高橋大樹

野間峻祥と高橋大樹の正念場

2014年のドラフト1位指名を受け、その高い身体能力から首脳陣からの期待値も高かった野間峻祥が、一軍の中で自身の立ち位置を確立したのが昨季でした。

課題であった打撃に力強さが増し、規定打席に到達しながらスラッシュラインは.286/.343/.393をマーク、OPSは.736を記録するなどして、外野の一角を見事に掴んでみせました。

そして不動の中堅手・丸佳浩が退団した今季、1番中堅手として定着することが期待されましたが、昨季成長を見せた打撃は時間の経過とともに崩れ始め、かつ強みとしたい中堅守備でも足を引っ張るような形となり、交流戦中からスタメンを外される機会も増えてきました。

そんな中、2012年に鈴木誠也を押しのけてドラフト1位指名を受けた高橋大樹が、プロ入り初本塁打を放つなど主に打撃面で成長の跡を見せ、シーズン当初は一軍外野手戦力の中に名前すらろくに上がってきませんでしたが、今や野間の位置を脅かす所まで来ています。

シーズン当初とは、チーム内での立ち位置に変化が生じつつある両者について、現状を分析しつつ今後の展望について、以下にて分析していこうと思います。

※成績は全て7/3終了時点でのもの

1.野間峻祥の現状

3/4月は一時3番に定着するなど、.305/.343/.421というスラッシュラインをマークし、本格開花かと思われましたが、徐々に打撃成績を落としていき、現在では.256/.316/.326というスラッシュラインまで落ち込んできました。

ここまで打撃成績が落ちた要因については、「スイングから力強さ」が消えたという一点に尽きるように思います。

野間の2019年月別の打撃内容推移をまとめた表①を見ると、純粋な長打力を示す指標であるISOは3/4月を頂点に下降を続け、6月は.000とついに長打が一本も出ないところまで落ち込んでいることが分かります。

また上述の通り、スイングの力強さがないためか、打球の強さを示すHard%は5~6月にかけて20%台前半という数値を示しています。

打球に力強さがないため、長打も出なければ、打球自体も弱いものになるため、ゴロ性の打球がアウトになった確率を示すGBout%が高まるのも至極当然の結果と言えましょう。

加えて、フライ性の打球の内内野フライの打球の割合を示すIFFB%が、昨季と比較して大きく高まっているのも気になる点です。

引っ張りの打球の割合を示すPull%が減少し、逆方向の打球の割合を示すOppo%が上昇していることから、推測ですがその快足を生かすために逆方向へのゴロ打ちを意識していると思われます。

その結果、昨季よりスイング軌道が上から叩きつけるような軌道となり、ボールとの接点が減って点でしかボールを捉えられないがために、内野フライが増えてしまっているのではないでしょうか。

野間は元来の打者としての性質として、GB%の高いグラウンドボールヒッターという特徴を持っていますが、ゴロ打ちを意識しすぎると逆に打撃を崩してしまうということでしょう。

また、以前noteにて分析しましたが、昨季の飛躍の一因としても挙げられる、引っ張りの打球の進化という面にも大きな変化が見られることは、表②の数値の変化を見ても明らかです。

昨季は引っ張りの打球でOPS.931でISO.218と、引っ張り込めば長打が期待できるような形になっていたのが、今季はOPS.673でISOは.129まで落ち込み、長打を期待できない2017年までの形に戻ってしまっています。

上記のデータから、本来はもっと引っ張って力強い打球を放てる打者にも関わらず、逆方向にゴロを転がして内野安打を狙いに行くようないわゆる「アヘ単」化が進行しつつあることが推察できます。

最後に中堅守備面にも目を向けてみると、UZRは規定イニング到達者11名中10位の-4.8と低迷しており、守備範囲を示すRngRと外野手の送球による貢献を示すARMいずれもマイナスの数値と、いい所がない状況です。

2.高橋大樹の現状

続いて、高橋大樹の現状ですが、昨季と比べてより一軍に適応したフォームになってきたという印象です。

具体的な部分を述べると、昨季のフォームと比較し、構えの時点で捻りが抑えられ、かつヒッチが多少入ることですんなりトップへ入っていける形になっています

これにより、外の変化球への対応力の向上や、トップ形成が安定することで強い打球を安定して放つことが見込めます。

元々高校時代は、大きく体を捻るような打撃フォームで、その部分の修正のために時間は多くかかってしまったものの、ここに来て打撃フォームは洗練されてきたなという印象です。

データについては、打席数がまだそれほど多くないため、語れることも限られてきますが、打者としての特徴をまとめたものが下表となります。

FB%が60.9%という数値を示しており、極端なフライボールヒッターとしての傾向が出ています。

今季ここまでのデータとして引っ張った打球の割合が高いわけではありませんが、元々プルヒッターとしての要素を持っている打者だけに、レフト方向の打球が風の後押しを受けやすいマツダスタジアムの恩恵にあずかって、本塁打増も期待できるでしょう。

また、積極的にバットを出していくようなスタイルで、空振り率も高い一方、極端にコンタクト率が悪いわけでもないため、自身の中で狙い球を絞り、空振り上等で振り抜くような打撃スタイルであることがここから窺えます。

適正打順としては、走力がないわけではないため、ある程度制約なく自由に振れる点が自身の打撃スタイルともフィットする1番打者や、6番打者辺りとなるのでしょう。

守備面では、決して名手と呼べるような守備力ではありませんが、左翼中堅ともにソツなくこなしますし、フェンス際のプレーには強く、弱みとは成り得ないレベルの守備力はあると考えても良いのではないでしょうか。

3.今後の展望

3-1.野間峻祥

一軍では、ここ最近めっきり出場機会は減り、一軍出場登録はそのままで二軍の試合に出場しながらの調整となっていますが、なんとも中途半端な調整に思えてしまいます。

開幕前にも一度二軍で調整を実施したことが、開幕当初の好調ぶりに繋がったように、打撃が崩れかかっている今こそ一度二軍で時間をかけて調整し、再び打撃を作り直す必要があるのではないでしょうか。

このままだと、長打のまるで期待できない、俊足だけがウリの一介の外野手で終わってしまうように思いますし、ドラフト1位でチームに加入してきた選手をそのようなスケールの小さな選手で収めていいわけがありません。

体格も悪くなく、スイングスピードもあることから、長打を打てるポテンシャルはあるだけに、目先の結果に囚われず、もう少し大きく育てる意識が必要ではないでしょうか。

3-2.高橋大樹

打撃面で結果を残し、守備面でも懸命なプレーを見せ、スタメンでの出場機会も増えつつありますが、常時スタメンとはいっていないのが現状です。

技術的にも洗練されてきており、二軍ではもうやることの無い状態ですから、後は一軍の投手が投じるボールに慣れさせ、対戦経験を重ねながらその都度出てくる課題に向き合っていかせるだけでしょう。

その他の選手との兼ね合いも当然ありますが、首脳陣にはもう少し重点的に起用してもらいたい所ですが…

4.まとめ

・野間峻祥の現状
逆方向へのゴロを意識しすぎた結果か、引っ張った強い打球が消え逆に内野フライが増えており、「アヘ単」化が進行
ウリにしたい守備面も、UZRは-4.8と低迷しむしろ足を引っ張る結果に
・高橋大樹の現状
打撃フォームが洗練されたことで、一軍の投手のボールに対応可能なレベルまでレベルアップ
フライボールヒッターかつプルヒッターの資質があり、マツダスタジアムとの相性も良さそう
・今後の展望
野間は、二軍で継続的に試合に出場し打撃を立て直す必要あり
高橋は、一軍で積極的に打席に立たせ、一軍の投手に適応させる

以上が本noteのまとめです。

現時点では、高橋の方が外野手の一角を争う上では優勢ですが、野間も崩れかけている打撃を立て直すことが出来れば、元々NPB内でも屈指のスピードを持っているだけに、パワーとスピードを両立させたプレースタイルを確立することも可能なように感じます。

ですので、目先の結果や勝利に囚われ過ぎない、長期的な目線に立って選手の能力を最大化させるような起用を期待したいです。

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