バリスタになる方法と意識
コーヒーに関わる仕事、バリスタという職に就きたいと思っている方は、今も変わらずたくさんいると感じます。そして、コーヒー屋の僕からするとそれはとっても嬉しいことです。
でも、なんというか、バチッとはまる採用は徐々に減ってきている気がします。周りのコーヒー屋の話を聞いても、応募はあるけどいい感じの人がいない、とよく嘆いているのを聞きます。
せっかくコーヒーの仕事に興味を持ってくれているのに、採用まで至らない、それってすごいもったいないことだと思うんです。コーヒー屋にとってもそうですが、何より興味を持って行動して結果に繋がらないということが。
コーヒー屋を8年やってきて僕が思う、バリスタになる方法や採用のポイントを、今日はがっつり書いてみたいと思います。
バリスタ関係なく、何かに興味を持って、実際にそれを仕事にする、というまでの流れの中で、どんな仕事にも共通することだと思うので、コーヒー関係なくとも何かの参考になったら嬉しいです。
なんでバリスタになりたいのか
バリスタになりたいという方がいたら、はじめにどうして自分はバリスタという仕事に関わろうと思ったのか、振り返ってみるところからはじめてみることをおすすめします。
何か興味がある仕事があれば、なぜ自分は興味があるのか、どんなところに興味を持っているのか、を考えていかないと、本当の感覚かもわからないし、どんな職場がいいかも具体化しないし、面接で聞かれても答えられません。
ただ家で趣味としてコーヒーを飲んでいるだけでは飽きたらなくなった衝動や、コーヒーを出す側に立ってみたいと思ったきっかけ。きっと自分の中で、バリスタになりたいと思った理由があるはずです。
それが言語化できないことには、もしかしたらコーヒーが「ただ好き」なだけな可能性もあります。
消費することと提供することは、全く違うと僕は思います。
バリスタってコーヒー好きの延長線上にあるように見えますが、実は意識もモチベーションも、消費者と提供者ではガラッと変わっていると思います。
なぜそれを「仕事」にしたいのか。どんな職業でもそうだと思いますが、この思いを言葉にできるくらい自分と向き合い、考えることから始まります。
もちろんこの状態になるまで、コーヒーを仕事にしたいのかなと感じるまでには、きっとたくさんのコーヒーを飲んだり、家でたくさんコーヒーを淹れたり、趣味としてのコーヒーを楽しみ尽くす経験があるとは思います。
どんなバリスタになりたいのか
自分はコーヒーを飲む立場ではなく、出す立場になりたいんだな、ということが自分の中で明確になったとします。そして、「なぜバリスタになりたいのか」という疑問も言語化できたとします。
そうしたら次は一歩掘り下げて、具体的にどんなバリスタになりたいか、と考えていきます。
美味しいコーヒーと言ってもどんな美味しさをつくりたいのか。お客様を笑顔にと言っても、どんな感情や行動を呼び起こしたいのか。サービス力のあると言っても、どんな感覚でどんな体験をつくりたいのか。
特定のお店のあの人みたいになりたい、というのでもいいかもしれません。お店に行ってふと「こんなバリスタになりたいな」と思う経験があったら、きっとその価値観が自分の目指したい方向性なんだと思います。
普段からバリスタに触れる機会があれば、動きやサービスを見て、自分はどうなりたいのか自問自答していくと、いろんな店にいく度に自分の目指したいバリスタ像が磨かれていくはずです。
職業への興味を持ったら、具体的な働き方をイメージする。どんな職業でも一緒ですね。実際の具体例を見つけるのが一番早いと思います。
コーヒー屋は何を見ているのか
ふとここで、採用する立場のコーヒー屋側は何を見て面接や応募書類のチェックをしているのか、僕の感覚ですが話してみたいと思います。
僕はどのコーヒー屋もきっと、「その人からコーヒーをつくってもらいたいか」が、1つの基準になっていると感じます。
これはその店の雰囲気にフィットしているということや、コーヒーをきっと美味しくつくってくれそう、という感覚も入っていると思いますが何より、「自分はその人のサービスをしているところがイメージできるか」が一番強いと思います。
バリスタはサービス業なんです。美味しいコーヒーをつくるだけなら機械でも美味しくつくれる今、バリスタにコーヒーをつくってもらって嬉しいという体験には、その人だからできる気配り、話しかけ方、動き、情報などがとても重要な要素になっているはずです。
意識のベクトル
自分の意識が、外に向いているのか、内に向いているのかってすごい重要だと思います。飲食のようなサービスに関わる仕事であれば尚更。
内に向いているというのは、「自分」に関することが目的になっている状態です。例えば、「美味しいコーヒーをつくれるようになりたい」「コーヒーのことを学びたい」「お店を将来つくりたい」という感じ。これは全く悪いことではなくて、コーヒーを楽しむ中では素晴らしい気持ちだと思います。自分のモチベーションとしては目的になるのかもしれませんが、お客様がいて成り立つ仕事として考えると、目的にはならない思います。
外に向いているというのは、「相手」の状態を対象にしている感覚。こんな人にこうなってほしい、文化をこうしたい、社会がこうなっていくといい。相手の定義や切り取り方は人それぞれかもしれません。経験によって相手の規模も変わるかもしれません。でも、仕事って相手がいるから成立しているんです。自分だけでは完結しないんです。この意識がどこに向いている状態なのかで、自分がそれを仕事にできる状態なのか、趣味として留めた方が幸せなのかがわかると思います。
きっと採用って、コーヒーでもそうじゃなくても、この辺の意識を見られているんだと僕は思います。
コーヒー屋の仕事の目的は、コーヒーをつくることではなくて、コーヒーのある時間でお客様に楽しんでもらうこと、満足してもらうこと。どのバリスタもその意識でコーヒーを淹れて、サービスをしているんです。
面接で答えられるようにしたい3つの質問
面接のスタイルは本当にお店によるし、コーヒー屋のような個性のある店ほど質問も多様だと思うんですが、ざっくり僕が答えられるようにすべきだと思う質問はこの3つです。
なぜバリスタになりたいと思ったのか
なぜこの店でバリスタをしたいのか
バリスタになってどんなことをしたいのか
一般化すると、
なぜその仕事に興味を持ったのか
なぜこの会社で働きたいのか
働いてどんなことをしたいのか
という感じ。
どの企業面接でも聞かれるような質問だと思いますが、この3つの回答で意識や意欲や本気度、その人のタイプや店/会社との相性も見えると僕は思います。
なぜその仕事に興味を持ったのか
なぜその仕事に興味を持ったのかという質問では、その人が元々どんな人生を歩んでいて、どんな理由やきっかけでこの業界で「仕事をしたい」と思うようになったのかが、ストーリーとして伝わります。なぜ仕事をしたいとまで思ったのか、自分の経験や価値観を思い返してみると絶対にあるはずです。
なぜこの会社で働きたいのか
どの業界にもいろんな会社/お店があります。この会社じゃないといけない理由、このお店でこそバリスタをやりたい理由を伝えられたらいいなと思います。もしこれが思い浮かばない、言葉にしづらいと思ったらそれは、自分自身の価値観の理解が足りていないか、その会社やお店の理解が足りていないか、もしくは両方かだと思います。
コーヒー屋なら、何度もそのお店に通って、どんなことを大切にしていて、どんなところが自分の価値観にリンクしているのか、なぜ数あるお店の中でその店じゃないといけないのか、伝えられるようになるまで通う価値はあるはずです。というかこれが言語化できないと、どの店で働くべきかが自分の中でも曖昧で、なんとなく業界にいればいいみたいな感覚になってしまいます。せっかくやるなら、自分が働きたい環境は明確にして意思を持って動いたほうが、満足できる結果がつくれるし、働く本人もその人が属する組織も、みんなプラスに動くと思います。
コーヒーの場合、ここが曖昧なうちは、チェーン店のアルバイトなど、まだ入りやすい環境で働き、そこで視野を広げ意思を確認していくというステップもあり得ます。もちろんチェーン店だろうと、こうした意識は大切にはなるのですが。
働いてどんなことをしたいのか
これは、その仕事において自分は誰を「相手」と定義していて、どんな価値を創造したいかの意識です。これがその会社/お店の意識と同じ方向性かというのも大事ですし、ちゃんと自分の意識のベクトルが外を向いていることを、具体的に言語化できるということから大事です。実際に働いてみないと見えないこともたくさんあると思うので、最初から視野をしっかり持つのは難しいかもしれません。その場合は、疑似的にでも、簡易的にでも、提供する側に立ってみるといいと僕は思います。
バリスタの場合、家族や友達にコーヒーを淹れてふるまうとか、大きな店で働いてみるとか、他業種でもいいのでサービスをする経験をしてみるとか。そういった経験を踏んで、自分はこの仕事でこうしたい、という意思がきっと見えるはずです。これがその会社/お店にはまれば、もうその場所で働くしかない、という結論に双方至るはずだと思います!
技術よりも意識
バリスタなんだったら、コーヒーの経験や技術がないといけないんじゃないかって思う方もいるかもしれません。実際に経験重視で採用しているお店もあるので一概には言えませんが、どの店もコーヒーの淹れ方はその店の素材やコンセプトに合わせたやり方があるはずです。
技術は意識についてくる、僕はそう思います。自分は何がしたいのか、これがあれば必要な技術は明確です。目的があっての技術だからこそ、技術そのものが重要な目的にはならないと思いますし、経験で重視で採用することがあっても、ここでの経験というのはその人の意識が同じ方向を向いていることを表す経験でもあると思います。
よく就活は自己分析と言いますが、自分のことがわからないと伝えられないのは、街のコーヒー屋の採用だって同じだと思います。
せっかく何かに興味を持ったのであれば、「なんでだろう」と自分の気持ちを確かめて、興味を掘り下げて意思を言語化して、相手に伝えるまでできたらきっと意味のある結果になるんだと思います。
興味を持つことは、本当に最高なことだと思います。
コーヒーをやってる僕からしたら、コーヒーに興味を持ってくれることはめちゃくちゃ嬉しいことです。せっかくの興味だからこそ、まずは素直にとことん楽しんでほしいし、仕事にまで興味を持っていそうならその気持ちを明確に磨いて、1人でも多くの方がコーヒーを伝える立場になってくれたり、美味しいコーヒーを飲める場所が1つでも多く増えていったら嬉しいなと思います。一方で家やカフェで楽しむだけにとどまったとしても、それは立派な興味です。興味があるからこそ人生は楽しいんです。
どんな興味関心であっても、仕事にしてもしなくても、人生の掛け替えのない熱として大切にしていきたいですね。
川野優馬
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