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小さな島で魔女に殴られた話その3(終)

JAFを待っている間に
私たちはいろいろ話をしたり
(Oさんは話しやすいとてもいい人だった)、
上に見える道路に向かって
「誰かいませんかーーー」と叫んだりした。
そばの大きな果樹園に誰かいてもいいようなものだが、休みの日なのか、誰もいないようだった。

しかし、しばらく後に、
ドルドルドルと音を立てて、
大きなバイクがやって来たのだ!
歓喜した私たちはその人に駆け寄り
(私はヨロヨロとね)、
事情を話して助けてもらうことにした。
灯台を見に来たはずがなんでこんなことに、と
海を越えて高松から来たというその人も思っただろう。

ライダースーツを着た高松の人と
夫とで車を持つ。
Oさんはアクセルを思い切り踏んだ。

車は大きく動いて、上がった!

無事脱出できたOさんは
大喜びで、まずはJAFに断りの電話を入れた。
お金を払いに行きますので場所を教えてくださいと
言っていたが、大丈夫だと言われていた。
さすがJAF。

さて、良かった良かったと帰ろうとした
私たちに、Oさんは両手に2千円ずつ持って
「これはお礼です。今日は本当に助かりました。
どうか受け取ってください」
と渡そうとした。
いらないです、いや受け取ってください、
のやり取りが続いて、
根負けした夫がOさんの片手の2千円を受け取り、
千円を高松のライダーに渡して
「じゃ、こういうことにしましょう」
と言った。
Oさんも納得してくれた。

「では今度は気を付けて」
「ハイ」
Oさんとも高松のライダーともお別れだ。
高松のライダーは結局灯台を見ずに引き返した。
続いて私たちも車を出す。
Oさん大丈夫かな?とゆっくり目に走っていたら
軽自動車が遠くに着いてきたのでホっとした。
無事に家に帰れるだろう。

さて、魔女の一撃をくらった私は
その後十日ほど、湿布を貼って腰痛と戦った。 
思ったほど重症でなく、
ゆっくりでも歩けたのは本当によかった。
職場の会長からは
「僕もよくぎっくり腰になるんだよ。
H先生のお葬式もぎっくり腰で出られなくて。
でも次の日から走ってたよ。ウフフ」
という謎の自慢をされた。
専務からも
「僕はぎっくり腰になりそうだと思ったら
腰にクッションを入れて寝て身体を調整するんです」という
プロじゃないと真似できないアドバイスをもらった。
それにしてもウチの職場の男たちはなぜ
ぎっくり腰についてあんなに嬉しそうに話すのだろう。

ともあれ、元気になった私は
今もなんとなく腰に気を使って生きている。

(了)















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