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田中女流1級に聞く、女子アマ王位戦の魅力

石川県での開催は初となる、ひふみ杯第15回女子アマ王位戦北陸・中部大会。
地元出身で大会当日の審判をされる田中沙紀女流1級にお話を伺ってきました。

 本日はよろしくお願いいたします。早速ですが女子アマ王位戦の歴史を教えてください。
 女子アマ王位戦は今年で第15回目です。代表者クラスと級位者クラスの2クラスがあり、棋力に応じてご参加いただけます。
 第1回大会の代表者クラスの3位には渡部愛さんがいたり、現在女流棋士として活躍している方が過去にこの大会で優勝、入賞しています。非常にレベルが高く、女性アマの登竜門的大会でもあります。
 また実は第13回大会では私が優勝しています。プロを目指していく上で、大きな自信になりました。

2021年に開催された第14回大会の様子はこちらのWebリンクから
  https://joshi-shogi.com/19348/
LPSAのホームページでは大会結果だけではなく、様々な活動のレポートやイベントの告知もアップしていますので、ぜひご覧ください

 女子アマ王位戦は各地方ごとに予選大会を開催しているのが大きな特徴です。この地区大会を行い、代表を決めて、全国大会へ招待、という地方でも参加しやすいシステムが、女性大会で他にはない特色だと思います。さらに将棋アプリの将棋ウォーズでの予選も行っているので、参加人数は将棋の女性大会では最大規模だと思います。

※過去大会の総参加者数
2021年 第14回 371名
2020年 第13回 630名
2019年 第12回 438名

 今年度の第15回大会は全地区でリアル大会が開催されています。対面で開催される女子アマ王位戦の魅力をお聞かせください。
 まずはなんと言っても、女性大会という限定があるので女性の参加ハードルが低くなっていることです。
 一般の将棋大会ですと男性が多かったり、年齢が離れた方が多かったりするのですが、この大会では同性で年齢も近い方と対局する機会が多いのではないかと思います。こういう機会って実はとっても大切だと思ってます。大会を通じて友達ができることもあると思います。
 かくいう私自身も小学生時代に出場した大会で友達ができました。その友達は1才年下の女の子でしたね。すごく仲良くなって、その後も様々な大会で顔を合わせる機会がありました。私がここまで将棋を続けられた一つの大きな要因になっていると思います。
 また参加することで女性大会のレベルを知ることができるのも大きいと思います。地方大会のレベルを知ること、また地方大会を勝ち抜いて全国大会に出場してそのレベルを知ることは、将棋を楽しんでいく上で大きなプラスになり、とてもいい刺激を得られるように思います。

 刺激やモチベーションって大事ですよね。
 そうなんですよ。続けていくには刺激やモチベーションってすっごく大切なんですよ。女性って中学生や高校生で将棋をやめちゃう子が多いので残念に思うこともあります。なので中学生や高校生の女の子の目標になるような大会になっていってほしいと思ってます。
 その意味でも今大会は女性の方達に、特に大会が初めての初心者の方にも安心して参加していただけるような環境づくり、雰囲気づくりに取り組んでいきたいと思っています。
 また今回の北陸・中部大会では願念寺さんという非常に魅力的な会場もあります。私も会場に下見に伺いましたが、和の空間は将棋を指すには絶好の舞台です。広々とした畳の空間はやはり落ち着きますよ。そういった物理的な環境面でも素晴らしい雰囲気を堪能していただけるのではないかと思っています。
 それに女流棋士による指導対局の場もありますし、その指導対局を受けるのもまた女性です。つまり周囲で将棋を指してるのは女性しかいません。これまで一般の大会は男性ばかりだからちょっと……って思って二の足を踏んでいた方にもぜひとも参加していただきたいです。

会場の願念寺さん
100畳近い広々とした本堂
奥の間には素敵なお座敷も

 私は男性なので意識していませんでしたが、確かに逆に考えると周りが女性ばっかりの環境って気後れしちゃいそうです。普通の将棋大会では女性はそんな環境で参加されているんですよね。
 話は変わって、保護者さんや指導者さんに向けて、初心者の女性には「こうしてほしい」「これはやめて」みたいなことはありますか?
 ダメ出しはやめてほしい。とにかく褒めてあげてほしいです。
 時には厳しく指導する必要があるのはよくわかります。それは当たり前です。だけど初心者の女性にはできるだけ優しくしてあげてほしいです。
 後は将棋友達を作りやすい雰囲気作りが大切なんじゃないかと思ってます。友達がいると楽しいですし、続けるモチベーションにもなります。友達はすっごく大事です。

 大人になってから将棋を始めた女性に向けてオススメの戦法と勉強法を教えてください
 戦法はズバリ四間飛車ですね。序盤の駒組みがわかりやすいのが大きいです。とりあえず形になりますし、将棋を指している実感を手っ取り早く味わえます。他の戦法は覚えなきゃいけないことが多すぎるんですよ。相居飛車とか序盤を覚えるだけでもすっごく大変です。
 それはそれでもちろん楽しいんですけど、そこを楽しむのはもうちょっと後でも全然大丈夫です。なのでまずは四間飛車がオススメです。

 勉強法はどうですか?
 詰将棋ですね。詰将棋は誰がやってもプラスになると思います。将棋は王様を詰ますゲームなので、どんな展開になっても必ず最後には詰みの局面が出てきますから。
 後は勝ち負けにはそこまでこだわらずに実戦をこなしてもらうのがいいと思います。最初からあまりに勝ち負けにこだわりすぎると、しんどくなっちゃいますので。

 大会運営の準備を通して感じたことや力を入れたいことはなんですか?
 告知を頑張りたいです。例えば将棋大会の存在を知らなくて、後から「そんな良い大会があったの?」って声を聞くことがあります。実際私自身もアマチュア時代にそんな経験がありました。
 参加者が多いと大会も盛り上がるし、私たちも嬉しい。それなのに知らなかったってだけで、参加できない人がいるのはもったいないと言うか、残念と言うか。なので告知をとにかく頑張りたいです。
 地道なチラシ配りや声かけ、またネットを使った告知など、工夫してできることはなんでもやっていきたいです。

 今回は新しい試みとして託児&キッズスペースの開設があります。こちらについてお聞かせください。
 自画自賛するようですが、画期的な試みだと思っています。どう考えても誰も損しない試みですし。
 藤井五冠の活躍を見て将棋に熱中してる子供って多いと思うんですよ。で、それに引っ張られて将棋に興味を持つママさんも増えてきています。でも子育て中のママさんにはとにかく時間がないんです。
 でもでもこの託児&キッズスペースをご利用いただければ、まだまだ手のかかる未就学児のお子さんには託児スペースで保母さんに見てもらう。将棋が好きな小学生のお子さんにはキッズスペースで楽しんでもらう。そしてメインはなんと言ってもママさん。子供たちの心配をせずに初参加の将棋大会でゆっくりと楽しんでいただく。こんなふうにご利用いただけたら嬉しいです。
 今回は北陸・中部大会のみでのお試し実施ですが、これが上手くいきそうなら全国展開する可能性もあるかと思ってます。

 新しい取り組みに挑戦して、反省点は改善して、回を重ねるごとにますます魅力的になっていきそうな女子アマ王位戦が本当に楽しみです。本日は貴重なお話をありがとうございました。
 こちらこそありがとうございました。

ひふみ杯 第15回女子アマ王位戦 北陸·中部大会の詳細はこちらから
https://joshi-shogi.com/21535/