【勝手気ままに読書メモ】#1 アイザック・アシモフ『化学の歴史』(ちくま学芸文庫)
はじめに
学校の理科の授業で学んだはずのことを、もう一度学び直したいという方
新しい視点を身につけたいという、知的好奇心に溢れた方
授業準備をされる際に、参考にしたい本をお探しの学校の先生方
今まさに自然科学を学んでいる最中の学生・生徒の皆さん
こういった方々のために、1人の理科教員としてオススメの本を、勝手気ままにご紹介。
さて、今回はアイザック・アシモフ『化学の歴史』についてつらつらと。
著者と訳者に惹かれてしまったのがきっかけ
アイザック・アシモフ(1920-1992)はロシア生まれ、ニューヨーク育ちのSF作家として知られている。(代表作『われはロボット』)
それだけでなく、医学部の生化学講座の助教授も務めていた。
私がアシモフを知ったのは、大学編入試験対策の勉強のために読んだ『科学と人間』(SCIENCE AND HUMAN BEINGS)という英文エッセイからだった。
この『科学と人間』や他の英文を読んでいると、氏の知識の深さ・幅広さが伺えた。
そして訳者のお一人には竹内敬人先生という方がいらっしゃる。
竹内先生は、私が高校時代に使っていた化学の教科書の著者でもある。
他には、中学校の理科の教科書、大学の化学の教科書など多数著されている。
化学史がご専門。
この方々による本ならば、読まないわけにはいられなかった。
ということで即購入。
内容をざっくりと
人類誕生から現在に至るまで、化学がどのように発展してきたかを歴史的に捉え、その意義を考える内容になっている。
扱われているテーマのほとんどが、高校の化学(理論化学・無機化学・有機化学)や物理で学ぶ事柄である。
ただ、他の化学史の本と比べると、内容はそこまで深くはないが、読みやすい。
高校の化学+物理で扱われている内容を時系列に配列した形だけれども、こんなつながりや背景があったのか!と思えるところが数多い。
わかりやすく易しい言葉で記されているので、特に高校・大学等で化学に触れたことのある方にとっては、化学の面白さと理解を深められる1冊。
感想
1.高校化学を学ぶ意義を再認識できた
最初は著者・訳者のネームバリューに惹かれて目を通していたに過ぎなかった。
しかし、教員を続けている中、高校の教科書で扱われている内容について、それらを学ぶことに疑問を感じていた。
それで、歴史的に考えるために、この本を再度読み直してみた。
そうすると、こんなことを考えるために化学の意義があるのではないかと思った。
・世界が何からできているかを探るためにいろいろな方法を使い、人類がどのように知恵を発展させてきたか。
・高校の教科書で扱われている物質あるいは化学反応が、人類の発展&それが引き起こした問題にどう関わっていたか。
2.テーマ間での意外なつながりがわかった
現在の高校化学の教科書は、歴史的な流れをほとんど無視した単元配列になっている。
そのせいか、テーマ間でのつながりが見えにくい。
しかし、この本を読んでいると、テーマ間でのつながりが改めて分かった。
具体的に綴るとネタバレになるので割愛するが、この本を読むと、教科書には著されていない意外なつながりも見出すことができる。
3.生化学についても扱ってほしかった
現在の化学では生化学(生物化学)がかなり重要な位置を占めている。
アシモフ氏の著書には『生物学の歴史』(講談社学術文庫)もあるが、生化学についてはここで著されている。
しかし、生化学も化学の分野(だと勝手に思っている)なので、できることなら、こちらの本でも生化学について扱ってほしかった。
それでも良書であることに間違いはない。
4.授業準備でも活用できる
最近私が高校で行っている授業や、大人向けの講座の準備をする際、この本を参考にしている。
化学を教える立場の先生にとっては、この本に著されている程度の歴史的な背景を知っておくと、自信と深みをもって授業・講座を展開できるのではないだろうか。
詳しくはこちら
筑摩書房
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480092823/
amazon
https://www.amazon.co.jp/化学の歴史-ちくま学芸文庫-アイザック・アシモフ/dp/448009282X
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