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坂倉将吾の育成方法について考える

広島に所属する選手の中で、トッププロスペクトを挙げるとすると、いの一番に名前が挙がってくるのが、高卒3年目になる坂倉将吾でしょう。

1年目からルーキーらしからぬ打棒を発揮し、二軍ながら打率.298・OPS.759を記録するなど、歴代の高卒野手の中でも上位の成績を収めました。

2年目となった昨季は、故障等もあり一軍定着とはいきませんでしたが、二軍では打率.329・OPS.919と、更に圧巻の数値を記録し、打撃面では二軍でやることのない状態まで来ています。

しかし、現状の一軍捕手枠は、リーグ随一の打力を誇る正捕手の會沢翼、大ベテランでジョンソン専属捕手の石原慶幸、昨年は大瀬良大地と多くコンビを組み進境著しい磯村嘉孝の3名で埋まっている状況です。

そんな中、間違いなくトッププロスペクトである坂倉を、主に打撃面にスポットを当てて、どのように育成していけばよいのかについて、過去の高卒捕手への打席の与え方を例に述べていきたいと思います。

1.過去の高卒捕手から見る必要打席数

捕手というポジションは一つしか枠がないため、出場機会を与えるのが非常に難しいポジションになります。

しかし、打撃面で一軍のスピードや変化球のキレに対応していくためには、どうしても打席数を積んでいく必要があります。

そこで、過去の高卒捕手を例に取り、どのくらいの打席数を投じることで、一軍レベルの打力まで持って行ったのかについて見ていきます。

歴代の捕手出場試合数トップ50に入る高卒捕手+ベストナイン獲得経験のある高卒捕手*から、高卒二年目時点での一軍打席数と一軍で通用する打力を身に付けるまでにかかった打席数をまとめたものが表①になります。

※2リーグ制成立後にプレー経験のある選手の中から選定

ここでの一軍で通用する打力とは、200打席以上に立ちOPS.700以上もしくは300打席以上に立ちOPS.650以上と定めました。

中には未達の選手もいますが、大半はやはりこの水準をクリアしており、野村克也や城島健司や森友哉など、打てる捕手と言われる選手は軒並み少ない打席数でこの水準を突破してきています。

一軍で通用する打力まで必要な打席数の平均としては、640打席かかっており、いきなり大抜擢されてフル出場でもしない限りは、3~4年くらいはかかりそうな打席数です。

また、高卒二年目時点での打席数は、当時のチーム状況等もありまちまちで、最初から打席数を与えたところで、そこからの選手の打力の伸びはまた別物であることが分かります。

高卒二年目時点で最多の打席数を与えられている山下健(阪急・1950~1965)は、打撃面ではその後も伸びることはなく、上記の一軍で通用する打力として定めた数値には一度も届いていません。

近年では、炭谷銀仁朗が高卒一年目から開幕一軍に抜擢され、高卒二年目時点で196打席の一軍経験を積みますが、二軍での鍛錬の機会に乏しいまま一軍の舞台に引き上げられたためか、打力云々というよりも守備型の捕手へと成長し、現状は一軍で通用する打力を身に付けるまでに至っていません。

森友哉クラスの打撃センスを見せつけていなければ、高卒捕手を早め早めに一軍の舞台に引き上げるのは危険ということでしょう。

2.打てる捕手になるために必要な打席数

1章にて一軍で通用する打力という観点から見てきましたが、坂倉に期待するものはその程度の打力ではありません。

トッププロスペクトとしては、常にOPS.800を超えるような打てる捕手という存在が当然目標となってきます。

そこで、先ほど挙げた高卒捕手の中で、300打席以上に立ちOPS.800超えを果たした選手とその回数、達成までの打席数の欄を表①より増やしたのが表②となります。

この時点で31人中13人へと人数が絞られます。

そして、複数回達成となるとその数はさらに減少し、野村克也・谷繁元信・城島健司・吉永幸一郎・森友哉の5名となります。

谷繁と吉永はそれなりに時間をかけて、この水準まで至っていますが、その他の3名は一年間で立つことのできる打席数で達成しています。

やはり、真の天才打者には大した打席数は必要なく、実際に一軍クラスの投手と向き合っていく中で成長していくのでしょう。

3.坂倉の場合は…

坂倉の過去二年間を見ていくと、高卒二年目時点での一軍打席数は17打席となっており、まだまだ一軍経験が足りていない状況です。

ただ森・城島らを例に見たように、本当に打撃センスがあるなら、打席数をかけずに台頭してくるということが分かったため、二軍でやることのない坂倉としては、それを見極めるためにも、後は一軍の打席に多く立たせていくだけでしょう。

そのために、現在外野に挑戦していますが、丸の抜けた穴もあるため、外野手争いは激戦ではありますが、坂倉にも多少は出番は回ってくるでしょう。

森友哉は最初は捕手ではなく、外野を守りながら打席を積んでいきましたし、自信のある打撃を一軍レベルまで引き上げてから、また捕手に戻るというのも一つ手ではあります。

しかし、正捕手の會沢が今オフにFAでチームを去る可能性のある中、その後継者である坂倉には一刻も早く捕手としての経験値も積んで欲しいという点もあります。

ですので、今季の起用法としては、會沢休養時には積極的に捕手として起用し、隙あらば外野手としての起用も検討するといったところでしょうか。

本当は、独走状態だった昨年に捕手としての経験を積ませておくのが一番良かったのでしょうが…

また坂倉一軍登用の副次的メリットとして、こちらも次代の正捕手候補の中村奨成に二軍で経験を積ませることが出来るという点もあるため、坂倉には今季是非とも一軍に定着してもらいたいものです。

#野球 #プロ野球 #広島 #カープ #坂倉将吾 #高卒捕手

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