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小児科医が心がける子どもたちの心理的安全性の作り方

こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。

今日は、「小児科医が心がける子どもたちの心理的安全性の作り方」というテーマでお話ししたいと思います。

あなたは、自分の心の動きを感じることはありますか?自分の心が今は穏やかでないな、とか。自分の気持ちがたかぶっているな、とか。そんな風に自分の心がどんな状態なのかを気にすることはありますか?

小児科医という仕事は、子どもたちに触れ合う仕事です。子どもたちの身体的な病気の治療だけでなく、心理的な健康も目標にしながら関わるわけです。子どもたちの心の健康を目指そうとすると、子どもたちにとって安心・安全な存在でいる必要があります。つまり、子どもたちに接する自分の心をコントロールする必要がある、ということです。

社会人の方々も、そんな風にきっと自分の心を俯瞰的に観察しながら、自分の心を整えることをしていると思います。例えば、取引先の方と交渉したり面談する際には、自分の心をなるべく穏やかに保ちながら接するようにしていると思います。

ここまでは、自分の心の話でした。それでは、今度は子どもの心を穏やかに保つことを考えてみたいと思います。

例えば、予防接種です。注射の針で体を刺される予防接種は痛いですよね。大人でも苦手な方が多いと思います。予防接種が好きなんて人はまずいないでしょう。そんな予防接種の際に、子どもの心をどうやって穏やかに保とうとするかを考えてみたいと思います。

子どもたちにとって、不安や恐怖を乗り越えるために欠かせないものが安心・安全な存在でした。心の拠り所になるものがあるから、困難を乗り越えられる。そんな安心・安全な存在になり得るものが、親です。

小児科医が子どもたちに予防接種をする時に気をつけるのは、安心・安全な親御さんにそばにいてもらうということです。親を身近に感じられるからこそ、子どもたちは痛い経験も乗り越えられるからです。心の中に安心・安全な親がいれば、子どもたちはチャレンジングな場面を乗り越えられるんです。

そんなことを考えながら予防接種をしていると、時々こんな子どもに出会います。親に対して「僕頑張れるから、大丈夫」「私は一人で大丈夫」と言ってくれる子どもたちです。

通常は身近に親がいなければ、なかなか困難を乗り越えにくい子どもたちです。でも、そんな親に「一人で大丈夫」と言える精神状態。どうでしょう。あなたなら、そんな子どもたちの心をどんな風に捉えますか?

色々な子どもたちに接している僕がそんな子どもに出会うと、「おそらく日頃から親子の関わりが充実しているんだろうな」と考えます。だから、「一人で頑張れる」なんて教えてくれる子がいたら、見えない糸でその親子がつながっているんだろうなあなんて思っています。口にはしませんけどね、でも「嬉しいな」なんて思っています。

そんなケースとは、真逆のケースがあります。不安が高まりやすい子どもたちです。予防接種でも、保育所でも、どこでも不安が高まりやすい子どもはいます。中には、子ども自身のパーソナリティのために、そんな反応を示す子どもがいます。でも、中には親子の関わりが薄いからこそ、そんな風に不安が高まりやすい子どもがいることも事実です。

子どもたちの心理的安全性をどう作るか。それは、子どもへの関わり方次第です。挨拶やスキンシップがどれほど効果的な関わりかは、多くの子どもたちをみてきたからこそわかります。本に書いてある何か特別な関わりに秘密が隠されているかというと、実はそういうわけではありません。ごくごく当たり前な温かい笑顔にあふれた関わりにこそ、子どもたちの心理的安全性を作り出すヒントが隠されています。

今日は「小児科医が心がける子どもたちの心理的安全性の作り方」というテーマでお話ししました。

だいじょうぶ、
まあ、なんとかなりますよ。

湯浅正太
小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて:https://yukurite.jp/)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。

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