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【おうちごはん】熊本ラーメンの源流「味千拉麺」

九州のラーメンチェーン店と言えば、どこを思い浮かべる人が多いだろうか。
もっとも多いのは、おそらく「一蘭」だろう。近年、飛ぶ鳥を落とす勢いで広まった一蘭ラーメンのあの仕切りのある一人席での孤食は、疫病の流行で世の中が潔癖になると日本の文化にますますぴったりフィットした。
味も見た目もシンプルで、健康志向で好き嫌いの多い現代人にとってトッピングを選ぶことが前提であるのもネットで安定して高評価をとれる秘訣であると思う。

親しみ深い熊本豚骨ラーメンは「味千拉麺」

しかし、熊本県人であれば、世代によっては一蘭の前にまず「味千拉麺」を思いう浮かべる人が多い。私が子供の時から、熊本市内に出かけるとあちこちで見かけた味千拉麺の店舗はいまだに数多く残っている。60代の両親も熊本市内の風景の一部として子どもの頃から親しみのある店だ。

わたしの住んでいる地域には1店舗しかなく、場所が遠いので外食が推奨されない時世もあって久しく行っていなかった。
大学病院の通院の帰りに業務スーパーのコストコで、家庭で作る用の「味千拉麺」の箱売りを見つけた時は、味の確かさだけでなく、懐かしさが手に取らせたところがある。

おうちで「味千拉麵」してみた

中は、半生麺とスープのみの10食セットだった。胃腸の状態から買って一か月以上作る気にならなかった。
5月を過ぎて、6月。満を持して作るからにはトッピングにこだわりたい。
最近流行っている麻薬たまごさながらに、醤油、酒、みりん、豆板醤、甜面醤、蜂蜜、唐辛子、オリーブオイルなどを適当に混ぜ合わせて味玉を作って一晩漬けた。

ラーメンには入れなかったが、玉子とズッキーニも漬けた

チャーシューも一晩寝かせた。コストコで紐で縛ってある状態の肉の塊が売られていて、それが冷凍庫でずっと肥しになっていたのだ。

ほろほろあっさり味のチャーシュー


彩りに、庭で採れたネギとミニトマトを飾った。
トマトは熊本の特産物として有名である。味千拉麺にはないが、気まぐれに乗せたトマトがより一層熊本ラーメンらしさを演出するような気がした。
スープが多すぎて、具材が少し沈んでしまったのが残念だ。
木耳はは私のお腹の都合でなしだ。

麻婆豆腐は母が辛くないように作った。

しかし、我ながらスープに対するお湯の量はちょうどよかった。麺は2,3分茹でて完成だから、トッピングの手間に反して、家庭で作る袋ラーメンは、お手軽である。

スープは二つ。

豚骨スープの香りが食欲をそそる。熊本ラーメンだから、馬油が使われているのだろうか。覚えているより少し味が濃くなった気がしたが、美味しかった。九州の豚骨拉麺はさらっとしている。

熊本の中華は本格的

東京で働いていたとき、九州ラーメンを冠した店が魚介醤油ベースでスープがドロドロしていたのに驚いた。濃厚豚骨と言われるが、豚骨拉麵が拉麺の中で一番あっさりしていると熊本育ちの私は思っている。そんなにラーメンを食べにいかないというのもあるが、細麺豚骨以外のラーメンは中華そばであって、ラーメンじゃない!という気がどうしてもしてしまう。

ニンニクの香りがきつくないのも良い。どちらかといえば香ばしい。焦げ臭くないギリギリのところを攻めている。一蘭に比べたら、味千のスープの方がよく麺に絡むだろう。
どちらが好きというわけではない。それぞれの良さがある。
ただ、熊本ラーメン、豚骨ラーメンと言えば味千の方が”らしい”と思ってしまうのは、私が熊本県人だからだろうか。
普段は自分を南九州人と思っていて、熊本市内の人は焼酎より日本酒やワインを好む球磨焼酎を裏切った異文化人だと決めつけているのに、現金なものだ。

そもそも、熊本は九州の中でも中華店が多く、中華の美味しい県だと思う。福岡にもその傾向はあるが、熊本は中華の店に入ると、特に料理人が中華圏の人であることが多い。そして、店に外れがない。
福岡は繁華街になると黙っていても客が来る状態だろうが、熊本は人口が少ないからそう簡単にいかない。
一つ一つの店舗で競えば、九州各県に美味しい店はたくさんあるだろうと思う。
しかし、福岡が九州で一番美味しい県かだと言われると、ちょっと反発を覚える。南九州の方が競争が激しいから平均値が高そうな気がする。中華も熊本は負けてない。何せ、熊本県人ばかりではなく、多く中華圏の人が本場の中華をふるまっている。

熊本拉麵のルーツは漢民族にあり


食べる時気づかなかったが、馬油つきと書いてあった。


味千拉麵も創業者は台湾出身だ。
台湾に行ったことはないが、味千拉麺の味を考えた人が中華圏の人だと知るとなお一層本格的な感じがする。
調べてみると台湾での出店は過去に失敗したらしいが、1990年代後半に入って、香港で大成功したらしい。2000年代にはアジア急成長企業に選ばれ、今は東南アジア諸国でも店舗を展開しているそうだ。
だが、味千拉麺は日本では全国展開していない。ほとんどの店舗が熊本にあるせいか、熊本の郷土色が強いように思う。
ちゃんぽんが好きな熊本人に合わせてか、ちゃんぽんメニューがあり、今は馬油のラーメンに馬丼まで販売しているようだ。
中国の福建省の郷土料理である太平燕(タイピーエン)もメニューにある。
ただ、太平燕は熊本では別の店が流行らせたと聞いたことがある。その店で以前太平燕を食べたが、ちょっと塩っ辛いのに胸やけしそうな重たさがなく、野菜や魚介がたっぷりであっさりしているのに満足感の大きい料理だった。

だが、熊本の人気メニューを外さないことより、半生麺で家庭用が売られているのが気に入った。カップ麺などの乾燥麺でもよさそうなのにあえての生麺である。
トッピングが多いと消化に負担がかかる私にとっては、トッピングを自在にできて店舗の味とほとんど変わらず楽しめるのが気に入った。わたしにはちょっとからかったけれど、許容範囲だ。市販の甘口カレーより、辛くない。
大食漢ではないので、チャーシュー2枚と味玉1個乗せただけでお腹いっぱいになった。味千拉麵は、おそらく替え玉前提でなく食べるのが平均量くらいの人の昼ご飯にちょうど良い量だろう。
まだ何食分も残っているので、お腹の余裕のある時にチャーシューのほかにまたトッピングを変えて食べてみたい。

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