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【読書】『プロ並みに撮る写真術II』日置宗弘

少し前、どこのウェブページだったか忘れましたが、この本を読んでローライコードIIIを買ったと書かれているのを見かけました。それで、どんな本なのだろうと気になって読んでみることにしました。

1993年に発行された本です。当時はまだ「デジカメ以前」の時代。入手する前にAmazonのレビューを確認したところ、いろんな意見が出ていました。
「値段も手頃な中古の中から自分の撮影目的にかなうよいものを選んで使おう、という人に向いたガイド。」とか「 影響されてレンズ買いました」というものから、「サブタイトルには−心を揺さぶる写真をとるために−とあるが、まずその独善的な文章に「心を揺さぶられて」しまうだろう。」といったものまで。「この本は作者の遊び心を許容できるか否かで、評価が全く分かれる」というレビューが、私が読み終えた後の感想といちばん近いものでした。

このようにかなりクセのある本ですが、著者の視点と体験をもとに、さまざまなフィルムカメラやレンズの解説が詳しく書かれていることは、読んだ人がみな認めるのではないでしょうか。特に、ライカ(M型、バルナック型)やローライの二眼レフが好きな人には参考になる点も多いと思います。ここでは、ローライのことを中心に書いていきます。

著者の日沖さんは、初心者におすすめのカメラは「写真の原理が勉強できて上達が速く、その上よく写るカメラ」だとし、二眼レフをすすめます。その理由として挙げているのは、
◆写真の原理がわかりやすい
 →裏ブタを開けてみるとシャッターや絞りのしくみがよく理解できる
◆撮影する時にカメラマンは相手を見ずに下を向くことになるから、撮られる方は心理的にリラックスしやすい
◆レンズが良い。二眼レフはその構造上、一眼レフのように撮影レンズのすぐ後ろにミラーを置かなくてよいためにレンズの設計に余計な制約がない
◆二眼レフはおしゃれである

といったことを述べています。ローライ好きの私にとっては、うなずける指摘です。そのうえでローライコードについて、著者はIII型を使っているとして

ローライコードは軽量だし、今は安価だ。ライフ誌の多くのカメラマンが愛用しただけのことがある傑作カメラといえよう。
ローライコードの長所は、クセナーという地味ながら万能の良いレンズと信頼性と軽量さ、およびその速写性にある。高価なローライフレックスや一部のローライコードは、フィルム巻き上げやピント調節やレリーズの際に、左右の手を忙しく動かさねばならないが、ローライコードの初期〜中期モデルカメラを持ちかえずに連写が可能なのだ。

と書いています。私が読んだウェブページを書いた方は、このあたりに惹かれてローライコードIIIを入手されたのでしょう。以前に中古カメラ市でローライコードを見せてもらった際、その軽さは体感できましたが、速写性までは思いが及びませんでした。そういう長所もあるのですね。また今度手に取る機会があったら、フィルム巻き上げからシャッターまでの流れを確認してみようと思います。

また日置さんは、色々な種類があるローライフレックスのレンズについて、以下のような評価を書いています。

ローライフレックス付属プラナー80ミリF2.8
華やかでシャープ、発色抜群、プラナー中のプラナー。6x6判ではいまだに世界最高のレンズ。
ローライフレックス付属プラナー75ミリF3.5
開放付近の性能は劣るが、他はF2.8に準じる。
ローライフレックス・T付属テッサー75ミリF3.5
剛直・素朴でシャープ。実在感抜群の描写。開放付近はやや甘い。
ローライコード付属クセナー75ミリF3.5
質実剛健、中庸をゆき、開放からかなり使えるがボケはその犠牲に。風景に人物に万能のレンズ。

クセノタールについての記載が全くないのがさびしいところですが…プラナーって、やっぱり良いのでしょうね。使ってみたいものです。

この本には、ローライ35のことも書かれています。著者はローライB35を使用していて、トリオターについて
「少し絞れば上級機の35テッサーや35SEゾナー付きに遜色ない。色再現、色乗りは上級機にまさることあり。」と評しています。ほかのレンズは
「テッサーの方は誠にシャープでびしっと写る。テッサー属の中でも上位か。」
「クセナーの方はローライコードのクセナー同様地味な写り方だが、決してテッサーに劣らない。」
ゾナーは、コンタックスTのゾナーと比べて「こちらの方がソフトでありながら描写の彫りが深い。」としています。うちにほんの2週間ほどいたローライC35も、レンズはトリオターでした。きちんと撮れたわずかな写真は、たしかに発色が鮮やかだった気がします。

こうしたレンズの評価や印象は、人それぞれというところはもちろんあります。でも、私が自分でいろいろな種類のローライフレックスやローライ35を手に入れて比べてみるなんてことは金銭的にとても無理なので、ひとつの視座から比較してくれるのはとてもありがたいです。

この本には、私が昨年来ずっと気になっているバルナックライカについての記載もあります。

一見古めかしく、使いずらそうなII型、III型ライカではあるが、実際に使ってみると精度の高いピント調節、スムースなシャッター、各部の高い精度と信頼性、コンパクトさなど美点が多い。
バルナック型ライカはM3などの新型ライカに比べてファインダーがレンズに近いので、パララックスがかなり少ないという隠れた長所を持つ。

なるほど。当分は、修理から戻ってきたローライ35Sを使っていくのが再誘電ですが、やっぱりバルナックライカ、気になります。

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