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中倉代表に聞く女子アマ王位戦 北陸・中部大会の魅力

開催日が来月の9月23日に迫ってきたひふみ杯 第17回女子アマ王位戦 北陸・中部大会。北陸中部大会が石川県で開催されるようになって早くも3回目。今年もその魅力についてLPSAの中倉代表にお話を伺いました。

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本日はよろしくお願いたします。早速ですが、インタビューに先立っていただいたアンケートで、前年の反省で集客と告知に課題があったとのことですが、今年の新たな取り組みがあれば教えてください。
 
今年は地域ごとの縛りを無くしたので、そこでの増員を期待しています。地域ごとに重ねての参加もOKなので関東大会に出場して、九州大会にも出場して、北陸中部大会にも出場する、といったことも可能になりました。もちろん地元から代表が出てほしいという声もあるのですが、他の地方からいろいろな選手が集まってくるのが嬉しいと言う声もあるんですよね。

メリットもあればデメリットもあるしで難しいところなのですね。
 
その辺りのバランスを取るのが運営としては色々迷う所なのですが、今回はまずは参加人数を増やして、大会自体を盛り上げるというのが一番の狙いです

全国から様々な選手が集まるとなると代表者決定戦は確実にレベルアップしそうですね。ハイレベルな攻防が非常に楽しみです。一方で北陸中部大会では保育士さん常駐の託児スペースや、和菓子でおもてなしの大人交流会などの、ライト層向けの企画も充実しています
 
そうなんですよ、会場のお寺の広いスペースを活かしての企画が北陸中部大会の大きな特色です。実は今年はそれに加えて金沢グルメナイトって企画を計画中でして。

広々としたキッズスペースと保育士さん
大人交流会で和菓子を振る舞う中倉さん

金沢グルメナイト?なんですか?その素敵な計画は?
 
ここ数年様々な機会で金沢に行くことが多いんです。で、金沢に行くと楽しみなのが食事とお酒なんです。毎回ちゃんと時間を作って必ず金沢グルメを楽しむ時間を作ってるんですけど、毎回必ず素敵な感動があるんです。とにかく美味しいんですよ。
 そこで今回は地域縛りも無くなったことですし、せっかくなので金沢観光を兼ねて北陸中部大会に参加していただきたいと思いまして。ちょうど連休にも被ってることですし大会前日の9月22日の夜に食事会ができたらなぁ~って思ってるんです。

素敵すぎます。それは女性限定なのですか?
 
女性限定で考えています。この企画は昨年の大人女性交流会からの流れを引き継いでいるんですよね。女性の将棋ファンに、将棋を通じて楽しく交流してもらえるような機会になってほしいと願っています。観る将に加えて食べ将や旅将のファンが増えたら素敵じゃないですか?

食事を楽しむ中倉さんと田中女流1級
こちらの珍味がすごく美味しかったそうです
日本酒党の中倉さんが太鼓判を押した地酒

聞けば聞くほど素敵です。問い合わせはLPSAのHPに告知されるのですか?
 
そうですね。近日中に準備したいと思っています。LPSAの公式サイトXなどにもリンクをアップしますので、ぜひご検討ください。

そうやってポップな入り口から将棋に興味を持ってくれたファンに強くなってほしいですか?
 
実は強くなってほしいとはそこまで思っていないんですよ。それよりも楽しく長く続けてほしいと思ってます。強くなっていくのはもちろん良いことなのですが、その過程で将棋が辛くなって嫌いになって行く子をよく見てて。
 女の子ってお父さんの影響というか自分の意思でやっていない子も、ちらほらいたりするんですよ。私自身もそういう風に育ってきてて、私くらいの世代の女流棋士にはそういう人がとても多いんですよ。そうなると「将棋は楽しい」「将棋が好き」って気持ちを忘れがちになっちゃったりして。そうなっちゃうと苦しくなっていっちゃうんですよね。

中倉さん自身もそういう時期があったのですね。
 
幸い私はそういうのが向いていたと言うか、昭和生まれの根性人間だったというか笑。もちろん苦しい思いをしたからこそ得られる達成感や喜びも絶対にあります。それは素晴らしい経験です。とは言え、そっちはみんながみんな向かうべき方向でもないと思うんですよね。
 それに好きでやっている子の方が結果的に強くなっていくんです。その象徴が福間さんですね。福間さんの登場以降、女流将棋界の雰囲気が変わってきたように感じます。

すると将棋が好きな子を増やすのが、長期目線で見た場合に将棋が強い子を生み出すことになると?
 
そうですね。将棋に興味を持つ人が増える。その中から将棋が好きな人が増える。さらにその中から将棋の勉強が苦にならない人、むしろ楽しいと感じる人が増える。すると将棋が強い人が増える。こんなイメージですね。
 ですのでライト層と呼ばれる、将棋に興味を持ってくれた人と、将棋を好きになってくれた人を手厚くフォローするのが大切だと思っています。

昨年の決勝を解説する中倉さん

それは男の子も一緒なのですか?
 
ライト層をフォローするという意味では基本的には一緒なのですが、環境面が違います。実際に初心者の子供たちに教えていると男女の差ってあまり感じないんですよね。ということは、そこから先の成長過程に差が出てくるはず。そしてそれが将棋を指す環境だと思うんです。
 女性はどうしてもマイノリティになっちゃうんです。そうなると、やはり楽しみやすい環境にはなり辛いんです。好きになり辛い環境なんです。その意味で女性はより手厚くフォローする必要があると思ってます。
 極論を言っちゃうと、数が少ないというだけで、女性というだけでハンデがあるんです。そこを改善していきたいです。

環境面の要因が大きいのですね。中倉さんはどういう所から改善していったら良いとお考えですか?
 
う~ん(しばし悩む)将棋を指す場所の居心地の良さですかね。将棋って一人ではできないじゃないですか。将棋に興味を持って誰かと指したくなったら、道場や教室に行くことになりますよね。ですので、そのステップの受け皿になる道場や教室の環境がとても大切だと思います。

なるほど、その道場や教室の環境をどういうふうにしていけば?
 
清潔感とちょっとした可愛らしさが大事じゃないかと思います。逆に言うと不潔感と怖いイメージがあれば改善したら良いんじゃないかと思います。例えば私が子供の頃の将棋道場の中にはトイレで男女兼用の所があったりもしてて。男性用の小便器の隣にドア一枚隔てて女性用の便座があったりだとか。

あ~確かに、それはちょっと怖いかも。
 
ですよね。これは極端な例なんですけど、こういった「ちょっとイヤかも?」って部分を一つ一つ潰していくことで環境は改善されていくと思います。例えば、高橋和女流三段が主宰の将棋の森だったり、姉の中倉彰子女流二段が主宰のいつつだったりはそういう意味で女性にとって良い環境だと思います。清潔感と可愛らしさが満ち溢れてます。

それはひょっとしたら運営が女流棋士だからこそって部分があったりします?
 
そうかもしれないです。私たちの世代の女流棋士は、特殊な環境の中で将棋を続けてきたって感覚は誰しもが持っていると思います。当時は親に言われて渋々通ってた時期もありましたからね。
 私も姉と二人で将棋道場に行って、女性は私たち二人だけ、周りは全員おじさん、って感じでしたもん。タバコの煙モクモクで笑。女性が将棋を指し辛い環境というのは身をもって感じていたはずです。

聞けば聞くほど大変そうです。
 
あ~でも、そんな中でも将棋教室のコーナーは好きでしたね。そこにはちょっと年上のお姉さんがいて、仲良しの3姉妹の友達もいたりして。やっぱり同年代で同性の仲間がいる環境は楽しかったですね。

やはり環境ですね。
 
やはり環境なんです。
 そして今回の女子アマ王位戦北陸中部大会は女性が楽しみやすい環境を整えたいと思っています。先ほどお話ししたように、金沢グルメナイト、大人交流会、託児サービスを準備しています。
 金沢観光を楽しんで、美味しいものを食べて、ゆったりと交流する時間を過ごして、将棋も楽しむ。小さいお子さんはプロの保母さんに預かってもらってなんの心配もない、みたいな環境を提供できたらな、って。
 ガチ勢の将棋ファンもライトな将棋ファンも、女性将棋ファンのみなさんに楽しんでいただける大会になっていますので、ぜひ9月23日は北陸中部大会に遊びに来てください。

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