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ヴァン・モリソン 76歳のニューアルバムをリアルタイムで聴ける幸せ

2022年5月20日、今日はアイルランドが生んだ偉大なシンガー、ヴァン・モリソンのニューアルバム『What’s It Gonna Take?』が発売になる日。御年76歳。今年でソロデビューから55年になるらしいです(その前は「Them」というバンドで活動)。

最近、誰かの新譜を待ち望むということはあまりなくなってきたけれど、ヴァンだけは別。ワクワクしながらさっそく全曲を3回続けて聴きました。

ヴァン・モリソンは「来日していない最後の大物アーティスト」と言われることもあって、多分これからも来てくれることはないでしょう。日本ではさほど知名度が高くないかもしれませんが、ボブ・ディランやエリック・クラプトンとジョイントコンサートを幾度も行っているようなミュージシャンです。

そして、70歳を過ぎてからも1, 2年に一度のペースで新作を発表するという、衰えぬ創作意欲を持ち続けるシンガーソングライターでもあります。

今回のアルバムで、発売に先駆けて公開されたリードトラックは『Pretending』。メロディの感じや途中でホーン隊が入るところなどがとてもヴァンらしい曲です。よかったらぜひ聴いてみてください。

Pretendingとは、「振りをしている」という意味。人は「独りじゃない」とか「物事は全て公平だ」とか、いろんな振りをして生きていると歌われています。ヴァンに時々ある、聴きやすいメロディに手厳しい社会風刺を乗せた曲です。

ヴァンはこんな曲ばかりを作っている訳ではありません。これまでの作品にはすてきなラブソングもたくさんあります。「Crazy Love」とか「Vanlose Stairway」とか。でも、最近の社会や人々の様子から彼が感じたのが、「Pretending」で歌われているようなことだったのでしょう。

発表された曲をリアルタイムで聴くことの醍醐味がここにあります。その時代の空気とともに味わうことができるからです。

『Pretending』のほかに私がいいなと感じたのは、アルバムの表題曲『What’s It Gonna Take?』と『Fodder for the Masses』、そして、ヴァンのスキャットがベースやパーカッションなどの楽器を呼び込んでいく感じが、キング・カーティスの名曲『Memphis Soul Stew』を思い起こさせる『Nervous Breakdown』です。

昔からのヴァンを聴いてきた人の中には、「声のパワーが落ちた」とか「以前のような名曲がない」と感じる人もいるかもしれません。全盛期と比べたら、それはそうなのでしょう。でも私は、76歳になっても新作15曲をしっかりと聴ける品質で作り上げて発表するのは本当に尊敬すべきことだと思います。

ちなみに、昨年出た前作は2枚組で28曲というとんでもないボリュームでした。とことん音楽とともに生きている人。それが、私が持つヴァン・モリソンの印象です。

ヴァン・モリソンが新作をリリースするたびに、その音楽にリアルタイムで浸れることの幸せを噛みしめながら、繰り返し聴いています。

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