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本当に怖くない猫の話 ノ歌

朝焼けの差し込む窓辺に 
君はたたず
障子を蹴破って覗き込む
窓の外には何があるのか
色とりどり花はない
あるのは草いきれの朝焼けにむせぶ庭
草取りをする飼い主の背を
君はずっと追いかけて見ている
欠伸あくびして太陽を食べるみたいに

朝焼けの差し込む窓辺に
君は佇む
虫たちは何を語るだろう
君の耳には何が聞こえているだろう
鳥は猫におはようを告げない
鳥たちの目覚めの歌は君を駆り立てるだけ
窓につく羽虫は
窓越しの君の手に届かない

朝焼けの差し込む窓辺に
君は佇む
振り返って大きなあくびをする
君は今何を語っているのだろう
おはようを告げるのはわたし
朝日を背にした君の向こうは逆光
言葉より遥に
流れる時間を語る

朝焼けの差し込む窓辺に
君は佇む
君が踏みしめているものは何か
ぎゅっと握った手には何かある
君が望むものは何だろう
立つ飼い主を君は追いかける
回転椅子に乗ってゆったりと寝そべり
背中を見ている

朝焼けの差し込む窓に
君は佇む
事件が起きたあくる日の朝も
君は寝ていた
おはようと聞いた
ゆったりと構えて落ち着いていた
時はめぐる
変わらないものなどないよ
君の代わりがいないだけ

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