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満ちてゆく

藤井風(以下風くん)の
「満ちてゆく」を最初に聴いたときに
身体と心が固まって
しばらく動くことができなかった。

私は風くんのファンで、
何度かライブにも行ったし
グッズ等も愛用している。
もちろんアルバムももれなく持っていて
何度も聴いているのだが、
この新曲は少し次元が違うと感じた。

誤解を恐れずに言うと、
この曲は
ご病気等で死期を悟った人や、
もしくは大切な方が亡くなった人に
贈ることができる曲なのではないかと感じたのだ。

ちょうど1年ほど前、
私は古い友人と永遠の別れをした。
ご興味があればマガジンを読んでいただけたらと
思うのだが、
彼と最後にメッセンジャーでやり取りをしていた際に、何か心の拠り所となるような曲を贈ることが
できないかと思っていたのだ。
しかしながら、いろんな曲を聴いて感じたのは、
曲というのは生きている人のためのものが
ほとんどだということだった
死んだことのない人が作るものなので
それはしょうがない。
そこには想像しか存在しない。

候補にしたどの曲も、歌詞が微妙に引っかかった。
風くんの「帰ろう」「grace」も考えたが、
神様という言葉が歌詞に出てくるのは
召されてもいない人に贈る曲には相応しくないと
思い、結局私は何もできなかった。

この「満ちてゆく」も
もちろん風くんの想像の産物であることは
否めない。
しかし、生きていても、死んでいても、
さまざまなことに終わりが来ることを
受け入れて納得して、優しく手放す。
それはサヨナラではなく
さらに生死を超えた
魂としての新しい繋がりだという意味の歌詞が、
もしかして、
自分の「肉体としての」終わりを悟った人の
心の支えになるのではないかと、考えたのだ。

ああ、もう1年早かったら。

彼の生命をかけた苦しみがわからない私が
曲を贈るなどとは傲慢な振る舞いかもしれないが、
そう思わずにはいられなかった。
それほどまでに、聴くと心がギュッと掴まれて
時間が止まってしまう曲なのだ。

そもそもこの曲が主題歌になった映画も
生死や愛をテーマにしている内容なので、
そこにとても合う世界観なのだろう。
この歌詞と曲をこの若さで書いてしまう
才能、恐るべしである。

風くんの曲は
いつも皆に優しく、
どこかに救いがある。
「旅路」や「ガーデン」も
とても好きな曲なので、
よかったら聴いてみて欲しい。

「旅路」のMVに出ていた里庄駅のそばの歩道橋。
歩道橋をこんなに必死で撮ったのは初めて。


(了)




























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