第7話 恋をしてはいけない相手


レッスンから数日後。
最高に楽しくて濃かった1時間。
レッスンから本格的にピアノを弾き始めて練習も今までの何倍もしている。
Aさんから知った曲。Aさんから習った曲。
今まで感じたことの無い特別感がある曲。
その曲を口ずさみながら髪を結ぶ。
あれ…?なんで私こんなに楽しそうなんだろう。

「随分とご機嫌さんだね〜」

そう声をかけてきたのはお母さん。

「なんか、最近生き生きとしてるよね。Aさんのレッスンに行ってからなんだか毎日楽しそう」

なんて言われた。
咄嗟に私は

「そんなことないよ〜」

って言って笑ってみせたけど、言われてみればそうかもしれない。Aさんのレッスンに行ってからは、先生のことにいついてクヨクヨ考える日も少なくて毎日が楽しい。でも、最後にレッスンを受けた日がどんどん遠くなるにつれ、寂しくなる。
その度にAさんのSNSをチェックし、いいねを押す。

鏡の前の自分は数週間前よりもずっと笑顔で元気。
なんでだろう…Aさんのことが頭から離れない。
Aさんのことが気になってしょうがない。
これって…
1文字の漢字が頭によぎる。けど慌てて消す。
だってAさんは恋をしてはいけない相手だから…

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