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フィレンツェの空 12/6/2021

オリーブ畑のある、トスカーナは南のグロッセート県に行くのに、いつもの高速から抜け出て、田舎道で行くことにした。

途中、すれ違う車が、ドイツナンバーやスイスナンバーが多くて、いよいよイタリアにも、外からの観光客がやってきたのだと、感じずにはいられない。
車で行き来できてしまうのが、大陸の強みで、そういえば、随分前だけど、同僚だったスウェーデン人の家族が、彼女に会いにくるのに、スウェーデンからキャンピングカーでやってきたのには、ちょっとした驚きであった。

お昼時。
田舎道で適当なレストランなど、そうそう無いから、いつもグロッセート方面に行く時に立ち寄る、小さな町の食堂に行くことに決めた。
このコロナで、1年ほど店を閉めていたという。
せいぜい居て、数十人じゃないかと思われる小さな町の、唯一のレストラン兼バールである。
それほど人は居ないと思っていたけど、ドイツ人っぽい観光客が数人居たのには、少しビックリした。
フィレンツェ人だって、知らなさそうな、小さな小さな町であるというのに。

建物は古く、どことなく田舎くさい。
家族で経営されていると思われ、カメリエーラを担当するシニョーラは、あまりやる気がなさそうである。
渋々とやってきて、メニューを渡された。

実は、何度か来たことのあるレストランなのだけど、この、ひどくやる気がなさそうな感じに反して、豚肉料理が実に美味しい。
肉といえば、ビステッカフィオレンティーナを豪語するフィレンツェでは、なかなか食すことの出来ないレベルの豚肉料理で、美味しいお肉が手に入らない日は、メニューに上らないこともあるのだそうだ。

建物は古いし、決して感じのいいというわけではないのに、「美味しい」に救われるレストランもあるのだな…と、ゆっくりと店内を見渡す。

最近は、どこもかしこも、綺麗に改装し、イケメン兄ちゃん達を揃えた、一見、いい感じのレストランが増えたフィレンツェで、軽いなぁ…と思う時がある。
そんな中で、「本当に美味しい」を探し出すのは至難のワザな気がする。

それに比べたら、随分と垢抜けない雰囲気ではあるけれど、嫌いではないなぁと思った。

ふと見ると、愛想の悪いカメリエーラのおばちゃんが、黒いミニスカートに白いブーツという出立ちであったことに気づいた。
年齢に比べて、随分、可愛い格好である。

愛想は悪いけど、乙女なのね…

そう思うと、それが愛嬌に思えてくる。

なんかもう、全てが「イタリア」を体現している気がして、
やっぱり、嫌いじゃない、この感じ。

出てきたイノシシ肉のミートソースパスタは、やっぱり美味しかった。


季節は6月。
雨季ではないイタリアで、雨の多い1週間が過ぎてゆく。

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