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同人業界をかたってみると


 

同人活動について、こんなエッセイを書いてみようと思いたちました。きっかけの一つは、ネットニュースで「クールジャパン爆死」という記事を見てから、なにかずっと引っかかるものが消えずに残っていたからです。

もう一つは今年にまた大阪北部地震があったことや北海道の地震、滅多に来ない大型台風など災害続きなのも関係しています。三年前にパソコンが壊れただけではなく、保存していたデーターなども一緒に失ってしまって同人作品がつくれないじたいに陥っています。
なんとかネットにつながる環境は確保できたものの、先立つものと相談しながらの足踏み状態が続いています。

同人作品の制作に関わったのが1990年くらいからですから、すでに30年近く
が経過しようとしています。古い話になりますが──間に長い空白の期間がありましたが──こんなにも月日が経ってしまったのかという気分でいます。

災害で、パソコンやらすむところも失ってしまったらと考えると、なにか記録のようなものを残しておけないかという気持ちがおこりました。今では同人関係のニュースも珍しくはなくなりましたが、実態を詳しく報告しているような記事はまったく見たことがありません。
誤解や憶測、ねつ造じゃないかと思う記事の方がはるかに多いと感じます。

もともと同人関係に関しては事実を伝えている情報が殆どない。アニメも同人も実際からかけ離れた情報ばかりが先行している業界でもあります。また情報がバラバラなものでまとまりもありません。

昔から、友人知人を含めていろいろな人からアニメや同人といったオタクコンテンツに関しての質問を受けることが多くて、それならば内情を知らせる記事を執筆してみようかと考えました。

実は大学生の就職相談でコスプレを仕事にできないかという生徒まであらわれており(実際に教員から相談を受けました)、オタク産業の間違った情報が一人歩きしているのを実感しています。
こういう本当にあった情報はニュースやネットには出てきません。

そこで活動記録というか、今までの記憶を整理しながら自分が知っている同人活動の実態をくわしく綴っていき、なにかの参考にしていただければと考えました。

ネットニュースの内容ですが、クールジャパンの根幹であるアニメ関連
が44億円の赤字を出しているということでした。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55359
こんなことは始まる前から分かっていたことです。

海外でのアニメを紹介するイベントもずさんなもので、日本のアニメでは
ないものも日本アニメと紹介されていたりするそうです。もっと大きな赤字を出しているのではないかと疑っていますが、現政権が続いている限り、広く明るみに出てくることはないでしょう。

多くの方はアニメは世界的にも人気が高いと考えている──儲かっている
業界と言いかえても良いかもしれません。まるでアニメ業界だけが永遠にバブルが続いているかのようにです。
それらの情報通りであるならばよいのにとは思いますが、現実には評判と現実との落差があまりにもかけはなれている業界でもあります。

アニメーターにも知り合いがおり現実の生活を知っていますが、結局、じり貧な業界のために生活が続かないという切実な理由で業界からみな離れて行きました。
もう20数年前になりますが、アニメの専門学校へかよう人間が就職する際にかなり突っ込んでアドバイスしたことがありました。この業界に残るのであれば現実を見て準備しないといけないと忠告していたのです。

この人はアニメが儲かる仕事であると誤解したまま就職しましたが、結局
忠告したとおりアニメーターをやめました。結果が分かっていたので老婆心からのアドバイスでした。
最後にあったのはずいぶんと前になるのですが、この時に忠告のとおりだ
ったと認めていました。ある程度の年齢がいっていましたので転職もままならず、アルバイト生活をしていました。

その後のことは分かりませんが。今もそうですが、専門学校からアニメ業界へと就職する人たちはすべて儲かる、成功につながる道筋であると思い込んで業界へと入ってきます。
話を聞いているとまるで日本版ハリウッドが存在しているかのようでした。
今でも神話のようにアニメ業界のサクセスストーリーが語られています。
業界に近いはずのこれらの人たちが、一番、現実を見ていませんでした。

国内では絶大な人気をほこるアニメコンテンツですが、海外となってくる
と少し首をかしげることばかり。ビジネス的にとなると儲からない業界であるのは今も昔も同じです。今や海外のどこかでコスプレイベントがどうのとかばかりで、クールジャパンとはコスプレイベントの別称なのかと勘違いしそうです。
 
アニメに関する情報と同人に関する情報はともに良くにており、お互いに過大過ぎる情報が信じられています。アニメ以外のクールジャパンに関しては分かりませんが、アニメに関してはスタートする前から分かっていたことでもともと海外でのアニメ人気は一部のもので、それを超がつくほど誇大な報道をしているからです。

これは小泉政権のときに、「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」の一つとしてアニメ関係もあったと記憶しています。
専門ではないので詳しくは憶えていませんが、アニメ監督の押井守監督も
参加していたとご自身が何かで書いているのを読んでいます。失敗していたはずですが、すでに似たようなことは過去に行われていたのです。

また、国家戦略の一つとして韓国もアニメコンテンツを上げていましたが、
まったく韓国アニメなど見もしないわけで、今思えばあれはいったいなんだったのかという感じです。そのためのマスコットである美少女キャラクターも作られていましたが、今ではどこへいったのか見ることなく終わっています。

アニメそのものに人気がないとはいいませんが、少なくとも経済的な国家戦略の一つとしてなにかの役に立っているようには感じられません。アニメの制作側がこのクールジャパンでまったく潤っていない状況は、制作会社の人たちのSNSなどでは公表されていますが、情報はまったく無視されているというかわざと黙殺されているような状態が続いています。
またアニメに関する情報に疑問をもつ人は殆どいません。

つい最近では、制作会社・プロダクションアイムズが、弁護士に一任する
形で債務整理を始めたというニュースが入ってきました。アニメ、「ハイスクール・フリート」などを制作していたアニメ制作会社です。

昨年では「蟲師」などを制作していた「アートランド」という、制作会社が
倒産しています。クールジャパンと呼ばれるようになってからも、いくつもこういうニュースが続いており後を絶ちません。ですがまったく無視されています。

2012年9月27日放送のカンブリア宮殿というテレビ番組に、海洋堂の社長「宮脇修一」さんが出演されていたときにも同じように海外での日本のアニメ人気の報道は間違っていると話しておられました。海洋堂はいまさら説明の必要がないほど有名なプラモやフィギュアなどの造形企画販売会社です。
アニメ好きで知らない人はいない会社でもあります。

ジャパニメーションという言葉も、アメリカで日本製アニメが放映された頃
に作られた言葉です。それはディズニー・アニメーションという財産にくらべて劣ったものとしての日本アニメを揶揄したものだったそうです。
だからこの言葉の響きを嫌ったアメリカのアニメ/マンガファンは、92年から93年にかけて「アニメと呼ぼう」というキャンペーンを行い、アニメという言葉の普及に努めました。

アメリカのレンタル・セルビデオ店での分類は、ディズニー関係は「アニメーション」、トムとジェリーなどは「カトゥーン」、日本製アニメーションを「アニメ」としているそうです。
つまり「ジャパニメーション」という呼び方は、日本人によるオタク文化の
高まりを市場として確立したものとも言えます。

一見国際的な標語のように思われる「ジャパニメーション」は、海外進出
を意識した日本のアニメを優秀だと思おうとする日本人のナルシスティックな言語装置ともとらえることができます。

また海外ではあまり良い言葉としては使われない言葉なのですが、自慢げに
「ジャパニメーション」という人の多いこと。

スタジオジブリの宮崎監督とタッグを組む鈴木敏夫プロデューサーが、海外での授賞式から帰ってきた時のインタビューで、まったく関係ない話ではありますがと断った上で「ジャパニメーション」という言葉について、「実はセックスと暴力の代名詞であることを日本人は知らない」とよい言葉ではないと指摘していたニュース映像を見たことがあります。

しかしこういう話にはまったく耳を貸さないというか、昔から完全に黙殺
され続けています。誰かが意図して情報を操作しているというよりも、アニメの好きな人たちも含めた共同意識として、無意識に相互に操作しているように強く感じます。

同人を含めたオタク産業もまったく同じで、大きなズレというか強い乖離
が根底に存在します。なぜアニメ・クールジャパンの失敗が分かるのかは、同人でも同じような展開がすでにあって経験しているからです。

これは長く見てきたからこそ感じるのですが、「乖離」ではなく精神医学などでもちいられる「解離」に近いものであると思います。ある種の神話形成にも似ていると最近では感じるほどです。

同人に関わっていると嫌でも実感することで、サークル活動をしていた頃は
コミックマーケットなどは大バッシングを受けていて、当時会場であった幕張メッセの使用が認められないということもありました。

それが今ではオリンピックがあっても開催日をずらして使用できるようにしたいと都知事がコメントするようにまでなっています。ほんとうに世の中の動きは変われば変わるものです。

同人誌と即売会、印刷会社からコスプレや同人ファンの実態まで同人を取り
巻くすべてのあれやこれやを同人活動の記憶を探りながら、時代背景も含めて幅広く解説していきたいと思います。

ご支援は、創作活動再開と新しい創作活動などのためにありがたく使わせて頂きます。