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「自分たちの野球」という過剰意識

元号が令和に変わってはや1ヶ月。6月に入りプロ野球は、毎年恒例の交流戦の期間へと突入しました。

交流戦の期間になると毎年のように言われるのが、「セリーグはパリーグに通用しない」「パリーグの方がレベルが高い」とのワードでしょう。

事実15年目に突入した交流戦において、セリーグのチームが優勝することはあっても、セリーグトータルで勝ち越したのは2009年の一度のみと、明らかにその実力差を見せつけられています。

それは、現在リーグ3連覇中でリーグ4連覇に向けて首位で交流戦に突入した広島についても例外ではありません。

鈴木誠也の3試合連続決勝本塁打が飛び出し、25年ぶりのリーグ優勝に向けて大きく弾みをつけた2016年。円熟味を増したチーム力で、あのソフトバンクと最終戦まで交流戦優勝を争った2017年。

上記2年は、パリーグのチームとも対等もしくはそれ以上に張り合える力を持っていましたが、薮田和樹・岡田明丈・今村猛・中崎翔太ら投手陣の劣化、丸佳浩や新井貴浩が抜けたことによる野手構成の変化もあり、その他の選手の台頭はあっても、最早対等には争えない関係になりつつあります。

そのためか、昨季は7勝11敗と負け越し、今季も西武・ソフトバンクという昨季の1位と2位という強豪チームとの対戦から始まったとはいえ、2勝4敗と苦しいスタートとなりました。

西武の「山賊打線」やソフトバンクの強力投手陣など、確かにセリーグ各チームとの実力差を感じる試合が多いのですが、そんな中でも気掛かりなのは「自分たちの野球」への異常な拘りです。

その最たる例は、ソフトバンク戦で見られた、捕手・甲斐に対する盗塁企画でしょう。

記憶にも新しいですが、昨季の日本シリーズで広島は、捕手・甲斐の前に6連続盗塁阻止を許し、得意の足攻を封じられ、結果1勝4敗1分で悲願の日本一を逃しています。

そんな甲斐に対して、この三連戦でも三度盗塁を企画し、一度は成功したものの二度刺され、盗塁成功率で見ると.333ですから、上手く行ったとは到底言い難い結果となっています。

この例の中での「自分たちの野球」というのは、即ち広島の野球の象徴とされる機動力野球のことですが、昨年の日本シリーズという大舞台で完膚なきまで叩きのめされたにも関わらず、何の反省もなく甲斐に挑んで玉砕していくのはいかがなものなのでしょうか。

結局、「自分たちの野球」をすることだけに拘り、相手のことなど片時も見ていない証ではないでしょうか。

確かにセリーグでは、「自分たちの野球」を行えば単純な実力差があり、相手のことも対戦が多い分良く知っていることから、こうすればこうなるというような何となくの帰結が見えているため、勝ちを拾うこと自体そうは難しくないでしょう。

しかし、実力に差があるパリーグ相手ではそう単純にはいきません。そんなことは過去の交流戦の戦績や、直近の日本シリーズでの戦いを見れば分かるはずです。

それにも関わらず、敵チームのスカウティングを怠り、相手の嫌がることではなく、自分たちのやりたいようにやるだけで、相手を見て柔軟に対応する意識に欠けていると言わざるを得ません。

正直、戦力が落ち、このように穴を見せている広島が、セリーグ内で圧倒的な強さを見せているという、セリーグのレベルの低さに辟易しますが‥

セリーグのチーム相手にはごまかせても、実力のあるパリーグのチーム相手ではごまかしが利かないと言ったところでしょうか。

セリーグ内でも、春先の低迷からも分かる通り、以前ほど単純な物量や実力差で押し切れなくなってきた今こそ、相手を見た柔軟な野球を行うことを覚えるべきではないでしょうか。

それが出来た時に、今まで上辺だけだった強さに一つの太い芯が宿り、本物の強さになるのではないでしょうか。

セリーグとパリーグの実力格差が進行する中で、相手を見ることを覚えず、自慰的野球を行っていたのでは、日本一という悲願の成就は夢のまた夢です。

#野球 #プロ野球 #広島 #カープ #自分たちの野球

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