第2話 思い

2022年。今からちょうど一年前の夏
暑い中必死に自転車を漕ぎながらたどり着いたのは塾。
今日もあの人のいる部屋へと軽い足取りへ歩いて行く。
「先生っ!」
「お、こんにちは〜」そう言って笑顔を見せたのは先生。
今日も先生の笑顔は眩しい。
私は今この人に思いを寄せている。夏期講習だからほぼ毎日会えるのが嬉しくて生きてるのが楽しくて仕方ない。
授業中は先生の横顔を見つめながら授業を受けるのか日課。
この時間がいつまでも続けばいいのに。その願いは届かなかった。



「俺、今年の三月塾講師辞めるんだ」
「えっ」
自分の耳を疑いたくなった。
一瞬にして世界が白黒になった。
告白という文字が頭の中をさまよう。
その答えがまとまらないまま、先生は塾を卒業してしまった。

そこから約4ヶ月たった7月。
プライベートで先生に会うことに。
朝は苦手だが、早めに起き先生好みのメイクを始める。服装も先生のタイプに合わせて待ち合わせ場所のファミレスへ向かう。
まだまだ夏の暑さは続くがそんなことはどうでもよかった。
先生と待ち合わせて席に座る。
重たい空気の中その空気を開いたのは私。
「久しぶりだね」
「うん、元気してた?」
そんな会話をしながら、いよいよ本題へ。
ずっと伝えられなかった言葉を絞り出し、先生に向ける。
「私、先生のこと好きです。」
でも私が思ったような答えは帰ってこなくて、結局私の想いは届かなかった。

涙を必死にこらえながら先生と別れファミレスを後にした。
こらえていた涙がひっくり返したバケツみたいに流れる。涙を拭いながら歩いて行く。
しばらく泣いて泣き疲れた頃、どこからかピアノのメロディーが聞こえた。
泣いて火照った頬を冷やしながらそのメロディーのする方へ吸い込まれるように歩いて行く。

そこには1人の男性がピアノを弾いていた。
そのメロディーは強くけど優しいメロディーだった。
私は張り付いたようにそこに立っていた。
演奏が終わるのも気づかないぐらい集中して聞いていた。
演奏が終わり、男性が笑顔を振りまく。
その光景をぼーっとみていたら、男性が近づいてきた。
「大丈夫ですか?」
その一言が全ての始まりだった。

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