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私が出会ったインクルーシブリーダー ~リーダーにはブドウ糖が必要~

こんにちは、An-Nahal代表の品川優です。
この『多様性とイノベーションの科学』シリーズは、“インクルーシブリーダーシップ”や“グローバル・ダイバーシティ”について創業者の私が日々感じていること、日本企業のD&I推進に奔走する現場のリアルな日常をお伝えするnoteです。その中でも今日は『私が出会ったインクルーシブリーダー』と題して、インクルーシブリーダー・リーダーシップについてお話します。

同じ経営者の方や、組織やチームのリーダーの方には「あるよね~」と共感していただけるのではないかなと思う失敗談も吐露しています。ぜひ「リーダーシップ」について一緒に考えていけたらと思います。

インクルーシブリーダーはブドウ糖が必要。

「え?」
と思われたかもしれません。実はこれは実際にインクルーシブリーダーに必要な要素として提唱されているものなんです。
オーストラリアにあるUNSWビジネススクールのJuliet Bourke教授が書いている『Which Two Heads Are Better Than One: The Extraordinary Power of Diversity of Thinking and Inclusive Leadership』によると、インクルーシブリーダーシップに必要な6つの資質の1つとして「謙虚さ」「他者への好奇心」が挙げられています。自分自身が謙虚になり、相手に好奇心を持ってコミュニケーションをとっていくスタイルが必要とされているのですが、その前提として正しい認知能力が必要となります。この認知能力を向上する方法として「ブドウ糖の摂取が効果的」とされています。

要は「相手と向き合うために、まず自分自身のコンディションを整えること」が大切と書かれており、脳への栄養補給としてブドウ糖が必要、しっかり睡眠時間を確保する、などの具体的なアドバイスが書かれています。

多様な人と協働し、他者のさまざまな意見を聴き決断するというリーダーのコミュニケーションや意思決定の質を高めるためには、まずはリーダー自身がいい状態でなければならない。自分がしんどい時、痛みや不快感がある状態では自分のことですらいい判断ができなかったりしますよね。ごもっとも!という感じなのですが、まさにそれを痛感した出来事がつい先日社内でありました。

「聴く」<「話す」方が圧倒的に速いし楽。けれども…

その週は、An-Nahalメンバーと個別にじっくり話す時間がありました。比較的これからの取り組みについて大事な話、大事な決定をする場面が多い対話でした。そんな中振り返って思うのは、私がメンバーに対して「聴く」<<<「話す」になってしまったなという反省です。相手の想いや考えを聴くよりも、私が話すことの方が多かった。まずは相手の話を聴いてから判断したり話し出せばよかった…と反省しています。

経営者は、時に自分が話すこと、自分の想いやビジョンを言葉で伝えることも大切です。特に小規模の組織ではほぼすべての決断を経営者がすることもあります。An-Nahalでは最終意思決定権は私にあるので、最初から私が決めてメンバーに実行を依頼することも可能です。その方が、圧倒的に物事が進むスピードは速い。でも先週のあの場面では、私はまずはもっとメンバーの話を聴くべきでした。

なぜなら、私が持っていない視点やアイデアをチームメンバーが持っていたんじゃないかと思ったからです。もう少し相手を信じて任せることができたのではないか、と。
自分が最終的な責任を持つので、自分の想定できる範囲内で物事を進めたい場合は経営者が話して決めた方が速い。その方が私にとって驚きが少なく不安も少ないから1番楽な方法です。でも、それをせず相手の話を聴くというのは、自分にはないアイデアや提案を聴く可能性があり、自分の期待と正反対に思える提案が出てくるかもしれない不確実性や期待が生まれると思うんです。想像よりもっといい方向に進めるかもしれない、その可能性をリーダーとして狭めてしまうのはもったいないなと感じます。

ただし、相手の話を聴くというのは受け止める覚悟や心の柔軟性がないとできません。予想外な展開になっても、OKOK聞くよ!のオープンマインドな状態を、 時間的・体力的・心の余裕をもって受け止められるか。
そう思うと、前週からとても忙しく、梅雨独特の気候もあって体調が芳しくなく、コンディションが決していいとは言えなかったその時の私には余裕がありませんでした。だから無意識に「話す」を優先してしまったのだと思います。

別のプロジェクトで経験した、この行動がインクルーシブリーダーシップだ。

そんな反省の最中、「これぞまさにインクルーシブリーダーシップ!」と感じたことがあったのでシェアさせてください。

私が個人的に参加している別プロジェクトでの出来事。そのプロジェクトでは、明確なリーダーがいる組織体制ではなく、それぞれ別の仕事をしながら合間を縫って取り組んでいます。多忙なメンバーが集まっているので、全員でのMTGはなく、各自がタスクを進めている状況の中、私は段々とプロジェクトの進め方やコミュニケーションに違和感を持つようになりました。きっとそれぞれ考えや意見が異なるだろうなと感じながらも、全員で話す場がなかったので、自分の中で悶々とする気持ちは高まる一方。これ以上コミットするのは気持ち的に難しいなとモヤモヤが募り、メンバーの一人に今の気持ちを打ち明けることにしました。

話した相手は、プロジェクトに関わるメンバーの中でも特によくタスクを進めて貢献してくれていた人です。彼女も多忙であることは分かっていたので申し訳ないなと思いながらも、今私がプロジェクトに対して思っていること、今のままだとコミットが難しいと思っていることをチャット(テキスト)で伝えました。

すると彼女から「なるほど、今話せる?」と即レスがきたのです。

これがまさにインクルーシブリーダーシップだ!と自分の反省と照らし合わせて感じました。彼女にとっては、私からの連絡に対して「そうなんだ、じゃあ今度みんなで話そう」もしくは「じゃあ私がなんとかするね」と返信する、後で対応することもできたはずです。でもそうせずに、すぐに私と話すことを選択してくれた。
これはインクルーシブリーダーシップの要素の1つである『コミットメント』の表れだと感じました。彼女の立場はリーダーではありませんでしたが、メンバーの一員として他のメンバーが前向きに参加できる環境をつくろうと覚悟を持ってコミットし、声を上げたメンバーの話を率先して今聞く、時間をつくるというコミットをしてくれたのです。この行動が2人の関係性やその後のコミュニケーションの質に大きな影響を与える重要なポイントだったと思います。

すぐにジャッジしない、聴く力。

その時の対話では、まずお互いがどう思っているのかを話しました。
彼女は私の意見を「そうなんだ、そんな風に感じていたんだね」と受け止めた上で、「私はこう思ったよ」と彼女の意見も出し、「お互いこう考えてたんだね」とまずは受け止め合いました。これは、「ジャッジメントをせずに受け止める」という、聴く力の中でも大切とされているポイントです。
私の意見を聴いて「私はそうは思わない」「でもこれって…」とすぐジャッジ(判断、決めつけ)をするのではなく、いい悪いではなく意見を出し、まずはお互いの考えや気持ちを共有します。その上で「じゃあどうする?次はどんなアクションにしようか」を話し合う。この後はお互い素直に建設的に話す時間となりました。これがあったからこそ気持ちよく、よりよく力を合わせて進むことができる、インクルーシブリーダーの要素の1つでもあるコラボレーションの第一歩だと実感しました。

リーダーシップはマインドではなく行動

そんなこんなで、私が社内のメンバーに対してとった行動の反省と、これがインクルーシブリーダーシップだ!という行動を見せてもらったエピソードが同時に発生した一週間。より鮮明に私自身もインクルーシブリーダーシップの大切さを実感することになりました。

ここで私が「行動」「行動」と表現しているように、リーダーシップとは「マインド」ではなく「行動」なんですよね。もちろんマインドの部分もあるのですが、結局それを実践する、相手に伝わるように行動することこそがリーダーシップです。

そしてリーダーシップとはリーダーやトップの人間だけでなく、役職や立場関係なく全ての人が実践できるもの
誰かと何かを一緒にする、チームで1つのことに取り組む中で、関係性を深め物事を前に進めるためにリーダーシップの発揮が欠かせません。特に組織のリーダーや裁量を持つ立場の人は、組織や裁量が大きくなればなるほど周りへの影響力も大きくなるため、改めて日々のリーダーシップの発揮=行動で示すことはとてもインパクトのあることだということを私自身も実感しました。

ちなみに、ここに書いたことは正直に社内のメンバーにも共有。どうしても誰にだってコンディションの波はあるもので、リーダーとしてのふるまいも日々反省ばかりです。後日の行動で挽回しつつ、「言いすぎてしまったな」「今のはよくなかったな」「これはどうしても苦手だな」ということも素直にメンバーに共有する『オープンマインド』で、お互いをフォローし合えるチームづくりに取り組んでいます。


ここまでお読みいただきありがとうございました!
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