よくある話[900]
昼下がり。
空をひとり眺めていると、Tから連絡が入った。
ー「今、講義おわった!重大報告あり。覚悟せよ!!」
ー「おつかれ。食堂にいるよ」
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ぱたぱたと音が鳴る方を見上げれば、
いつにも増して笑顔の彼女。
「おーい」
手をひらひらと返すけれど、
なんだか嫌な胸騒ぎがした。
まだテーブル3脚ほども離れているというのに、
にっこりゆるんだ頬がよく見える。
「ついにな、ついに、うち彼氏できたんよーーーー」
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嬉しそうに知らせる彼女の美しい笑顔を
壊すのは僕の役目じゃない、
それくらいは、理解しているつもりだった。
わかってるよ、模範解答。
(よかったね)(いつかこんな日が来ると)
(相手は、どんな人なの?)
「..へぇ。そうなんだ」
節目がちに、できるだけ明るいトーンで返す。
どこか上の空で、彼女はそれでも心配そうに
「ええー、喜んでくれないの〜?親友じゃん!」
なんて顔を覗き込んでくる。
僕は、居ても立っても居られなくなった。
どこに当てつけることもできない怒りか憎しみか
それとも。悔しさなのか情けなさなのか
気づいたら口に出していたのかもしれない。
「いやーなんていうか〜
親友と恋人に求めるものって違うじゃん?」
「別にあんたのことは好きだけど、好きじゃないっていうかー
わかるっしょ?」
傷が抉られていく。
僕は、僕は君と違って、
愛情と友情と恋愛感情の違いがわからないよ。困るよ。
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そのあとも、『うちらの仲』特権だとかで
二人の馴れ初め、お互いの呼び名、共通の趣味なんかを
生々しく語ってくれた。
知り合いの紹介。僕のあげたゲームソフト。
「親友だから言ったんだからね。秘密だよ」
ああ。軽くうなづいて見せると、ほっと胸を撫で下ろした。
なにひとつ、嬉しくないのはなんでだろう
「ちょ。あんただって、すぐ恋人できるよ。
うちが、いい人だって保証してあげる!」
気を遣ったような、突然のおべっか。
とっても不自然だけど、健気でまっすぐで、
それでいて芯が強いところに、ずっと惹かれている。
「そ、そんな余計なお世話だよ。まあ、ありがとう」
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僕は『親友』『恋人』なんて肩書きより
ただあなたが欲しい。
僕の方が、先に好きだったのに。
もっといろんな環境を知りたい!!