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流体

「貴方は産まれたその日の空の色を憶えている?」
天使が耳元で囁く

その時も、今も、この空は蒼く、草木は萌え、宇宙はただくるくると回転し続けているの

ビルの屋上でただ空を見上げているわたしの影
白いワンピースからこぼれる光
街には人が溢れている
楽しそうな笑い声が聞こえる
人は何処から来て、何処へ向かうのか?
空虚で溢れたこの街のメロディーを聴く  

生きる意味はいつも見つけられない
昔誰かがくれたハンカチで涙を拭く
きっと皆この空の元きっと漂っているだけに違いない
漂っているのだ、この空間をただ、そっと。

産まれたその日、わたしは浮遊する天使を見つめて約束を交わした
きっと貴方が大人になった頃その意味がわかるでしょうと
天使は言った

それから長い月日が流れ私はその言葉の意味がわからずにいた
流れる月日に流されていく、消えていく感情
わたしは貴方が好きだった
都会の喧騒と変わらぬ日々にかき消され、それさえも消えていきそうだ

大切にしたいものはいつも遠くに離れていって
手を離したくないのに
人はこの宇宙を漂って出会っては別れを繰り返す
わたしは貴方が好きだった
大切にしたい気持だった、ただそれは純粋なものだった

漂って廻って生まれ変わって、
また此処で逢えるとは限らない

また逢えるように祈りを重ねて
生まれた日の天使の言葉を想い出すの
「そう、いつか気付くでしょう。この世界の時間はずっと流れて止まる時が来ないまま、人はいつか居なくなって、生まれて、またわたしは此処に会いに来るの。」と。

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