くダウンロードして読んだ。
驚いた。「国家」側の人たちが、ぼくが漠然と感じていた不安や不満を言語化してくれたように思えたからだ。そして、「若手プロジェクト」は、おなじような目線で課題感を持っていて、これからの日本をどうしていこうかと考えているんだとわかり、嬉しい気持ちになった。
だから、この特集の「座談会」では、どのような議論があるのか、非常に楽しみだった。

議論は、想像以上に侃々諤々なものだった。
経産省の若手と、上野千鶴子氏、小熊英二氏、雨宮処凛氏、そして鈴木敏夫氏が、この資料とつくった経緯や、この資料に足りない視点、課題、そしてこれから何をするべきなのか、について、さまざまな観点から議論している。
「若手」の方々には、批判の意見がいくつもあがる。この論点が足りないということ、「官庁」に勤める人のみの視点であること、いまの日本社会の現実と課題を把握できていないこと。実際、この議論の中だけでなく、さまざまな人から批判を受けているようだった。
その後、資料でたりていなかった視点や論点である、ジェンダー問題や、いまの日本社会の状況とその課題について議論されていく。

印象的だったのは、その批判に「若手」たちは素直に受け止めていたことだ。そして、現状から、どう進もうとしているのかについて考え、行動していることだ。
ぼくは、この議論の過程を読み終わった後、絶望に似た感覚と同時に、一歩踏み出す勇気を感じたのは、「若手」のその姿勢だったのかもしれない。

議論は苦しかった。「若手」への批判は、読者である自分に向けられた批判であったからだ。「知ったかぶり」をしている自分自身への批判だ。田舎の社会を18年間過ごし、ある程度良い大学に通い、東京で働いている視点での「わかっている」にすぎないのだ。「わかっていたつもり」でしかなかった。そのショックが無力感につながらなかったのは、おなじような「若手」世代の彼らが、学びの姿勢を続けていたからだ。
そこからがスタートなんだなと思った。「無知」であることを知ることが、スタートなんだと、改めて認識できた。勇気をもって公開した彼らは、大きな学びを得て、これからまた新しい一歩を踏んでいくのだろう。彼らにそう感じたからこそ、ぼくは、ぼくなりに、谷底から這い上がって、その課題について進んでいきたいと思った。

この議論が、より理解できたのは『安心社会から信頼社会へ』を読んでいたからだと思う。そこで議論されている社会状況のリアリティがこの「熱風」の議論にあった。それに、家入一真氏が『なめらかなお金がめぐる社会。あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。』で述べていることがビジネスとしても成り立つ、いまの日本社会が抱える課題解決策のひとつであることが、より一層理解できた。
1冊の本が、より理解を深めてくれた。そしてそれが、あらたな学びにつながった。そういう経験を経て、ぼくは、世界を考える「視点」をみつけて、そしてその「視点の数」はたくさんあるということを、発見できる「本」を届けたいし、つくりたいと思った。

夜風はもうすごく寒いけれど、"熱風"がふいて、胸は熱い。勢いでこんな文章を書いてしまった!

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