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コーヒー屋の存在意義とサービス

何のためにコーヒー屋は存在しているのでしょうか。そして何のためにコーヒーは美味しい必要があるのでしょうか。

僕はコーヒー屋をやっているので、自分達の仕事の目的や存在意義をよく考えます。

みなさんは普段、何を得るためにコーヒー屋に行きますか?


来てくださるお客さんも恐らく、目的を意識してコーヒー屋にいくというよりも、無意識的に何かを得ているんだと思います。

結果として実際何が得られるか。
僕はコーヒーを飲むことで気持ちに変化がある「時間」を提供しているのかな、と思いました。美味しいコーヒーという「モノ」を売っているのも確かにそうなんですが、なぜそのモノをお客さんは求めてくれるのか、そのモノにはどんな意味があるのかということを考えてみると、きっと気持ちが動く時間なんじゃないかなと思いました。

コーヒー屋やカフェにいって一休みする。休日にコーヒーを飲みに行ってなんだかリフレッシュした気分になる。好きなコーヒーを飲んで自分のワクワクが刺激された気持ちになる。疲れた時にバリスタとお話をしてコーヒーを飲んで、明日も頑張ろうっていう気持ちになる。
そんな価値が、きっとコーヒーが美味しいことや、コーヒー屋が存在する意味としてあるんだと思います。


そんな「時間」の価値を最大化するためにはどうすればいいのか。できる限り美味しいと思ってもらえるようなコーヒーを提供できるといいし、気持ちのいい空間がいいし、バリスタとして人が存在していることを考えると何より、「良いサービス」が必要だと思います。



コーヒー屋のサービス

では、どんなサービスが良いサービスなんでしょう。コーヒー屋のサービスについて、僕らのお店ではいつもミーティングで議題に上がり、声の掛け方や話しかけるスタンスなど、いつも議論の中心になっています。

サービスについて考えてみると、僕は3つポイントがあると思いました。

1. コンパクトさ
2. 相手の要望を察すること
3. 意図や意志を乗っけること

順番に考えを書いてみたいと思います。


1. コンパクトなサービス

コーヒー屋だと特にオーダーを聞く時にお客さんと店員さんがコミュニケーションを取ると思うのですが、できる限りコンパクトに的確に要望を聞いてこの時間を極力短くできる方が、スムーズで心地いい体験になると思っています。

すごく当たり前っぽいことを言っているようなのですが、結構コーヒー屋は語りたいのです、商品について紹介しようと思うとめっちゃ長くなったり、情報の押し付けにもなってしまいかねません。

もちろん人によっては、しっかり話したい、コーヒーのことを聞きたいという方もいると思うのですが、話すことが目的じゃない方ももちろんいますしどちらかというと早く飲みたい方が多いと思います。短くできるに越したことはないし、詳しい話をするのは商品を提供した後でもいいのではないかなと思ったりします。

高価なものを買うためにじっくり考えたりする体験とは違うのと、気軽な飲食店ということもあるので、お店に来てできる限り早く飲みたいものが出てくることは、常にいいことだと思います。


2. 察するサービス

コンパクトに求めているものをスムーズに出すにはどうすればいいのか。お客さんがメニューで迷ったりわからないことがあったときに、コンパクトにやりとりできるためにはどうすればいいのか。そのために「察する」ということが結構必要になると思っています。

遠くからはるばる来たのか、近くに住んでいる人なのか。コーヒーを普段飲み慣れているのか、そうじゃないのか。友達との会話を楽しみに来ているのか、コーヒーのことを知りたいのか。その人が何を求めているのかをいち早く察して、それに寄り添ったサービスができるから満足度が上がるはずです。

そしてお客さんが「すみません」と言う前に、水がなくなっていることに気づいて注ぎに行ったり、豆を探していることに気づいておすすめを紹介したり。

そう考えると、バリスタって結構器用なことをやっている仕事だなと思います。目の前のコーヒーのおいしさ、技術にフォーカスしつつ、同時に視野広くお客さん全体に気を配ったり。どのサービス業や飲食業でも同じかもしれませんが、デイリーかつ気軽にたくさんの方にサービスを提供してリアクションをもらえるのはとても楽しいし、自分の技術をどんどん試せる仕事だと思います。

ものづくり的技術と外に向いたサービスを同時に行うバリスタの意識について、前のnoteでも書きました。



3. 意図や意志を乗っける

僕自身がふと、どんなサービスが受けてよかったかなと思い返すと、なぜそうしたのかという「意図」が感じられる説明があるサービスでした。

例えばレストランとかで、「こんな味を伝えたくてこの食材を選んだんです」とか、「こんな味わいが魅力なのでこう調理しました」といった、なぜそうしたのかという意図を教えてくれると、楽しむポイントが明確になるし、出されたものをただ味わう関係から寄り添って楽しめる体験に変わると感じます。

けっこうこれは仕事とかでもそうだと思うのですが、結果だけ共有してもなかなか評価されにくいことが多いと思います。これができました、こんなことをやりました、と伝えても、仕事の現場では「なんでそうするの?」と返ってくることが多いと思います。「こういう意図でこうしました」と添えるだけで、一気に伝わりやすくなるし、仕事の場合そもそもその意図が合っているのかと言う判断になっていくかもしれません。

そんなふうにして、コーヒーだって料理だって服だって、「好み」が生まれるモノこそ、意図を伝えるだけで好みの壁を超越してそのモノの魅力やそれをつくった人やブランドの理解が進むはずだと思います。そして、そもそもそういった好みがある仕事だからこそ、その味、そのレシピ、その素材にしている強い信念や思いがあります。思いを持ってやっている仕事だからこそ、その意志を伝えたいなと思います。

もちろん裏には、「言わなくても伝わってほしい」という、日本人らしい職人的精神もあります。でもコーヒーのようなデイリーな仕事こそ、より伝わって多くの人に満足してもらえることに意味があると僕は思います。



もちろん味がすべてというお店もあれば、伝わる人にだけ伝われば幸せだと思うお店もあるはずです。でも僕は、日常に溶け込むコーヒー屋は、ささやかだけど寄り添ったサービス力で、来てくれたお客さんの毎日を少し幸せなものにする存在であってほしいな、そんなお店が増えたら嬉しいなと思います。

良いお店、美味しい味、良いサービス。
考えるほど面白いし、様々なお店にいく度に違う体験があって刺激になりますね。



川野優馬


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