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DeepLが開く、AI時代の英語との付き合い方 【AIRS-Labコラム #002】

2017年に開始した翻訳サービス「DeepL」は、とても自然な、高い精度での機械翻訳を可能にしました。
非英語ネイティブは共通語である英語の学習に人生の多くの時間を割かざるを得なかったのですが、DeepLに代表されるAIベースの翻訳システムは英語との付き合い方をどのように変えていくのでしょうか。
今回は、以下の3ステップで、新しい時代の英語との付き合い方を考えていきます。

・DeepLの性能確認
・共通語としての英語
・英語を「扱えるようになる」という目標

DeepLの性能確認

まずは、オードリー・ヘップバーンの名言を翻訳してみましょう。

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「Opportunities don’t often come along. So, when they do, you have to grab them. - Audrey Hepburn -」

スクリーンショット 2020-12-17 15.20.51

https://www.deepl.com/

原文:
Opportunities don’t often come along. So, when they do, you have to grab them. - Audrey Hepburn -
翻訳文:
チャンスは滅多にやってこない。だから、チャンスが来たら、それを掴まなければならないのです。- オードリー・ヘップバーン

theyやdo、themが指す対象を的確に捉えた、完璧な翻訳です。心なしか、オードリーのキャラに相応しい上品な口調にも思えます。

次は、アルバート・アインシュタインの名言を翻訳します。

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原文:
The more I learn, the more I realize I don’t know. The more I realize I don’t know, the more I want to learn. -Albert Einstein-
翻訳文:
学べば学ぶほど、知らないことに気づく。知らないことに気づけば気づくほど、学びたくなる。-アルバート・アインシュタイン

変則的な構文にも対応できていますね。完璧な翻訳です。

同様に、スティーブ・ジョブズの名言も訳してみましょう。

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Matthew Yohe CC BY-SA 3.0 出典: Steve Jobs - Wikipedia

原文:
Again, you can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backward. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something — your gut, destiny, life, karma, whatever.
-Steve Jobs-
翻訳文:
繰り返しになりますが、前を向いて点を結ぶことはできず、後ろを向いて点を結ぶことしかできません。だから、あなたの未来では、点と点が何らかの形でつながることを信じなければなりません。あなたは何かを信頼しなければならない - あなたの直感、運命、人生、カルマ、何でも。
-スティーブ・ジョブズ

こちらも完璧な訳です。
「gut」には腸、バイオリンやラケットなどの弦、本質、などの様々な意味がありますが、適切に「直感」と訳しています。

文脈依存性が極めて高い文章はまだ適切に翻訳できないこともありますが、DeepLの精度は日々向上しており、ツールとして十分実用的なものとなっています。

共通語としての英語

現在、世界では数億-数十億程度の人々が英語を話し、英語は最も多くの地域で使える共通語として認識されています。
しかしながら、非ネイティブにとって英語は学習に多大なコストを要します。
数万-十数万の英単語が使われており、各単語ごとに、スペル、意味、発音、アクセントを別個に記憶する必要があり、さらに名詞の場合は複数形、動詞の場合は過去形などを記憶する必要があります。
さらに、ネイティブ動詞の輪に入れるようなスムーズな会話ができるようになるためには、英語環境で多くの年月を過ごす必要があります。
英語は人工的に作られた言語ではなく、自然に発生した言語なので、特に単語の扱に個別の記憶が必要になり、大きな脳の負担と時間の消費を強いられます。
実際に、日本人は、中学、高校、大学と何年間もかけて英語を学びますが、英語を使いこなる人の数はそれほど多くはありません。
それでも、単語に性別のあるフランス語やドイツ語、漢字にカタカナひらながまである日本語よりは共通語としてはベターでしょう。
人生は80年しかなく、使えるリソースも限られているのに、全ての非ネイティブがこれほどのリソースを割く必要はあるのでしょうか。

英語を「扱えるようになる」という目標

従来、英語学習の目標は主に以下の4つでした。
・読めるようになる
・書けるようになる
・聞き取れるようになる
・会話できるようになる

DeepLなどのAI翻訳技術の登場は、以下の新たな目標の設定を可能にします。
・「扱えるように」なる
仕事や趣味などで英語の情報を取得、発信するために、必ずしも4つの旧目標を達成する必要はなくなりました。
扱えれば十分、というケースが増えたことになります。
英語を扱えるようになるためには、英語自体の知識よりも、むしろツールを使いこなすためのノウハウ、および母国語で文章の構造を把握したり構築したりする能力が重要になります。
もちろん、翻訳の妥当性の確認やデジタル化されていないコンテンツの利用のためには最小限の単語や文法の知識は必要になるでしょう。
しかしながら、「扱えるようになる」という目標の達成は先程の4つの目標と比べて割くリソースが少なくて済み、なおかつ実用的です。
英語自体も、多くの人にとってあくまでツールにしか過ぎません。
本当にやりたいこと、やるべきことにリソースを割くために、英語そのものの学習は深入りせずにほどほどにしておく方がトータルの人生の満足度は高まると思われます。

個人個人の置かれた状況によって異なりますが、コスパの高い英語との付き合い方として、「英語を扱えるようになる」ことを目指す、というは有望な選択肢でしょう。


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