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我が家の庭の風景 part.45

猫が布団に入ってくる季節になった。
不気味である。
先住猫のセミ猫は頼んでも一緒には寝てくれないが、人間が布団に入っていなければ代わりに自分が布団に入るのが人間からするとなんとも切ない。

新入りのトンボ猫はセミ猫を押しのけて人間のそばにいようとする。布団にも入ってくる。
甘噛みが怖くて追い出そうとすると、かえって甘噛みされそうになりなるが、それが恐怖というわけではない。

猫が人間の布団近くにいようとする晩は朝方にかけて冷え込みが厳しくなるということだ。
猫は気象予報士なのか。
翌日の最低気温を調べると今季一番の寒さだとわかる。

布団の周りを猫がうろうろしていたのは、朝方にかけての寒さを予見してのことだったのかと気付かされるとなんだかぞっとする。

おまけに寒い日は朝も早ければ、留守番中寝ないで待っているセミ猫が気掛かりだ。暖房機のタイマーをセットして出かけても、帰宅すると外にいた人間よりひんやりした毛皮を擦りつけてくる。

扉を開けると水を慌てて飲んでいて、手洗いする間もまちきれずに、撫でてとせがむ。ひとしきり撫でられるとトイレにかけこみ、留守番中に綺麗にご飯を平らげていながら、さらにごはんをせがむ。何度あげてもせがむ。3度目にはおやつ。

しばらくすると、寝てしまう。帰ってきた家族と楽しく過ごそうなどという気はないようだ。ぐっすりだ。抱き上げても起きない。無視をする。存分に撫でたのは母だけだから、私にもまだまだ撫でさせてくれてもよいではないか。腹撫でをさせてほしい。

猫はおそらく家の中をうろちょろしながら、帰りを待っていたのだ。
冷たい窓ガラスの感触に鼻をひくひくさせて窓に白い結露を作り、鼻の絵が描かれた瞬間があったのだろう。
時に庭を飛び回る小鳥を威嚇して鳴き、狩をしている気分で飛び跳ねてダンス。先住猫の奇抜なダンスに新入りもたまには目を覚ましたかもしれない。
ごはんを食べながら、白い目で見ていたのか。一緒に窓を覗きに来たのか。
曇天の空には鳥が黒い影を作るだけ。
窓から見下ろす花壇は家人が放置したまま黒く枯れた花が地面に沈む。
花は枯れてもまだ茎の青々とした不気味な12月下旬のピーマン。

庭の景色は猫にとっては日々違う。飼い主が整えないから草木が伸び放題。3日前まで元気だった雑草が黒く一つ、二つ、三つと枯れているのを人間は数えるが、ものを数えられず、目が悪く色彩が人間ほど分からない猫には黒い点が数日でたくさん現れるように見えるのだろうか。

(なんだあれ。なんでまだ帰って来ないの。)

移り気な猫は気が気でない。待ちくたびれて不安で、家族が帰宅してやっと眠りについたのだ。

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