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トスカーナ・オリーブの夢 11


イタリアで、仕事の独立申請をする。

大概の人は、言う。
「よく考えてからにしたほうがいいよ。」と。

イタリアの税金が高いからだ。
儲けがなくても、年々支払う金額は、安くはない。
申請をせずに、利益を丸ごと儲けるというのをNEROネーロ=黒とイタリア語で言って、不法で働くのは、昔は普通だった。
最近は随分といろいろ整ってきたおかげで減ってはきているけれど、今のご時世にもちゃんと存在している。
以前、メルカートで働いていた時には、半分「白」で、半分「黒」だった。
それでも、いつか、ちゃんとしたいなぁ…と思っていたのは、私が日本の環境で育ってきたからだろうか。独立申請をする事には、なんの異議もなかった。

経営コンサルタント  commerciaristaコンメルチャリスタから聞かれた。

「個人事業か専門事業か。」

「オリーブ農家」と単にいっても、個人事業と専門事業では、求められることが大分違うらしかった。
「個人事業で、お願いします。」
私は、即答していた。
なにしろ、農業に関して、なんの経験もない上に知識もない。
個人事業となると、緩和される税金やら出来ることに制限はあるけれど、最初はその程度の方が、私にとっても都合がいい。

どんな、名前にしようかな…、あと、どんなロゴにしようか…

そんなことをずっと考えていた。
そう思って、いろんな会社のロゴやらネーミングを見ていくと、それがよく考えられたものだと感心した。
オリーブやオリーブオイルの長い歴史を辿って、こんなネーミングはどうだろう…、そう思うところの、私が、昨日今日で考えるものは、大概、すでに誰かがつけている名前だった。
簡単じゃないのだな…ということを悟る日々。
あの会社のロゴにフクロウがついているのは、そういう意味があったのかと、長く知っているワインとオリーブオイルの生産家のトレードマークの奥深さを知った。

オリーブの歴史は、長い。
ギリシャ神話では、既に「聖なる木」と表現されている。
平和の象徴でもあり、国旗に描かれるほどである。
ギリシャやスペイン、イタリアにとっては、シンボル的に扱われる、重要な木である。
過去を辿れば辿るほど、今見ている自分の、壮大な夢を思う。

そんな折、Commercialista から、一通のメールが届いた。

「独立申請の手続きが完了しました。」

そこには、「フルーツと油性作物の栽培家」という名目で、事業申請された証明書が添付されていた。
個人事業ということで、必然的に自分の名前が登録名となった。

あれだけ考えたネーミングは、幻になったけど、いろいろ勉強になった。

6月1日。私は、独立した個人事業主となった。

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