薮田がおかしくなったのなんで?
今季、期待値以下の成績となっている投手の多い広島投手陣の中で、薮田は最も期待を裏切った投手と言っても過言ではないでしょう。
昨季はシーズン途中から先発に回ると、15勝を挙げ、連覇に大きく貢献しました。
そして期待された今シーズンでしたが、制球難に陥り、2軍暮らしが長くなっています。
では何が原因となり、薮田はここまでおかしくなったのでしょうか?
まず第一に挙げられるのは、昨季の起用法でしょう。
シーズン開幕はリリーフで迎えましたが、野村の一時離脱に伴い、先発へと転向しました。
それ自体は問題ないと思いますが、問題なのはろくに先発調整もさせずに即先発させたことです。
ただでさえ故障歴の多い薮田は、もっと慎重に扱うべき投手ですし、急遽リリーフから先発に転向させる際は、一定の調整期間を設けるべきなのではないでしょうか。
加えて、CSでの中四日起用もありましたから、投球イニング以上のダメージが薮田の身体を襲っていたことでしょう。
その起用法プラス、大学時代の通算登板が2試合という、試合に登板した経験の無さが仇となり、そもそものボール自体がおかしくなってしまったのではないかと推測します。
冒頭にて、制球難に陥りと記述しましたが、実際は薮田のストライクゾーンに投げ込む能力は変わっておらず、単純に球威の劣化やフォームの変化等により、今まで振ってもらえていたボールを振ってもらえなくなり、四球を出すことが増え、空振りも取れなくなった、と考えたわけです。
ではこの推測が正しいのか、検証していきます。
まずストライクゾーンに投げ込む能力についてですが、Zone%(ストライクゾーンに投じられた確率)を見れば一目瞭然でしょう。
上記表はZone%、K%(対戦打者に対する奪三振の割合)、BB%(対戦打者に対する四球の割合)、O-Swing%(ボール球をスイングさせた確率)、Contact%(打者がスイングした際にボールに当たった確率)を並べたものになります。
見ると、ゾーンに投じられる割合は、昨年と変わらない数字となっています。
それにも関わらず、BB%は大幅に悪化しています。
O-Swing%を見ると、この数字も大幅に悪化していることから、今まで振ってもらっていたボール球を振ってもらえなくなり、カウントを整えられなくなって、四球を出してしまうという悪循環になっていたのではないでしょうか。
またK%も大幅悪化し、Contact%も上昇していることから、空振りを取れるだけの球威がないということも同時に言えるでしょう。
球威については、球速の観点からも見ていきます。
上記表は昨季と今季の球種別の平均球速と投球割合をまとめたものです。
こう見ると一目瞭然ですが、どの球種も2~3キロ球速が落ちており、球威の低下は明らかです。
投球割合を見ると、カットボールの割合が増えていますが、亜大ツーシームで思うように空振りが取れないため、スラットを多用することでカウントを整え、打たせて取りたいとの意図からなのでしょうか。
ここまで、様々なデータを用いてきましたが、ゾーンに投げ込めなくなったのではなく、球威の低下が今季の惨状を招いたのでは、という当初の推測は強ち間違いではないのではないでしょうか。
結局投手は球威によるところが大きいのだなあと実感しますね。
現状2軍では、それなりに結果を残しているため、2軍以上1軍未満というレベルの球威なのでしょう。
佐々岡コーチのもとで、何とか復活を遂げてもらいたいものですが、それはまだまだ先となりそうです。
データ参照:1.02 Essence of Baseball(https://1point02.jp/op/index.aspx)