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中倉代表に聞く女子アマ王位戦の魅力

開催日の2023年9月23日が迫ってきたひふみ杯第16回女子アマ王位戦 北陸・中部大会。今年も昨年に引き続き石川での開催ということで、大会主催のLPSAの中倉代表にお話を伺ってきました。

昨年の田中女流1級へのインタビューは下のリンクからご覧いただけます



女子アマ王位戦の歴史と特色


———本日はよろしくお願いします。早速ですが、ひふみ杯女子アマ王位戦の歴史についてお聞かせください。

中倉さん
ひふみ杯女子アマ王位戦は今年で16回目を数える大会になります。
2008年に女性アマチュアの将棋大会として産声をあげて以来、回数を重ねるごとに大きくなっていき、全国最大規模の参加がある大会に成長してきました。
歴代入賞者一覧の通り、この大会の参加者から多数の女流棋士が誕生しています。
昨年優勝した磯谷祐維さんがLPSA所属女流棋士としてデビューしたことも嬉しいニュースです。
大会主催として、強豪選手から初心者まで、女性将棋ファンの裾野を広げることを意識して開催してきました。引き続き全国の女性将棋プレーヤーにとって夢や目標となる大会になるように、発展させていきたいと思っています。


———歴代の参加者から多数の女流棋士が誕生していることや、長年継続して開催されていることから、大会の認知度の高さや女子アマにとっての重要性が窺い知れます。そんな女子アマ王位戦の特色はどんな所にあるのですか?

中倉さん
本大会は、地区大会→全国大会という手順で、地方在住でも参加しやすいようにしているのが特色です。東京、大阪では女流アマ名人戦などの全国規模の大会が開催されていますが、地方からはわざわざ遠征しないといけないので、ハードルが高いと思います。
それこそトップレベルの実力があったりして、大会での活躍を確信できる人じゃないと、遠征してまで大会に出場したいとは中々思えないんじゃないでしょうか。でもそれだとすごく勿体無いというか、埋もれた宝がいっぱいあるというか。
そういう意味で地方の参加者に寄り添いたいという思いは常に持っていますし、それが大会の特色にも表れていると思います。
もちろん運営予算はかかっちゃうんですけど、LPSAとしてはそこにこそ予算をかける意義があると考えています。
いずれは各県から代表を1名選出できるくらいになるのが夢ですが、地方では女性プレーヤーがまだまだ少ないのも課題です。
見る将に代表されるように最近は女性の将棋ファンが本当に増えました。大盤解説会ではお客さんの半数が女性というケースもちらほら見聞きします。私が将棋を始めた頃と比べると本当に隔世の感があります。だけど、それだけ女性ファンが増えたんだとしたら、もっともっと大会に参加する女性が増えてもいいと思うんですよね。

女子アマ王位戦のシステム図


———たしかにファンになることと大会に出ることの間には、また別のハードルがあるような気がします。

中倉さん
そうなんですよね。でも実際に大会に出るのは色々良いことあるんですよ。
とりわけ私が大会出場の大きな魅力だと思ってるのは友達です。大会に出ると友達が増えるんですよ。友達って将棋を楽しむ上でとっても大切で、それこそ続けていく大きなモチベーションになりうると思うんです。
男性に比べて競技人口が少ない女性にとっては、同性の将棋仲間を作っていくことは非常に大きな比重を占めるんじゃないでしょうか。
そんな思いもあって、代表決定クラス以外にも、級位者クラスを設けて、有段者だけではなくライト層にも参加してもらえるように工夫しています。併設イベントなどもそのような狙いがあります。この大会が将棋仲間をみつけるきっかけになれば嬉しいです。

会場は今年もお寺で和の雰囲気につつまれて


———女性や地方にとても配慮されているのですね。この北陸中部大会は、昨年に引き続き願念寺さんでの開催です。このお寺という会場も地方ならではと感じるのですが、会場について昨年の印象も踏まえてお聞かせください。

中倉さん
お寺での対局は厳かで心が引き締まるような印象です。将棋が日本の伝統文化である、ということがより感じられて、とても良い雰囲気でした。
運営目線から見ても会場は広くて快適だったと思いますし、それにやはり畳は個人的には落ち着きますね。お座敷で決勝戦をしたり、それを中継して大盤解説したり、ちょっと大げさかもですが、タイトル戦と似た空気感を演出してもらった気がします。
実はこのお寺での開催が関係者からも好評でした。
「すごいね!雰囲気良さそうだね!」って。
昨年の大会も本堂をお借りして開催できたんですけど、それが良かったんですかね。やっぱり将棋って和のゲームなので、お寺とはすごく相性がいいと思います。絵になる感じです。強そうに見えますし。
え?
見えませんか?
そう見えるの私だけ笑?

会場の願念寺
広々とした本堂

 ———いえ、私も絵になると思います笑。雰囲気ってやっぱり大切ですもん。そのお寺という広々とした会場の利点を活かして、今年は併設イベントが予定されていると聞いております。

子育てママを応援のキッズスペースと、ゆったりトークの交流会

中倉さん
そうなんですよ。まずは昨年もご好評をいただいたキッズスペースですね。昨年同様に保育士資格を持った保母さんに常駐してもらってます。
LPSAのコンセプトとして女性に優しい大会を目指しているので、こうしたサービスを設けていることが大事かなと思います。会場の都合や人手の関係ですべての地区大会でご用意できるわけではまだないですが、参加者側の立場に立って、寄り添いたいと思っています。
SNSでも「子供ができるとどうしても大会参加はハードルが高くなる、でもこうしたサービスを考えてくれるだけでも、(参加していいんだ)と後押しされるようで嬉しい」というコメントがありました。
キッズスペースを利用することで、まだ将棋が指せない妹さん弟さんがいらっしゃる方でも参加しやすくなると思うので、ぜひファミリーで参加してもらえたら嬉しいですね
個人的には利用者の多寡は全然問題じゃなくて、こういった受け皿を作ること自体が大事なんじゃないかと思ってます。女性が将棋を楽しめる環境を整備するという意味で、LPSAの理念そのものとマッチするところがあるんじゃないかって。

保母さんとキッズスペースで

 
———素晴らしい理念だと思いますし、それを実践されていることに感動です。私も子供が2人いるんですが、子供連れだとどこへ行くにも大変で。

中倉さん
やっぱりそうですよね。子育て中の大人って本当に大変です。
キッズスペースに加えて今年は和の空間を生かしての大人交流会を企画しています。題して和を楽しむ大人交流会です。
交流会中に指導対局は一回は必ず楽しんでいただけるようにしますが、そもそも交流会に参加される方はガチで指導を受けたい、って人ばかりではないような気がしてるんですよね。それこそおしゃべり主体の交流目的だったりとか。
将棋大会で女性ファンと接する機会はあるんですけど、大会だとそもそも本人が対局でお忙しいですし、私も審判だったり運営だったりでゆっくり話す時間は中々取れないんですよ。会場によっては部屋数に限りがあったりして落ち着けるスペースの確保が難しい場合もあります。
今回は、お寺という広々とした会場があること、大会運営に手伝ってくれるスタッフさんが手厚いこと、などなど様々なプラス条件が重なっているんですよね。昨年のキッズスペースの好評に味を占めて、えいやってチャレンジしちゃってます。
また女流棋士カウンセリングと称してお悩み相談も予定していますし、何でもお気軽に聞いていただけたらと思ってます。それに参加対象を18歳以上の女性に限定していますので、その点でも大人な交流の場という雰囲気はキープできるんじゃないかと思ってます。

さらに、おしゃべりのお供に美味しいおやつを用意してるんですよ。女子会っぽくないですか笑
極論、交流会では将棋を指さなくてもOKです。もっと言っちゃうとルールを覚えていない方でもOKです。交流を通じて楽しい時間を過ごしていただけたらと思ってます。
「そこで輪が広がっていくと嬉しいな〜」とか「参加者同士で友達になってくれたらもっと嬉しいな〜」とか「それだったら私も友達の輪に入れてくれたらもっと嬉しいな〜」とか思ってます笑
金沢を観光がてら1年に1回は女子アマ王位戦の北陸・中部大会で会いましょうみたいな感じになると楽しそう。

観光を楽しむ昨年のお二人


———なんて楽しそうな笑。地元人として観光を楽しみにしていただけると、とても嬉しいです。

中倉さん
実は前日入りして金沢観光する予定なんです。そこでお菓子やお土産を買い物をして当日は交流会で配ろうかと思って。
交流会のメインホステス役は、たなちゃん(田中沙紀女流1級)で地元金沢出身の彼女が和菓子やお茶の手配を全部してくれるんですけど、私も負けじと素敵なお菓子を用意したいな、と思いまして。
言ってみれば地元っ子のたなちゃんセレクトのお菓子、東京からの観光客の中倉セレクトのお菓子のダブルセレクト構成で交流会の場を楽しんでいただければと思ってます。
たなちゃんの選ぶお菓子も美味しいと思いますけど、私が選ぶお菓子も美味しいと思うんですよね。

———どっちのお菓子のが人気になるのかすごく気になります。イベント計画をお話されてる中倉さんが生き生きしてて、めちゃめちゃ楽しそうです。良かったら観光を楽しんでる様子や、お菓子を選んでる所もSNSにあげちゃってください。

優秀な営業マンの田中沙紀さん

中倉さん
あはは、面白いかもしれないですね。じゃあ前日はこまめにTwitterにアップしますね。
ところで実は今もちょっと話題に出たんですけど、この北陸・中部大会ではたなちゃんがとても頑張ってくれてて。
大会運営はもちろんのこと、地元の企業さんとも積極的にパイプを繋げてくれてたんですよ。それもあって、今年から北陸・中部大会には2社さんも新規でスポンサーさんがついてくださったんですよ。

ダイトクコーポレーションを訪問する中倉さん
女子アマ王位戦のチラシでニッコリ 金沢ホームケアクリニックの黒瀬さん


———へええ、たなちゃんって優秀な営業マンなんですね。
 
中倉さん
そうなんですよ。北陸・中部大会は色々意欲的な試みも多いんですけど、それもこれもたなちゃんパワーに依る部分が大きいですね。本当に頼りになる後輩です。
話はちょっと逸れるんですけど、北陸・中部大会を運営するにあたって人口密集地の東海の名古屋ではなく、北陸の石川での開催をずっと続けてもらえるのか、という声も上がっているらしいんです。
ですが北陸での開催がなくなるということは現時点では全く考えていません。
地元のみなさんが応援してくださる大会を無くすわけにはいきませんから。
あるとしたら北陸大会と中部大会を分けての開催になりますね。


———そのお言葉を聞いて安心しました。回を重ねるごとにパワーアップしていく女子アマ王位戦が楽しみです。今年はもちろんのこと、来年以降も楽しみにしています。本日は貴重なお話をありがとうございました。
 
中倉さん
こちらこそありがとうございました。