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大物選手の広島への移籍の歴史

丸佳浩の巨人へのFA移籍に対する人的補償として、長野久義が広島に加入することとなったことは、高額年俸の大物選手、かつ巨人入団を志望し、二度のドラフト指名を拒否した選手が、プロテクトリストから外れていたという点で様々な波紋を呼ぶこととなりました。

そして、その移籍に伴って、長野の加入はどのような効果があるのかについて、以前noteにまとめましたが、その能力もさることながら、編成的にもフィットするはずであると結論付けました。

ただ、一つ懸念点として、広島という球団がFA補強等の外からの補強に消極的で、首脳陣も広島生え抜き、もしくは広島でのプレー経験の持つ人物で固められた、他球団と比較し、非常に特殊な球団であるという点が挙げられます。

平成に入ってからは中々ありませんでしたが、昭和期にはトレードで大物選手を引っ張ってくることもありました。

しかし、獲得した選手が広島で活躍したイメージがまるでなく、その一因として、上記のような懸念点が挙げられるのではと考えます。

もしかしたら長野も、広島の独特の風土に戸惑い、思いのほか実力を発揮しきれない可能性もあります。

というところから、過去の大物選手の広島への移籍例を振り返ることで、イメージでなく客観的な視点から、独特の風土にフィットできたのかについて検証していきたいと思います。

まず、大物選手の定義についてですが、ここではベストナインやゴールデングラブ賞を含めたタイトル獲得経験者としたいと思います。

長野も、新人王や首位打者等のタイトル獲得経験があるため、この大物選手の括りに入ります。

そして、長野以前の大物選手の移籍例をまとめたものが表①となります。

※高橋直樹に関しては、移籍前までタイトル受賞経験こそありませんでしたが、日本ハムのエースとして20勝を挙げた実績もあり、特例でリストに追加。

シーズン161打点の日本記録保持者の小鶴誠や、打撃職人の山内一弘、優勝請負人の江夏豊、阪急黄金期の一塁手加藤秀司など、プロ野球史に燦然と輝く選手たちが、広島のユニフォームに袖を通していたことが分かります。

また、初優勝を遂げた1975年から長い暗黒期に入る直前の1990年代前半までは、FA権が存在しなかったことから、トレードを活用してバリバリの大物を獲得していたことが分かります。

当時、黄金期にあったチームにマンネリが生じないように、スパイスとしてそのような手法が用いられていたのかもしれません。

では、ここからが本題で、上記の選手たちは移籍後、どのような成績を残したのでしょうか?

表②と表③に野手、投手それぞれで移籍前三年と移籍後三年の成績を比較したものをまとめてみました。

緑色のセルが広島に移籍後の成績で、球団が変わるごとにセルの色も変えてあります。

野手を見てみると、OPSの観点から移籍後に成績を伸ばしたと言えるのは、打率.300越えかつOPS.800が二年連続で超えた山内一弘と移籍により出場機会を得た笘篠賢治くらいでしょうか。

その一方で、明確に成績を落とした選手も多くなく、前後の成績推移を見ると、近鉄移籍後にOPS.883と再び成績を伸ばした加藤秀司と高沢秀昭くらいです。

高沢に関しては、移籍前年に故障を負っており、その後1992年には引退していますから、広島と水に合わなかったというよりも、故障の影響の方が大きいのではないかと推察します。

加藤に関しては、前述の通り近鉄移籍後に成績を伸ばしますが、その後巨人に移籍して、再び不振に陥っており、年齢の影響もあるでしょうが、セリーグの野球に馴染まなかった可能性も考えられます。

上記より、野手に関しては、本当に広島の野球に水が合わず、成績を大きく落としたような選手は過去にいないと結論付けたいと思います。

投手に関しては、成績的に明らかに劣化して移籍してきた選手が多く、リリーフへと転向し、その力をまざまざと見せつけた江夏豊、セリーグが水に合わず、西武に移籍後復活を果たした高橋直樹、移籍後リリーフとして輝きを取り戻した井上祐二が目立つ形となっています。

まとめ

大物選手の移籍が多くあった1990年代前半までは、広島は他球団と比較しても今ほど独特ではなく、守備シフトを敷いたりドミニカにアカデミーを設立したりと、むしろ当時の最先端を走っている部分もあり、今の環境ほど閉鎖的ではなかったようにも見え、とは比較に難しい部分があるように感じます。

ただ、過去の選手たちで故障等がない限りは、そこまで成績に変化がないことを見ると、長野も変わらず自分の実力を発揮できる環境ではないかと感じます。

また、人格者としての一面が移籍後に多く取り上げられており、広島ナインも歓迎の意を示すなど、受け入れられやすくまた受け入れる体制も用意されていることから、冒頭で述べたような心配は杞憂に終わりそうです。

しかし、FA権の本格運用後は、初めての現役バリバリの大物選手の移籍ですから、どのような形で長野がチームにフィットしていくかは、注意深く見守りたいと思います。

#野球 #プロ野球 #広島 #カープ #長野久義 #大物 #移籍

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