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THINK BIGGER

THINK BIGGER (Sheena Yengar著 櫻井祐子訳) 

選択肢がない課題に対して、どのように解決策を導き出すのかを6つのstepで解説した本です。

著書のSheena Yengarさんは前書"選択の科学"において、様々な実験や著者自身の経験を通して、多くの選択肢の中からよいものを選ぶ方法を解説し、同書はベストセラーとなりました。同書の中でも、多数の選択肢よりも限られた選択肢の方が購買意欲が上がる傾向にあるということを示したジャムの実験はマーケティングの世界でも幅広く知られています。ジャムの実験の他にも、選択という大きなテーマに対して、様々な角度から視点が当てられた非常に興味深い本で、私は何度も頷きながら読んだのを覚えています。

そんなSheena Yengarさんの発想法の本を見つけ、すぐに購入しました。これまでも発想法の本は何冊か読んではいたものの、選択について興味深い洞察をしていた著者がどのような発想法を解説するのか楽しみにしながら読み進めました。

表題のTHINK BIGGERと名付けられた発想法の大まかなstepとしては以下の通りです。

1.解決したい課題を特定する

2.課題を重要な部分に分解し、サブ課題を設ける

3.意思決定者(自分、ターゲット、第三者)が何を望んでいるかを比較する

4.サブ課題を解決するための方法を探索する

5.解決策の中で最善の組み合わせを見つける

6.他人から見てどのように見えるかを試し、自分の解決策を理解する

課題を解決する方法を探し、アイデア同士を組み合わせるいう方法は、他の発想法の本と大きな違いは無いように思われるかもしれませんが、課題を特定し分解するstep1、2、そして他人に自分のアイデアがどう見えているかを知るstep6に特徴があると感じました。

step1では課題を定義することの重要性が書かれています。特に課題に対して解決策を押しつけるのではなく、あくまで課題の定義を先にするべきという点と、課題をいつまでにどのくらいと具体的に決め過ぎるのではなく、開いた問いを課題にしてその課題の階層(範囲の程度)を上げ下げし自分にとって一番モチベーションが高まる課題を定めるという点は私にとって新たな視点でした。
step2ではstep1で特定した課題を分解しサブ課題を設けることで本当に解決したい課題を見つけていく方法が紹介されています。分解するプロセスで課題に対する理解を深め解決策が少しずつ見え始めるということが書かれていますが、サブ課題を5つ程度に制限するという点は著者の“選択の科学“とも重なるように感じました。
step1からstep2にかけて課題を定義すること、そして分解して本当に解決したい課題は何かということを理解することの大切さを学びました。

step6では、他人に自分のアイデアを理解してもらうことでアイデアの可能性を広げるいくつかの方法が紹介されています。
助言だけが得られるフィードバックではなく、自分のアイデアを説明してもらうプレイバックをしてもらうことでアイデアを拡張、構築するという方法はこれまで試したことがない方法だったので、試してみたいと思います。

この本を含め、発想法の本を読んでいるのはマジックの創作のための目的で読んでいるのですが、質の高いアイデアを出すための方法としてはこれまで読んだ発想法の中でも一番と言っていいほどの本で、早速この方法で創作を進めてみたいと思えました。課題設定として、まずはどんなシチュエーションでどんな目的でそのマジックを作る必要があるのかを考える必要がありそうです。THINK BIGGERで発想することで、独自のマジックを作る必要がない、もしくはその目的のためならマジックでなくてもいいという結論に至る可能性もありますが、それはそれでいいかなとも思います。

最後に自身の趣味のことを書いてしまいましたが、様々な分野で役に立つ発想法が体系的に書かれた本なので、質の高い発想をしたい方はもちろん、何かアイデアを出したいけれど出し方が分からないと言うような方にもおすすめできる一冊です。


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