フェニックスリーグの成績から見る広島「収穫の秋」
秋と言えば、読書の秋や食欲の秋とはよく言ったものですが、収穫の秋でもあります。プロ野球では各球団がレギュラーシーズンを終え、秋季キャンプへと向かっていく中で、一足早く収穫の秋という言葉に相応しい成果を出したのが、フェニックスリーグの広島ではないでしょうか。
フェニックスリーグとは秋のOP戦のようなもので、毎年宮崎にて約1か月間各球団の若手選手にとっての鍛錬の場となっています。そのような舞台で広島は11勝3敗2分と好成績を残し、韓国のチームを含めた16球団の中で見事優勝を遂げました。
リーグ4連覇を狙いながらもレギュラーシーズンは4位に終わり、世代交代も意識し始めなければならない中、若手中心にこれだけの成績を収めたということは、他球団と比してもしっかり力を付けている証ですし、将来への展望も明るく開けてきたと言っても良いでしょう。
そんな成果十分であったフェニックスリーグについて、以下では参加全24選手の成績を振り返りながら、若手選手たちの収穫を明らかにしていきたいと思います。
※データの集計は広島東洋カープ公式サイト(https://www.carp.co.jp/farm19/result/index.html)やTwitter上の実況ツイートを参考に行いました。集計しきれていない部分もあり、正確な成績とは多少の誤差がある場合がございますが、ご了承ください。
1.投手編
17 岡田明丈
6試合(4先発) 16回 11安打 15三振 5四死球 2自責 防御率1.13
K%23.4 BB%7.8 MAX152㎞ AVG146㎞~148㎞
生命線のストレートとスライダーの球速の劣化により投球の組み立てが難しくなり、かつ制球もままならなくなったために、今季の一軍登板は僅か3試合とキャリアワーストのシーズンとなった2019年でしたが、フェニックスリーグでは復活の気配を見せました。
シーズン途中からリリーフに回り、全力投球を続けたことが功を奏したのか、MAX152㎞(球場ガンでは156㎞)でAVGでも146㎞~148㎞を計測するまでに球速が戻ってきました。ですから防御率1.13に代表されるように、成績も圧巻のものとなっています。
既に一軍で実績もあり、持っている能力は誰もが認めるところですから、この感覚を忘れず秋季キャンプでは再現性を高めていき、来季は先発/リリーフどちらでも一軍で活躍する姿を楽しみにしたいと思います。
29 ケムナ誠
4試合(1先発) 10回 7安打 9三振 0四死球 0自責 防御率0.00
K%24.3 BB%0.0 MAX149㎞ AVG144㎞~145㎞
大卒ながら投手歴が高校からと短く素材型の投手でしたが、2年目の2019年は二軍で完投勝利を挙げ、終盤には一軍デビューを飾るなど一定の成果を収めましたが、フェニックスリーグでもその成長した姿を見せつけました。
強烈にシュート回転するストレートを武器として、10回を投げ被安打は7に抑え四死球も0とねじ伏せる投球は数字だけ見ても圧巻のものです。三振がそこまで多くないのは、ストレートの球質と武器となる変化球を確立できていない故なのでしょう。
新任の横山竜士一軍投手コーチは強いボールを求める方針であり、ケムナの独特の球筋から球威のあるストレートは目に留まることは間違いないと思います。ですので大卒3年目となる来季は、スライダーや落ちる系のボールといった変化球を使えるレベルまで仕立て上げ、まずはリリーフとして一軍定着を狙っていきたいところです。
36 塹江敦哉
5試合(0先発) 8回 5安打 10三振 1四死球 0自責 防御率0.00
K%33.3 BB%3.3 MAX153㎞ AVG147㎞~150㎞
2019年は一軍で11試合登板を果たすなど、左のパワータイプのリリーフとして存在感を見せましたが、フェニックスリーグでは格の違いを見せつけたような内容となりました。
5試合で防御率0.00を記録し、投球回を超える三振数に加えて課題の制球も四死球を1つに抑えるなど、二軍クラスには見下ろして投げられているかのような素晴らしい成績となっています。
AVGでも150㎞を記録する日もあるストレートの威力は本物ですし、二軍でやることはもうないような状態ですが、変化球の精度/ボールの角度のなさ等課題はまだまだありますし、中村恭平やフランスアといった同じパワータイプの左腕とどのように差別化を図っていくかも課題となってくるのではないでしょうか。
43 島内颯太郎
2試合(0先発) 4回 0安打 5三振 1四死球 0自責 防御率0.00
K%38.5 BB%7.7 MAX151㎞ AVG147㎞
ドラフト2位入団のルーキーで即戦力と期待されましたが、一軍では25試合の登板で防御率4.40といまひとつな成績に終わってしまいました。ただ常時150㎞前後を計測するストレートの威力はホンモノで、フェニックスリーグでも若手打者を自慢の快速球でねじ伏せてみせました。
投球成績には特段問題はないのですが、気になる点は僅か2試合の登板に終わっている点でしょう。フェニックスリーグの後半は登板がなく、秋季キャンプの一軍メンバーにも入っていないことから、故障離脱中なのかもしれません。
秋の鍛錬の場を失ってしまった格好となりましたが、この島内の課題は武器となる変化球です。フェニックスリーグでは、曲がりの小さなスライダーの習得を目指していたようですし、一軍レベルで武器となる変化球を身に付けられれば一軍のリリーフとして十分やれるだけの力は持っています。ですので、まずは故障を治して万全の身体に戻してもらいたいものです。
46 高橋樹也
6試合(0先発) 10回 10安打 14三振 0四死球 4自責 防御率3.60
K%35.0 BB%0.0 MAX146㎞ AVG141㎞~143㎞
2019年シーズンはルーキイヤー以来の一軍登板なしに終わりましたが、フェニックスリーグではそれを感じさせない見事な投球を披露しています。
6試合にリリーフ登板し、防御率こそ3.60でしたが10回を投げ14三振を奪い四死球は0と圧巻の投球内容です。元々制球力には定評がありましたが、それに加え140㎞前後だったストレートに力強さが増し、得意のチェンジアップの精度も向上したのでしょうか。
今後一軍に定着となると、まずはリリーフということになりますが、決してパワータイプの投手ではなく、一軍にいるリリーフ左腕とはキャラが被っていないため、思いのほか出番はあるように思います。阪神の岩崎優をモデルとして、リリーフの一角としての成長を期待したいところです。
47 山口翔
5試合(1先発) 12回 22安打 10三振 9四死球 17自責 防御率12.75
K%14.9 BB%13.4 MAX148㎞ AVG142㎞~144㎞
高卒2年目ながら、交流戦前から一時先発ローテーションに組み込まれプロ初勝利を挙げる活躍を見せましたが、その後は打ち込まれるシーンが多くなり、結果を意識するあまり腕が振れなくなる場面も散見されました。フェニックスリーグではその中でもネガティブな模様が思い切り表れてしまうこととなりました。
防御率は12.75と散々な数値で、12回を挙げ22安打はさすがに打たれすぎと言わざるを得ません。2019年の二軍での成績も防御率4.42というものでしたし、まだまだ二軍レベルから脱することが出来ていないということでしょう。
ストレート自体の質は平凡なため、球速を上げることによるリスクヘッジを図る必要ありますし、変化球もスライダーやフォークの質をもっと高めていく必要があります。課題は山積みですが、初登板時に見せたように素質は高いのは間違いないので、まずはフェニックスリーグで出た課題にしっかり向き合ってもらいたいところです。
48 アドゥワ誠
6試合(5先発) 18回 12安打 12三振 6四死球 4自責 防御率2.00
K%16.7 BB%8.3 MAX148㎞ AVG138㎞~144㎞
一軍では先発ローテの一角に食い込みなど、フェニックスリーグ参加者の中では抜けた実績を持つアドゥワですが、その格の違いを見せつけるような投球を披露しました。
5試合に先発し防御率は2.00をマーク、課題の出力も登板を重ねるごと向上し、AVGで144㎞を記録する試合もあるなど成長の跡を見せました。K%やBB%といった数値はごく平凡な数値ですが、ムービングファストとも称される独特の球筋は打者からすると非常に脅威なボールで数値には表せない良さのある投手と言えましょう。
あとはスライダーを含めた変化球の質向上と、まだまだ身体の線が細いため、オフシーズン中にビルドアップし出力向上を図ることが出来れば、一軍でもローテーを安定して回れるだけのものはありますし、重点的に取り組んでもらいたいところです。
57 田中法彦
6試合(0先発) 10回 7安打 5三振 3四死球 1自責 防御率0.90
K%12.5 BB%7.5 MAX142㎞ AVG135㎞~139㎞
高校時代はMAX152㎞のストレートが武器で、パワー型の投手という触れ込みでしたが、高卒一年目で迎えたフェニックスリーグでの成績はそれとは少々様子の異なる成績となっています。
6試合に登板しながら防御率0.90という成績は非常に立派ですが、MAXは142㎞にとどまり、K%も12.5にとどまるなど支配力に欠ける結果となっています。リリーフが主となってくる中では、少々寂しい結果と言えるのではないでしょうか。
ですので、まずは高校時代の出力を取り戻すことが重要となってくるでしょうし、加えて何か武器となる変化球も見つけて、今季僅か4試合に終わった二軍での登板数を増やしていきたいところです。
66 遠藤淳志
5試合(4先発) 12回 10安打 13三振 7四死球 8自責 防御率6.00
K%24.5 BB%13.2 MAX148㎞ AVG141㎞~144㎞
2019年シーズンは一軍で34試合登板を果たし、防御率3.16をマークし球団史上最年少でセーブをマークするなど印象的な活躍を見せました。ただフェニックスリーグでは、制球に苦しんだ様子が見られ、好成績を収めた投手陣の中でも山口翔に次いで不本意な成績に終わってしまいました。
来季の先発転向を見据えて、4試合にて先発をこなすこととなりましたが、防御率6.00でBB%は13.2を記録するような数値では合格点を出すには至らないでしょう。おそらく交流戦以降一軍でシーズンを完走した疲労等もあったと思われます。
変化球はカーブや高速チェンジアップが主のボールとなってきますが、先発となってくるとスライダーもブラッシュアップも必要でしょうし、その辺りは今後の課題となってくるでしょう。またアドゥワと同様に線の細さがまだ目に付くため、こちらもビルドアップを行い、キレのあるストレートに磨きをかけていってもらいたいところです。
68 平岡敬人
5試合(0先発) 10回 10安打 10三振 5四死球 5自責 防御率4.50
K%22.2 BB%11.1 MAX151㎞ AVG144㎞~147㎞
150㎞を超える快速球が持ち味の平岡ですが、大卒2年目ながらいまだ一軍の舞台を経験できていません。二軍でもチーム2位の31試合に登板を果たすなど、チーム内での期待値が低いわけではないのでしょうが、結果がイマイチついてきていません。
フェニックスリーグの成績も、MAX151㎞でAVGでも147㎞を記録するようなストレートを持ちながら防御率は4.50とイマイチな数値となっています。
来季は大卒3年目で、結果も求められるシーズンとなりますから、まずは二軍で結果を残すために、決め球となる変化球を身に付け支配力をより増していきたいところです。
98 モンティージャ
5試合(0先発) 11回 7安打 11三振 2四死球 1自責 防御率0.82
K%26.2 BB%4.8 MAX152㎞ AVG145㎞~148㎞
育成契約から支配下契約となり、一軍でも2度の先発を勝ち取った2019年シーズンでしたが、フェニックスリーグでもその力を遺憾なく発揮しました。
11回で11三振を奪いながらも四死球は2つに抑え、被安打も7ですから上々の成績と言って良いのではないでしょうか。真っスラ質のストレートとスライダーのキレは二軍レベルは優に超えているのでしょう。
課題としては、先発でも2球種でのゴリ押し投球になりがちなため、第3の球種をモノにすることでしょう。外国人枠はライバルが多く、ジョンソンやフランスアといった一軍に欠かせない投手も多いため、今以上のアピールは必須でしょう。
121 藤井黎來
7試合(0先発) 11回 12安打 12三振 3四死球 6自責 防御率4.91
K%25.0 BB%6.3 MAX147㎞ AVG138㎞~143㎞
育成契約ながら、チームトップの7試合に登板したのが、進境著しい藤井黎來です。同期の岡林飛翔は戦力外通告を受ける中、一軍の舞台へ向けたきっかけを掴む形となりました。
防御率4.91と振るわない成績でしたが、11回を投げてK%は25.0でBB%は6.3に抑えるなど支配力の高さを見せつけました。それだけ潜在能力は高いものがあると言えるでしょう。
上から投げ下ろすフォークボールが武器のようですが、リリーフで生き残っていくためには、AVGで140㎞前後のストレートの球威を上げることが重要となってくるのではないでしょうか。秋季キャンプを一軍で迎えていることから、首脳陣からの評価も高いようなので、上記課題にしっかり向き合ってもらいたいところです。
144 メナ
5試合(1先発) 10回 9安打 7三振 2四死球 3自責 防御率2.70
K%17.1 BB%4.9 MAX154㎞ AVG147㎞~150㎞
育成契約の外国人ながらもフェニックスリーグに帯同し、5試合に登板して防御率2.70とまずまずの結果を収めました。
AVGでも150㎞を記録するようなストレートは魅力的ですが、その割にK%は17.1と然程高くないのは気になる点です。ストレートが独特の質を持っていることが想像されますが、二軍レベルでイマイチな支配力である点は憂慮すべき点でしょう。
このまま武器がはっきりしないようであれば、レベルの高い外国人枠争いには勝ち残れないでしょうし、何か一つ自分の武器となるものを確立する必要があるでしょう。そうすれば、支配下登録からその先の一軍昇格が見えてくるのではないでしょうか。
2.野手編
22 中村奨成
.304(56-17) 0本 3打点 3盗塁 .328/.500/.828 K%13.8 BB%3.4
スタメン‥C:9試合 DH:6試合 2番:3試合 6番:3試合 7番:8試合 8番:1試合
坂倉将吾と捕手としての出場機会を分け合いながら、主に下位打線を打ち打率.304でOPSは.828と上々の打撃成績を収めました。今季は故障で出遅れましたが、二軍でも打率を前年の.201から.279へ大きく伸ばすなど打撃は進歩を迎えており、それが如実に表れているとも言えると思います。
甲子園での1大会6本塁打の印象が強く残る中、フェニックスリーグでの本塁打は0本でしたが、二塁打三塁打を計8本放つなど、本来のギャップヒッターとしての素質を現しつつある点もプラス材料です。
會澤翼の残留や磯村嘉孝/坂倉の存在に加え、ドラフトでの石原貴規の加入などライバルは非常に多い状況ですが、地元出身のスター候補でファンの期待値も高いですし、まずは二軍で正捕手を掴むところが来季の現実的な目標となるでしょうか。
61 坂倉将吾
.346(52-18) 0本 8打点 1盗塁 .433/.442/.876 K%6.7 BB%13.3
スタメン‥C:8試合 DH:7試合 4番:14試合 5番:1試合
2019年は一軍に帯同するケースも増え、初本塁打を記録するなど卓越した打撃センスの一端を示しましたが、若手中心のフェニックスリーグでは格の違いを見せつけました。
16試合中14試合で4番に座ると、打率.346でOPS.876という数値はさることながら、K%6.7に対してBB%13.3と四球の数が三振を下回る素晴らしいアプローチを見せました。長打が少ないのが少々気になりますが、それでも文句のつけようのない打撃成績と言えましょう。
會澤や磯村の壁は高いですが、代打のみならずそろそろ捕手として一軍の舞台でも経験を積んでいきたいところですし、2番手もしくは3番手捕手として経験値を積んでいくことが来季の現実的な目標となってくるでしょうか。
44 林晃汰
.233(60-14) 1本 8打点 0盗塁 .258/.317/.575 K%24.2 BB%3.2
スタメン‥1B:14試合 3B:2試合 6番:12試合 7番:4試合
高卒ルーキーながら4番に座ることもあり、チーム2位の7本塁打を放つなど長距離砲としての素質を感じさせる打者ですが、フェニックスリーグではその力を存分に発揮することはできませんでした。
本塁打こそ1本放ったもののOPSは.575にとどまり、K%は24.2と多く三振を喫するなど不本意な成績となっています。林の中で結果を求めすぎていた部分があったようで、それが悪いほうに振れてしまっていたのでしょう。
ただキャンプではその点を修正して、長打の方にベクトルが振れているようですので、この路線を貫いて来季は二軍で打率.250二桁本塁打を目標に鍛錬を積んでいってもらいたいところです。
45 桒原樹
.318(22-7) 0本 3打点 2盗塁 .348/.409/.757 K%17.4 BB%4.3
スタメン‥3B:1試合 CF:3試合 RF:1試合 2番:1試合 7番:2試合 8番:1試合 9番:1試合
高卒5年目を迎え、かつてはSSとしての出場を続けていましたが、小園ら高卒内野陣の大量加入に押し出されるような形でOFへ転向することとなりました。フェニックスリーグでも出場機会は限られており、厳しい立場に追い込まれつつあります。
フェニックスリーグの打撃成績では打率.318としっかり結果は残しましたが、その他に突出した部分はなく、正随優弥や永井敦士といったその他の外野陣の後塵を拝すような形となっています。
来季も成績を残せないようだと厳しい立場に追い込まれかねないため、勝負のシーズンと位置付けて何か武器を作り出してほしいところです。
51 小園海斗
.226(62-14) 3本 11打点 2盗塁 .238/.484/.722 K%14.3 BB%1.6
スタメン‥2B:3試合 3B:2試合 SS:10試合 1番:2試合 3番:14試合
2019年シーズンの後半戦は、高卒ルーキーながら田中広輔に代わる一軍のレギュラー格としてSSで出場を続けましたが、フェニックスリーグでは出場の幅を広げるために2Bや3Bにも挑戦するなど、来季の一軍での出場機会確保に向けた動きも見せました。
一方で3番を任された打撃面では、打率.226と低迷しましたが、チームトップの3本塁打を放つなどシーズン中と同様に長打力を見せつける形となりました。やはり将来的にも20本塁打前後は期待できるだけの資質はあるのでしょう。
来季は田中とSSの定位置を争うこととなりますが、真のプロスペクトであるなら田中を3Bへ追いやるくらいのものを示してほしいですし、それだけの資質はある選手だと信じています。
56 中神拓都
.200(45-9) 0本 2打点 0盗塁 .217/.222/.440 K%19.6 BB%2.2
スタメン‥1B:1試合 2B:2試合 3B:8試合 SS:2試合 8番:3試合 9番:10試合
高卒ルーキー内野陣の一角として、主に3Bとして起用されましたが、打順は主に9番ということから分かる通り打撃面に課題があり、OPSは.440と野手陣の中で最低の数値となってしまいました。
4ポジションのスタメンで起用されるなど、UTとしての期待値が高いような起用法に見えますが、足をウリにするタイプでもなければ、守備力をウリにするタイプでもないため、兎にも角にも打てなければ話になりません。
将来的には3Bを中心とした内野UTが目指す位置となるでしょうが、まずは二軍レベルのボールは確実に叩けるレベルまで打撃を進化させていきたいところです。
69 羽月隆太郎
.323(62-20) 0本 3打点 9盗塁 .364/.371/.735 K%12.1 BB%6.1
スタメン‥2B:11試合 3B:3試合 SS:2試合 1番:14試合 2番:2試合
ドラフト7位入団ながら、二軍で打率.300と29盗塁を記録するなど高卒ルーキーとしては出色の成績を収めましたが、フェニックスリーグでもその勢いを持続し、主にトップバッターを務め打率.323と9盗塁を記録するなど、持ち味を発揮してみせました。
長打力は現時点では全くと言って良いほどありませんが、そのコンタクト力はホンモノでしょうし、2Bがメインポジションという点も、現二軍打撃コーチの東出輝裕を想起させるものがある選手です。
秋季キャンプでは一軍組の中に入っており、来季は一軍デビューも視野に入れて、コンタクト力の高さ故に当てに行くのではなく、しっかり振り切るスイングを実践してもらいたいところです。
99 サンタナ
.364(22-8) 0本 4打点 0盗塁 .364/.591/.955 K%13.6 BB%0.0
スタメン‥1B:1試合 SS:2試合 DH:1試合 3番:2試合 4番:2試合
2019年シーズンの途中で育成契約から支配下契約となったUTプレイヤーのサンタナですが、残念ながら先日自由契約となってしまいました。
役割の被るピレラが新外国人として加入したことと、二軍での若手内野陣の出場機会の確保のために自由契約となったのだと推測されますが、6年契約途中での自由契約は残念の一言に尽きます。
そのような状況なので、成績を振り返ることはしませんが、新天地では広島を見返すような活躍を見せてもらいたいものです。
49 正随優弥
.333(60-20) 2本 16打点 1盗塁 .375/.517/.892 K%12.5 BB%6.3
スタメン‥LF:8試合 RF:8試合 5番:15試合 6番:1試合
大卒ルーキーながら、二軍ではOPS.610と思うような結果を残すことは出来ませんでしたが、フェニックスリーグでは素晴らしい打撃を披露し、来季へ向けてきっかけを掴みました。
主に5番を務め、OPS.892という数値も素晴らしいですが、何より16打点という数値はチーム内でもダントツのトップで、勝負強さを見せつけたことが分かります。ISOは.184と然程高い数値ではなく、長距離打者というよりも中距離打者寄りの打者であり、将来的には5番や6番で走者を返していくようなタイプとなるでしょう。
このフェニックスリーグで掴んだものは間違いなくあるでしょうから、それを再現性のあるものにすべく鍛錬に励み、来季はまず二軍で常時クリーンナップを担うような活躍を期待したいところです。
60 永井敦士
.291(55-16) 1本 6打点 1盗塁 .361/.473/.833 K%19.7 BB%9.8
スタメン‥LF:6試合 CF:5試合 RF:5試合 2番:9試合 7番:2試合 8番:2試合 9番:3試合
高卒2年目となった2019年シーズンは、前年のOPS.398から.654と大きく数値を伸ばし、勢いそのままにフェニックスリーグでもOPS.833と好成績を収めました。
K%19.7と少々三振が多いのは課題でしょうが、BB%も9.8と低くなく、深いカウントまで至る打席が多い弊害なのかもしれません。将来像はクリーンナップを打つ選手というよりも、テーブルセッターというタイプでしょうし、まずは二軍でコンタクト力を磨いていきたいところでしょう。
124 大盛穂
.225(40-9) 0本 3打点 2盗塁 .279/.400/.679 K%9.3 BB%7.0
スタメン‥LF:2試合 CF:8試合 RF:2試合 2番:1試合 8番:9試合 9番:2試合
育成契約ながら、俊足とそれを生かした守備で数少ないCFとして二軍で325打席に立つなど、首脳陣の期待の大きい選手ですが、フェニックスリーグでは打率.225に終わり、打撃面にまだまだ課題があることを覗かせました。
ただK%は9.3と三振は少なく、コンタクト力は高いものを持っており、9安打中5安打が長打とこの手の打者にしては、全く長打がないわけではないため、確率に課題はあるものの資質はある打者ということが分かります。
CF守備に課題のある選手は多いため、大盛にも大いにチャンスはあるでしょうし、支配下登録に向けては打撃に磨きをかけていくことに尽きるのではないでしょうか。
3.収穫まとめ
①打率.300オーバーorOPS.800超えの打者が11名中7名と打撃面で成果を見せる選手多数
②センターラインを主に守った、中村奨/坂倉/小園/羽月が打撃面で輝きを見せ、将来のコア候補が順調に成長を続けている
③K%の高い投手が多く、二軍レベルではあるが支配力のある投手の頭数を増やすことが出来ている
優勝という成果とともに、多くの若手選手が活躍し、「収穫の秋」という言葉に相応しいフェニックスリーグとなったのではないでしょうか。数年後にはチームの主力となるべき選手が、結果を残したのは特筆すべきことでしょうし、このまま順調に成長を続けてほしいものです。
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