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トスカーナ・オリーブの夢 10

あれから、1ヶ月が過ぎた。


銀行での手続きに時間がかかるのは、イタリアだからか、それとも、コロナ禍だからか。
心の友が銀行からのローンに関しての返答を受けたのは、5月に入った頃だった。
私が契約している銀行からは、いつも、「ローンを組みたいのであれば、いつでも相談に乗りますよ〜」的なメッセージをもらうけれども、実際そうしようと思ったら、本当は、面倒なことなのかもしれないと思う。
私が借りれる金額なんて、たかが知れているけれど。

それまでの間、私たちが見たこの物件を欲しいと思う者もおらず、最初の値段交渉で、ほぼ契約までこぎつける…みたいなカタチとなった。

「ここね、3年ほど前から売りに出していたんだけども、当時の2/3ほどの金額になったんだよ。」

不動産屋のステファノが、そっと私たちに教えてくれた。

その上、土地を分割してもらったのだから、最初に見た金額の半分ほどになったのだった。

「改装費がかかりそうだけどね。」

心の友がそう言った。

見るからに古い建物は、聞けば、1700年代の建物だという。
築3世紀。
想像を絶するけれど、新しい物件が良いというわけではないイタリアの建築事情だから、その辺りは、少しずつ手をかけていくしかないのだろうと思う。

ところで、オリーブ畑はどうしたら良いのだろう…

何も知らずに始めていくという無謀さを、地で行く。
「剪定をするには、時期が少し遅いかもね。」ステファノがそう言った。

オリーブを手がけていくのに重要な時期は、年に2回。
収穫の時と、この剪定の時期である。
のっけから、この重要項目を逃しているけれど、まあ、ゆっくりやっていこう。
ところで、何をすれば良いのだ???
そんなふうに思っていたら、心の友が言った。

「まずは、Commercialista に聞いてみよう。」

イタリアの商売には欠かせない、会計士とビジネスコンサルタント。
Commercialista とは、ビジネスコンサルタントのことをいう。
法律的に何が必要で、どんなことをしなくてはならないのかは、その人たちが教えてくれるという。
分からないのに、いろいろ考えるよりかは、まずは、その Commercialista という人たちに聞いてみることは、ゼロから始める私にとってはありがたい。

で、私は私なりに、ここで採れたオリーブをどのようにして展開させていこうか…を考え始めた。

5月半ば。
オリーブは、小さな小さな白い花を咲かせていて、風にゆらゆらと揺れていた。


続く

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