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トスカーナ・オリーブの夢 6

本格的に、理想のオリーブ畑を探す…

とはいっても、このコロナの影響で自由に動き回ることはできない。
トスカーナ州は、オレンジゾーンになったばかりだった。
頼るは、ネットでの物件探しのみ。
へぇ〜とか、ほぉとか思いながら、探すというよりはむしろ、楽しむ。
いろんな物件があった。

「2ヘクタールの土地付き、要改築」
「3ヘクタールのオリーブ畑、増築可」
「オリーブ農家、水道・電気あり」…

正直、写真だけでは、その地域のどの辺りかも全く分からない。
Googleマップと睨めっこしながら、この辺りじゃないか、とか、きっとこれに違いない…なんて思いながら、それでも気になった物件は、不動産会社へリクエストを送る。

探しながら思うのだけど、多分、こういう瞬間が一番楽しい。
都合よく、妄想を膨らませて、現実からは遠くかけ離れている、この瞬間が。

あれは、まだ2月の、冬の寒い時期であったかと思う。
リクエストを出していた不動産屋さんから「興味がありましたら、物件を見に来ませんか?」というメッセージをいただいた。
フィレンツェは、まだまだオレンジゾーンで、当面動けそうにないと思ってはいたのだけれど、その点については、不動産屋さんの方で、証明書を出してくれるとのことだった。

約束の日。

不動産屋さんの証明書以外にも、自己証明書も記入して、心の友と出向く。
TOSCANAは、GAVORRANO。
周りのイタリア人には、今ひとつ…な、パッとしない小さな町。
近いところの他の町に比べれば、値段が安いということも、それに反映しているのかもしれない。
リクエストに出していた物件は、2件。

アスファルトではない狭い道を進んで行く。

不動産屋のステファノは、とても親切であった。
「ここはね、一時期、移民の人たちが住んでいたんだ。」
見た物件の一つ、ほぼほぼ廃墟の建物には、さっきまで、その移民たちが居たんじゃないか?というくらい、生々しい感じのまま、ベッドや本が放置されていた。
思わず、ため息が漏れる。
なんとか機能させるのに、相当な気力と金額がかかりそうな気がする。
安いには理由があるのだと、その時改めて思った。
もう一つの方も、悪くはないが、ピンとこない。
何がというわけではないけれど、何かが違う。
そんな気がした。

あぁ、理想と現実… やっぱり、違うなぁ。

そんなことを思っていた。

「あのぅ君たち、もし時間があればの話なんだけどね、オリーブ畑のある物件が気になるようであれば、あともう一つ、ぜひ、お見せしたい物件があるのだけれど…」

打ちひしがれている私たちに、ステファノがそう言った。

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