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何事も譲るようで譲らない三毛猫

猫や他の動物と人間の知能を比べるのは間違いだと思う。
例えば知能が高い猿などの動物は、人間同様1歳くらいで放り出されてしまえば、ほとんど生きていないだろう。
飼い猫に品種改良されてきた猫は、外でも平均して4~5年生きられるそうだ。体が丈夫で警戒心が強く、人間との距離の測り方が上手い猫であれば、もっと長く生きる場合もあると思われる。

我が家の猫たちがもし何らかの理由で再び野猫になっていまったらと考えることはある。しかし、すぐに死んでしまう姿は想像できない。
私は独身で親は高齢。二匹の猫たちはまだ3歳以下(推定)と若いので、人間の方が先にくたばってしまう可能性は大いにある。
最近猫を残して亡くなってしまった独身男性の記事を読んだ。とても世知辛い内容だった。
親が亡くなって、10歳以上の猫を二匹残して私が突然死したら、無責任と言われてしまうだろうか。兄弟がいるので後のことはやってくれると信じたいが、その時の状況は死んだ者にはわからない。
高齢猫に外生活はきびしいだろう。
万が一のために庭を外猫になっても大丈夫な楽園にしたい。
ただ、食料調達の問題はどうしても残る。

また、猫は縄張り意識も高いようだ。
うちの三毛のセミ猫は子猫の時から2歳過ぎまで1匹で人間に育てられたためか、どこかのんびりしている。
後から来た麦わらのトンボ猫にご飯を横取りされても、ほとんど怒らず、「ごはんが減っちゃったよ~」と人間に情けなさそうに訴えてくる。
だからといって、トンボ猫に立場を奪われているかと言えばそうでもない。
うっかり熟睡して寝込みを襲われるからか、人間の膝は家の中ではトンボ猫に譲っているが、車の中では絶対に膝を譲らない。キャリーに入れたら出せとは騒がないのではあるが、車内でトンボ猫が周りをうろちょろするとうるさいと叱り飛ばすのである。たまにはパンチも食らわせるので、キャリーを破壊するほど自由を愛するトンボ猫もだんだんと大人しくなってきた。

セミ猫がペットベッドをいたく気に入って、トンボ猫にパンチを食らわせて教育して絶対使わせないので、Seriaで猫用のジョイントマットを買ってきて、トンネルつきのベッドを作ってあげた。
早速使ったのはセミ猫で、トンボ猫はセミ猫が使っていない隙にしか使えない。セミ猫がよくそこに入っていて、トンボ猫がのぞき込むとパンチを繰り出して追い払う。トンボ猫はセミ猫ともっとくっつきたいようだが、セミ猫は絶対に許さない。そもそも車以外では人間の膝でも眠らないのだ。ただ、一度乗ると離れない。トイレに立つことも許さず、膝から降ろされると「みゃあ」と不満そうに鳴く。椅子が動くなというのである。

セミ猫は我が家のお嬢様だ。その立場は揺るぎない。
トンボ猫は最近諦めて、人間の布団で先に寝ているようになった。
自分に都合のいい時だけ、セミ猫が遊びに誘っても乗らなくなった。
セミ猫はしつこいので、トンボ猫が疲れても追い回すのである。
トンボ猫はトンボ猫で甘噛み癖があり、それが首やお尻を狙うので見ていてひやひやする。トンボ猫はセミ猫と人間が自分に危害を加える気はないとわかっているので、怒られても意に返さない。ただセミ猫のパンチは時折痛いし、人間の機嫌を損ねるのも損をするだけなので、序列に従うことにしたようだ。
それでもセミ猫のご飯は盗んでいいと思っている。なんならお腹が空いたら、セミ猫にごはんのおねだりをしてもらえばいい。トンボ猫は太ったので、ごはんをねだっても人間は絶対にくれないのである。
猫に給餌する猫。お皿を分けても意味がない。隠れているトンボ猫が飛んでくる。トンボ猫は人間かセミ猫の後をついて回る。その方が便利で自分に都合が良いことがわかっているようだ。外生活に戻る気は一切ない。

ただ、プライドが高く健康に不安のあるセミ猫に比べれば、外に出てもトンボ猫の方が要領よく生きてはいけるだろう。人間の3歳児と猫の3歳は同じではない。知能の高さが必ずしも生活力に直結しない。

それは人間も同じだろう。どんなに賢い5歳児でもまだ保護されるべき年齢だ。猫のように多分一人でも大丈夫では済まないのである。
今は賢い若い人になんでも任せよう、年寄りはひっこめという世論があると思う。けれども、優秀なリーダーであるセミ猫を見て思うのは家族とかチームとか国とかをまとめる時に最も必要なものが賢さとは限らないということだ。
セミ猫がおバカだとは思わない。一方で協調性がトンボ猫より高くない。身を守る術もトンボ猫より持たないだろう。それなのに、きれやすく攻撃的だ。しかしながら、顔を分けてあげるアンパンマンのように同居猫の餌事情には気を配ってくれる。人間が寝込んでいたら、うっとうしいほど撫でをせがんで来たり、鳴いたり気にしてくれる。時には寄り添って寝てくれる。
リーダーに向いた猫は普段からどこか頑固でプライドがあり、一方でいざという時思いやりを忘れない猫ではないだろうか。そして、それは人間も同じではないだろうか。

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